◆ 第5回 日韓対抗女子ゴルフ  於 大津カントリークラブ     2004.12.5【ゴルフ57】
   − 本気モードの韓国 大逆転。 日本勢 完敗 −


▼▽▼ 『第5回 日韓女子プロゴルフ対抗戦』の最終日(2日間競技)が、滋賀県の大津カントリークラブ(西コース) で行われた。チーム戦で争われるこの大会は、昨日の第1戦は14−10と日本がリード。過去、2勝2敗のあとの第5回目とあって、ホームの日本勢はどうしても勝ちたいところ。この日に全てを賭けたのだが、本気モードの韓国勢に日本チームは6−18(2勝2分け8敗)と完敗、2日間通算でも20−28で敗れて3連敗、通算成績は2勝3敗となった。 ▼▽▼
朝焼けの鈴鹿山脈

 午前6時起床。昨夜は2時過ぎに寝たから4時間足らずの睡眠だけれども、遊びとなったら飛び起きる。6時30分出発。関から名阪自動車道で下柘植へ。朝日が差して、周りの山の稜線を照らす。目覚めたばかりでまだまだ高度も低い朝日は、山々の山頂近くだけを照らし、中腹よりも低い部分は手前の山や森の陰になって光は届かない。紅葉に色づいた山肌を照らす光と影のコントラストが、あざやかな対比を描く。
 下柘植で名阪を降りて422号線を走り、信楽で一時307号に乗るが、朝宮から右折して再び422号へ戻り、大津を目指す。朝宮からの道は工事箇所も多く、車の対向ができない山道が続く。向こうから来る車の影が見えたら、少し広くなっている路側に停まって、すれ違うのを待たなければならない。
 民家や商店の並ぶ大石地区へ出て、瀬田川を渡る橋の手前で左折すると、あとは大津カントリーへ直通の道である。左折するとすぐに、「日韓対抗女子プロ ギャラリーP」の看板が見えた。ところが、「もう少し近いところがあるんじゃないか」とすぐに思うものだから、そこを通り越して行き、やがて「この奥にはギャラリー駐車場はありません」の看板を見て、さっきのPまで引き返した。10分以上の損失である。午前8時10分着。
 瀬田川の河川敷が駐車場になっている。僕が車を止めたら、間もなく「満車」の札が掲げられ、あとから来た車に係りの子が「第2駐車場へ回ってください」と叫んでいる。「ラッキーだったな」と思っていたら、後に判ったことだけど、第2駐車場のほうが大津カントリーに近かった。遠いところから、順次停めさせているのだ。
 まだ、雨が落ちている。合羽のズボンを履き、上はセーターを脱いでウインドブレーカーを羽織った。着替えている間に、雨がやんだ。こうなると、傘を持っていくかどうかが難しい。下へ敷くビニールシートを持っているから、雨が降ってくればこれを被ることにして、傘は持たずに出発である。


 シャトルバスで約10分。大津カントリーの駐車場へ着いた。クラブハウスの横からコースへ入り、出くわした練習グリーンには、服部道子の姿があった。少し立ち止まって見ていたが、もう第1組のスタート時間8時30分は過ぎている。第1組の不動裕里は、今日は見なくてもよいのだが、第2組の
古閑美保はお目当てのひと古閑美保 2番グリーンりである。
 急ぎ足で1番のティグラウンドへ向かうと、カッキ〜ンという金属音が耳に飛び込んできた。第2組の古閑美保・季知姫のティショットが終わったのだ。フェアウエイを行く古閑たちを追って、そのまま1番ホールへと歩き出す。ロープの外側を歩くので、アップダウンがきつい。「カートに乗らずに歩かなきゃ」と言っている割には、もう音を上げ始めているが、「いつものラウンドでは、こんな山には打たんもんね」とブツブツ…。それにしても、プロゴルフ協会は、近年、ギャラリーサービスを謳い文句にしているが、こんな山坂だらけのところを歩かせてサービスに努めているというのだろうか。昨日からの雨で、足元がぬかるんでいる。ギャラリーの誰かが滑って転んで怪我でもしたら、責任問題ではないか。
 1番495Yパー5のサードショットを、季知姫が1mにつけてバーディ。2番186Yパー3では、古閑2mの外から季知姫が先に放り込んで連続バーディ。古閑が、セーターを脱いで半袖になった。
 好調の季知姫にここまで押されっぱなしではあるけれど、古閑のショットの迫力は、日本の女子プロの中では他を圧倒している。スイング軌道とインパクトが見事に一致していて、ボールに勢いがある。
 4番のセカンド地点まで古閑・季の組にずっと付いていったけれど、5・6番は古閑美保 3番ロングホールのセカンドショット遠く、7番でこの横へまた帰ってくるので、4番のセカンド地点に座って、後ろから来る選手を定点観測することにした。
 3組目は大山志保とクリスティナ金の組。クリスティナって…いうより小錦ィという感じ。むっちゃボインの重量級、USLPGA30何位かのシード選手で、ドライバーは大山より30ヤードほど飛んでいる。4番512Yパー5のこのホール、2オンを狙ったけれどボールはガードバンカーへ。やおら、持っていた3フッド(だろうと思う)を叩きつけた。気合が入っている。
 4組は西塚美希世・高叉順で地味。5組は服部道子と韓熙圓で豪腕同士。6組は表純子と文賢喜で丸と細。7組は福島晃子と安是眩で安ちゃん可哀相。8組が藤井かすみと宋アリで、ここまで見てくるとなぜか韓国を応援したくなってくる。


