【76】 第30回 三重県オープン・ゴルフ選手権         2008.08.07
       − 昭ちゃんの挑戦 −
 
 
 三重県オープンのA地区予選(青山高原CC)を見事に突破した昭ちゃん(MGRA所属)の次なる舞台は、7・8日の2日間にわたる本選が行われる桑名CCである。予選に出るのも初めてだった昭ちゃんにとっては、もちろん初の本戦挑戦だ。
 先週、昭ちゃんとコーヒーを飲んでいたら、
「練習ラウンドと本戦当日も空いていたら一緒に行ってください」と頼まれてしまった。
「一人で、よー行かんのかい」と笑ったのだが、どうせ僕も暇だし、出場選手の中にはたくさん顔見知りもいるから 久しぶりに顔を見てくることにしようと思って、付き合うことにした。
 今日の昭ちゃんのスタートは早い。「実績のない連中は早いスタートや。間違って通ったお前さんはトップに近いスタートさ」と笑うと、「僕よりも予選スコアの悪かったのもたくさんいるのに失礼な。誰が組み合わせしとるんですか」と憮然たる表情…。スタート時間ひとつにしても、無名選手への扱いは冷たい。
 しかし昭ちゃん、先日の練習ラウンドでは、桑名CCを38・43で回っている。今日は、期待半分、不安半分の挑戦だ。




 午前5時30分、昭ちゃんの車が迎えに来た。「目覚ましに、冷えた缶コーヒーが飲みたいので、コンビニへ寄っていきます」と言うが、我が家から津ICまで、最短コースを走るとコンビニはない。「伊勢自動車道のSAまで我慢しろ」とそのまま高速に乗り、途中で缶コーヒーだけは買ったものの、桑名CCまですっ飛ばして、6時20分、桑名CC着。


  クラブハウス前の練習グリーン横に、優勝の副賞
  「トヨタ オーリス」が飾ってあった 【拡大】 →

 
 



 練習場で24球を打って、パッティンググリーンで少し転がしていると、もうスタート時間の10分前だ。
 1番のティグランドへ行くと、競技委員会用のテントが張られていて、今日の担当は加藤由紀子さんと葉山邦雄さん。お二人とも、往年の名選手である。
 「あれ、章さん、今日は何…? えっ 付き添い…。暑いのにご苦労さんです」と、冷えたペットボトルとお菓子をくれた。18ホール通しでのラウンドだったから、途中でお腹が空いてしまって、お菓子が美味しかった。


 今日の1番は、いつもの10番…。三重県オープンに際して、アウトとインを入れ替えているのだ。インは上がり3ホールがパー4・5・4(3がない)なので、アウトの5・3・4と入れ替えて、テレビ映りを良くしようという算段だ。8(17)番のパー3にはホールインワン賞、9(18)番のパー4にはセカンドニヤピン賞が設けられていた。

 昭ちゃんたちの組の名前がコールされ、打順が告げられた。でも、定刻までショットは待つようにと言われて、オナーのKさんは3分ほどティグラウンド上で待っていた。定刻前に打ってはいけない(失格になる)ようである。
 定刻、「どうぞ」と言ってもらって放ったショットは、目の覚めるような当たりだ。


← 1番433ydパー4のティグラウンド 【拡大】
 

 そして昭ちゃん、ピッシーッと打ったティショットは、やや引っ掛け気味で左へ飛び出した。でもこのホール、右はややこしいけれども、左にはOBはない。
 ところが、「あのあたりはラフが深いので、暫定を打っておいてくださいと」言うキャディさんの勧めで、暫定球を打って第2打地点へ行ってみると、案の定、ボールが見当たらない。
 僕も まさかロストになるとも思っていなかったので、「左に打ったな」ぐらいにしか思っていなくて、ボールの落下地点まではしっかり見ていなかった。みんなで探していると、コース巡回の競技委員が来て、「探し始めてから6分になりますので、暫定球をプレーしていってください」との指示を受けた。
 昭ちゃん、気を取り直してフェアウエイにある暫定球を打ったが、やはり気落ちしているのか当たりが薄くて10ヤードほどショートした。
 アプローチは得意だと言っている昭ちゃん、グリーン手前10ydからアプローチウェッジで奥のピンを狙う。
 コツンと打ったアプローチはトップで、奥のラフまで転がってしまった。平常心をどこかへ置いてきている昭ちゃん、この返しのアプローチをショートして、ボールはエッジで止まったけれど、これを寄せて、5オン1パットとロストとで、合計「8」…。


   1番のグリーン。砲台で、ショートもオーバーも
   みんな下へ落ちてしまう。     【拡大】 →



 まだ1番なのに、「もうアカン、帰る」と弱音を吐く昭ちゃんを、「アマの試合は下駄を履くまでわからん。集中力を切らすな」と叱咤激励…。

 
 2番548ydパー5は、蛇行するクリークが2打と3打地点でフェアウエイを2回横切っている、桑名CCの名物ホールだ。→
 4番目に打った昭ちゃんのドライバーショットはまずまずの当たりで、フェアウエイの左へ転がった。しかし、他の3人のティショットよりも30〜70ヤードほど置いていかれていて、苦しい展開である。「ここへ出てくるには、あと30yd、距離が要りました」と弱気だ。
 

