【112】 2012 マスターズ   2012.04.09


 夢舞台、オーガスタナショナルGCで開催された2012年のマスターズは、史上3人目のレフティチャンピオン「バッバ・ワトソン」の優勝で幕を閉じた。
 プレーオフの2ホール目、林の中からインテンショナルフックでグリーンを捉えたワトソンのセカンドに、アナウンサーが「曲げる球なら、バッバ・ワトソン」と絶叫していた。
 ワトソンのプレーオフの相手ウーストハイゼンのアルバトロス、時には一緒に回っていた石川遼をオーバードライブしていた52歳カプルスの復活、タイガーウッズのクラブ蹴っ飛ばし事件、行け行けミケルソンのまた出たトリプルボギー…、順当(?)石川 遼の予選敗退、思いがけない松山君の最終日の崩れ…、そして、女性会員を受け付けてこなかったオーガスタに、代々同コースのメンバーに迎えられていたIBM社のCEOに初めて女性のバージニア・ロメッティ氏が就任したことを受け、ゴルフと人種差別・性的差別の問題がクローズアップされるなど、今年も話題の尽きないマスターズであった。
 

 さて、石川 遼の責任ではないけれども、その予選落ちでもって、改めて浮き彫りにされた日本選手の実力不足は見逃せない問題だろうと思う。世界ランキングでは資格を持たない石川 遼が招待されたのも、大きなゴルフ市場である日本で、絶大の人気を誇る石川を出場させることの計算が働いていたことは明白で、その結果が予選敗退という、石川自身にとっては気の毒な(シビアに見れば当然の)スコアになってしまった。
 日本ツアーでは常に上位で優勝争いを演じている石川は、日本の選手の中では押しも押されぬトッププロである。ただ、その彼をして、マスターズでの目標が予選突破にあるというのは、日本プロゴルフ界のレベルの低さを証明していると言わねばなるまい。
 石川自身について言えば、高校生のときに幸運に恵まれてツアー優勝を果たし、そのままプロ宣言をした彼は、ゴルフに関しての修練が不足している。もちろん、より以上の素質でもって修練不測をものともせずに活躍していくプロも多いが(世界の大舞台で羽ばたいていく選手の多くはそうだろう)、石川のプレーを見ていると基礎力に問題があることを痛感させられる。
 入れてはならないクリークに入れたり、入れなくてはならないパットを外したりするなど、プレーに安定感がないのは、実力不足、練習不足なのである。
 今は、実力は松山君のほうが上ではないだろうか。ゴルフの基礎からじっくりと叩き込まれ、仲間たちと練習やラウンドに明け暮れてきた松山君のほうが、「ゴルフの修練」を積んできている。石川はゴルフに費やしてきた時間は負けていないのかもしれないが、指導者の目・仲間との切磋琢磨・ゴルフの環境などを比べると、一匹狼の孤独感が漂っている。
 彼には、技術的にも精神的にも信頼がおける指導者と、何でも話し合えてお互いを高めていける仲間が、是非とも必要である。日本も、世界ツアーを相手に戦う「ワールドカップ日本代表選手団」を結成して、選手の技術と人間的な成長を図るようにしてはどうか。


 もうひとつ、テレビの解説はどうにかならないだろうか。今年も中島常幸が解説していたが、日本のテレビのスポーツ中継は、野球やサッカーでも往年の名選手を迎えて解説させている。彼らは、自身の選手としての出場実績を元に、具体的な話をしてくれることは確かだろうが、テレビを見ている側が感じる煩(わずら)わしさや違和感は、彼らが自分の経験を語ることから生じている。
 例えば、「さっき左へ引っ掛けるミスをしましたから、このショットは左の池がプレッシャーですね」なんて、自分のレベルでものを言っている。マスターズでプレーしている選手は、そんなことは毛頭気にせずに、果敢にインテンショナルフックをかけてピンを狙い、見事なツーオンを果たしてくる。
 解説者は、ゴルフのプレーや技術についてもそうだけれど、ゴルフ界の現状や歴史、プレーヤーの状況などを、幅広い専門知識でもって視聴者に伝えてもらいたい。戸張ショウちゃんのように、ゴルフについては奥深い造詣を有しながら、余分なことばかりを言う解説者もちょっと困ったものだけれど(苦笑)、解説者としての研究・研鑽を積んだゴルフ解説者と、プレーヤーOBとを並立させるのも、ひとつの方法だろう。

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