 7番160Yパー3のグリーンは4番のセカンド地点のすぐ横。折り返してきた古閑たちが、グリーンに向けて打ってくる。ボードを見ると、季知姫−2に対して古閑が−1となっている。5・6番のいずれかで古閑がバーディを取ったわけだ。オナーの古閑のボールはグリーン中央にオン。下り10mのパットを残した。季知姫のボールはグリーンを2mオーバーして、ピンまで7mほどの下りのアプローチだ。
 オンしてはいるがピンから遠い古閑が先にパットし、下りをしっかり打って1mほどオーバー。季知姫のアプローチが絶妙であった。芝が薄くてツルツルのライから、ウエッジをボールの下にきっちりと入れ、ガシュッと音をたてたショットでスピンをかけながら、下りのラインに乗せていった。このホール、互いにパー。デットヒートを見古閑美保 8番はフェアウエイバンカーせる2人に付いて、また8・9番と歩いた。
 8番366Yパー4、古閑のドライバーショットがわずかに右に流れてフェアウエイバンカーに捕まった。同じような弾道を描いた季知姫の球は、まっすぐに伸びてバンカー左を抜け10ヤード前に転がる。古閑は、残り130ヤードほどのバンカーからのショットをミスする。当たり損ないで、力なく少し右方向へ飛び出したボールは、グリーンの手前10ヤードほどのラフへ落ちた。グレース朴 9番グリーンへ上がってくるところ
 ここからのアプローチを寄せ切れず、古閑はボギーを叩く。好調な季知姫を相手に、このボギーが致命傷となって、結局古閑は−1対EVENの1ストローク差で敗れた。



 9番のセカンド地点で古閑たちの組に別れて座り込み、第2番目のお目当ての
グレース朴まで、6組をやり過ごして待つ。やってきたグレース朴は、同伴の木村敏美をいつも20〜40ヤードほどリードする豪打を見せる。彼女の体はどこまでも細く華奢…。これで飛ぶのだから、バネがあるのだろう。端麗な容貌と相俟って、仕草が可愛く色っぽい。ラインを読むにも右の人差し指を頬にかけ、カップを覗き込んでグレース朴 11番ロングホールのセカンドショットは2口3口…何かをささやく。パットを終えると、サンバイザーを取って長い髪を風になびかせる。
 10番、ティショットをフェアウエイに打っておいて、木村敏美のショットを見もせずにトイレへ走っていった。
 11番左ドッグレッグの533Yパー5のティショット。少し前に出てコースの状態を見ているキャディとナントカカントカと叫びあったあと、左の山すれすれに目の覚めるような豪打を打った。どれほど素晴らしい当たりかというと、533ヤードのこのホールをセカンドでグリーンエッジまで運んだというファインショットであった。グレース朴 キャディからタオルを受け取りズボンを拭く
 歩き出して間もなく、キャディにタオルを借りて、昨日からの雨でぬかるんだコースに汚れたズボンのすそを拭き出した。キャッキャと大きな声で話し合い笑い合って、丹念に拭いている。ボールに向かったときには集中力が伝わってくるような厳しさだが、折々に見せる彼女の仕草はどこかに女らしさを感じさせて、アメリカのファンもそのエキゾチックさとともに惹きつけられるものを感じるのだろう。

