【59】 ゴルフ錬金術 −この時代にも残っていた、ゴルフでぼろもうけ−  2005.09.29


 最近は1万円以下のプレーフィーで、乗用カートによるセルフプレーが定着してきて、日本のゴルフスタイルも欧米並みになってきた。まだまだ、ジュニアの育成やプレーヤーのマナー、ゴルフに対する姿勢や思想などは、遠く及ばない部分もあるが、お国事情やゴルフの歴史の浅さ、また、もともと日本社会には市民性や哲学がないことを考えると、このあたりで手を打つべきだろうか。
 こんなことを思いながら、最近、あるベージをめくっていたら、気になる記事を目にした。
 米リップルウッド社が破綻処理した長銀をわずか10億円の元手で買収し、4年後に再上場させて一夜にして2300億円の利益を手にしたのは有名な話だが、同じようなことがゴルフ界にも起きているというのだ。
 バブル期に高額の預託金を集めて建設した多くのゴルフ場が、ここ何年かの間に償還の時期を迎えていて、返還できないところは全てパンク宣言。倒産して、会社の経営権を他者に委譲してしまう。
 私としては、ここも理解できないところである。預託金を預かっておいて、返せないから経営権を他人に売って一件落着ということがだ。預託金を使い込んでしまった経営者は刑事責任を問われ、資産を投げ打って弁済するのが当然だろう。それが、会社を整理したときの財産は保全され、今もゴルフ連盟の役員に就いてのうのうとしているものが現実にいるのである。世の中の仕組みと、本人の精神構造がわからない。
 さて、この経営不振に陥った日本中のゴルフ場を“二束三文”で買い漁っていった外資系会社が、今、巨額の利益を得ようとしているというのだ。
 この5年間だけで実に470ものゴルフ場が倒産した。そのゴルフ場の多くを次々に買い占めていったのが外資系会社で、いまや米ゴールドマン・サックス社と米ローンスター社は、それぞれ92コースずつを保持している。100億円前後をかけて開発したゴルフ場を、たったの2〜3億円で買収し、買った後は会員にプレー権を約束する代わりに巨額の預託金を放棄させ、営業を続けて日銭を稼いでいる。
 さらに今度は、ゴルフ場運営会社を上場させて、巨額の上場益を得ようとしているというのである。長銀の夢よ、もう一度だ。
 ゴールドマン・サックスは運営会社『アコーディアゴルフ』を来年後半に東証に上場させ、ローンスターは早ければ年内に『パシフィックゴルフ』を上場させる予定だとか。上場益は500億〜1000億円になるのではないかという。タダ同然の安価で90コース以上のゴルフ場を手にしただけでなく、上場益で莫大な利益を上げるという仕組みだ。
 たくさんのゴルフ場が、放漫な経営や銀行の不良債権処理の名のもとに潰され、なけなしの金をはたいて買ったプレーヤーたちのゴルフ会員権も紙クズ同然になった。「まぁプレーができれば、それで仕方がないか」とつぶやきつつ、今日もクラブを振るお父さんたちの白球の彼方に、莫大な利益を生む仕組みがあったことを知って、1メートルのパットを打つ手が震えるのは、怒りか、嘆きか、… イップスか!



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