金美賢 12番パー3のティグラウンドにて


 9・10・11番とグレース朴に付いたあとは、その後ろの組、横峯さくらVS宋ボベの組をやり過ごし、第11組、3番目のお目当ての金美賢ちゃんの組へ移った。金美賢はホントに小さい。パンフには157cmとあるが、もっと小さいのではないかと思う。一緒に回っている茂木宏美も決して飛ぶほうではないが、その茂木に5〜10ヤードほどいつも置いていかれる。でも、ストロークは−金美賢 13番パー4のセカンドショット2対+5と7打リードし、アメリカ女子プロランキング7位の実力を示している。左手のグリップがとても深いのが印象的であった。
 彼女のショットは、打ったあとターフがパッと飛び散る。それだけ、他の選手よりも打ち込む度合いが大きいのだ。そのあたりも、彼女のショットが正確だといわれることと関係しているのだろう。




 15番400Yfパー4から、4番5番目のお目当て、最終組の
朴セリ宮里 藍ちゃんに付く。藍ちゃん 14番セカンドショットをミス
 まず、藍ちゃんの太腿にビックリ。はいている綿パンがはちきれそうにパンパン。よほど鍛えているのだろう。ところが朴セリは、宮里 藍の2周りほど大きな体である。背丈は宮里154cmに対して 朴セリは170cm。上背もあるけれど、胸板の厚みが全然違う。アニカ・ソレンタムも ハードな筋力トレーニングをこなしていると言うから、やっぱり僕もジムへ通わなくてはいけないだろうか。ゴルフに行ってカートに乗っていてはいけないなぁと、この場限りの反省…。
朴セリ 17番パー3のティショット

 USLPGAのメジャーを4つ制している世界の朴セリも、今年は不調。米女子ランキングも11位と振るわず(11位ならば振るわないとは言わないか…)、この大会でもいまひとつ本調子でない。昨日のマッチプレーでも、茂木宏美に4DOWNの大差で敗れている。しかし、いずれはアメリカツアーで相まみえるであろう、日本の新星宮里 藍を相手にして、今日の気合は違っていた。336Yパー4の15番はもちろん、400Yパー4の16番でもドライバーを捨てて3W(と思う)でティショットし、飛距離よりも正確さを確保していた。セカンドショットを宮里よりも先に打つわけだが、きっちりとグリーンを捉えて無言のプレッシャーをかけていく。
 18番412Yパー4では、勝負のドライバーを振って、宮里をオーバードライブしていった。さすがは世界の朴セリ…、そのプレー振りには風格があった。
 宮里 藍は、16番で3パッとしてボギーとし、EVEN対−2で迎えた17番パー3。グリーンを外した朴セリに対して、4mにつけたバーディパットを決められなかったのが敗因であろう。このホール、朴朴セリ・藍ちゃんの18番グリーンセリはパーパットを決められずにボギー。並ぶチャンスであった。
 18番のセカンドショット、先に打った宮里のボールがガードバンカーに吸い込まれていって勝負が付いた。朴セリのセカンドは、グリーン右5mにオン。宮里 藍のそこからのチップイン…とか、勝負の綾はいろいろに考えられるが、たとえそこから放り込んで−1同士で並んだとしても、やっと追いついたというだけのことで、宮里の勝機は全くなかったのである。世界の壁とは、それほどに厚いものなのだ。


 今日の収穫のひとつは 古閑美保の弾道…。少しのコスリもなく、力強くきれいなインパクトであった。あのイメージをもって、これからボールを打ってみようと思う。そして もうひとつは 左手の握りの深さ…。金美賢、グレース朴、朴セリなど、押しなべて深いストロングのグリップであった。

 アプローチは、参考にするにはみんな上手すぎる。季知姫の芝生の薄いツルツルのライから、ウエッジでボールの下へカシャッといわせて打ち込み、下りのグリーン打ったスピンの利いた球…、僕がやったら確実にグリーンオーバーだ! 朴セリは わざとダフらせて打っいたっけ。


表彰式 本気モードの韓国に 日本勢は歯が立たずといった感じであった。ポイント以上の実力差は歴然…。この日勝ったのは藤井と横峰の2人だけ。不動、福島が引き分けて、あとの8人が敗退。
 韓国選手は12人のうち、メジャー4勝の朴セリや今季米ツアー賞金ランキング2位のグレース朴、7位の金美賢ら8人が米ツアーで活躍しているし、日本ツアーでもなじみの高又順らを含めると、ほとんどが海外を主戦場にしてる。韓国勢の強さは、世界で戦う精神力の強さ…技術の確かさ…。この韓国に、日本は追いつけるだろうか。
 日本の男子ツアーのレベルの低さは、輪をかけて嘆かわしい思いである(と、ちょっと八つ当たり気味)。外国のコースを回ってみると その厳しさに目を見張る思いである。厳しいコースが選手の技量を育てるわけで、ゴルフだけに留まらないけれども、ぬるま湯の日本は将来が心配である。


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