← セカンド地点の前を横切るクリーク 【拡大】


 昭ちゃんの7番ウッドのセカンドはナイスショット…。1回・2回とホールを横切るクリークの間のフェアウエイのほぼ中央にボールを置いた。
 しかし、ちょっと安全に刻みすぎたというところか…。ここからグリーンまでは、まだ170ヤードの登りが残っている。

 昭ちゃんの第3打は7番ウッド…。ボールはグリーン左のあごの高いバンカーをかすめて、カラーに弾み、奥へと転げた。
 その返し…、得意のアプローチは3mオーバーし、入らずのボギー。


  3打目地点を横切るクリークからグリーンを望む。
       ここからはグリーン中央まで110yd →


 
← 2番ホールをグリーンから振り返ったところ


 3番220ydパー3。昭ちゃん、スプーンのティショットは右手前に少しショート…。寄せきれずにボギー
 
 







        4番455ydパー4【拡大】 →


 このホールのティグラウンドに立ってみて、距離の長いことにびっくり…。ダラダラっとした登りだから、実質は表示の距離よりも、あと20ydは足さなければならないだろう。
 「こんなに長いホールってあったっけ?」とキャディさんに聞くと、「この池の後ろに、ティグラウンドを造りました」という答が返ってきた。そんなにコースを長くして、どーするんだ。


 昭ちゃん、ドライバー、スプーンと打つけれども、グリーンまであと20ydほど足らない。「限界や」とつぶやきながら、3オン2パットのボギー。


← 4番をグリーンから振り返ると
 




 5番445ydパー4。ティショットは打ち下ろ
し、緩やかに右へ曲がっていくホールだ。


      ティグラウンド風景 【拡大】 →

 








← 5番のフェアウエイ。幅が狭く刈られて
 いるのが判るだろうか。
 【拡大】


 昭ちゃんのティショットは、フェアウエイ左サイドの絶好のポジション。そこから渾身のスプーンのセカンドを放って、グリーンのカラーへ…。
 5mのアプローチパットをコロンと放りこんで、バーディ! 上昇気流に乗れるか。

 
 6番205ydパー3       【拡大】→ 
 池越えのこのホール、ティショットの失敗は許されない。5番ウッドを持った昭ちゃん、グリーン右からドロー気味のいい球を打った。
 ややショートながら、グリーン手前5mにつき、これを1mに寄せてパー。
 昭ちゃん、バーディ、パーときて、流れはこちらに向いてきている。
 

 7番410ydパー4.


 左ドッグレッグの、桑名では距離の短いホールだけれど、力が入っている昭ちゃんのティショットは引っ掛け気味で、左のラフへ飛んだ。曲がりっぱなのバンカーの手前だったから、200ydも飛んでいない。
 7番ウッドを取り出したセカンドショットはチョロ…、前のバンカーはかろうじて越えたものの、50ヤードほどしか飛んでいなくて、まだラフだ。
 残りは160yd、5番アイアンのサードショットは、ヘッドがラフに取られてシャンク気味に飛び出し、今度は右ラフにもぐりこんだ。    【拡大】
 そして50ydのアプローチ、これが下を抜けて、ボールはガードバンカーに捕まってしまった。気力が続かないのか、気の抜けたバンカーショットは出ただけで、まだグリーンに乗っていない。ここから寄せて1パットだったが、6オン1パットの7…トリプルボギーだ。


 1番で8を打ち4オーバー、そのあとなんとかボギーでしのぎ、5番のバーディ、6番のパーで、ここまで6オーバーと持ち直して、せっかく流れが来ていたのに、ラフからのウッドの失敗で全てをオシャカにしてしまった。
 

 8番537ydパー5。 5オン2パットのダボ。
 
 
  8番のセカンド地点。フェアウエイが かなり
  狭められていのが判りますか   【拡大】 →


 9番435ydパー4. 3オン2パットのボギー。


 結局、インのトータルは12オーバーの「48」。う〜ん、アマチュアの試合は何が起こるか解らない…というは確かだけれど、後半に望みをつなぐには、出来れば43までで、せめて45では上がって来てほしかったところ。
 試合にしようと思うと80〜82ぐらいでは上がってこなくてはならないから、最初のハーフで48を叩いてしまうと 後半は32〜33が必要になる。これはちょっと不可能な話で、こうなるとゲームへの興味は諦めなければならない。やはり試合はハーフ40以下、3ホール毎に1オーバー…、上がりの3ホールを丁寧に…、前半よりも後半を大切に…、ゲームを組み立てることだ。
 

 上がっていくと、まだ最終から3組ほどがスタートしていなくて、40分ほどの待ち時間があった。とにかく冷房の効いているところへ避難しようと、レストランへ上がってアイスコーヒーを飲んだ。

 「インの目標は、トータル100を切ることです」と、昭ちゃん、キッパリ…。







 10番437ydパー4 3オン2パットボギー。


 11番419ydパー4 3オン2パットボギー。


     昭ちゃん、2ホールを2オーバーと、
     100切りを目指して絶好調…。

 
12番575ydパー5. 
  
  12番 ティグラウンド ↓  グリーン →
    【拡大】はそれぞれの写真をクリックしてください





 
 
 昭ちゃん、ティショットをティグラウンドのすぐ左前にあるOBに打ち込んでしまった。

 気を取り直して打った打ち直しはフェアウエイ左へ…。セカンドもナイスショットだけれど、サードショットの残りはまだ170yd…、クリーク越えの難しいピンだ。
 得意の7番ウッドでピンを狙ったショットはやや右へ吹けていって、グリーン右の池に波紋が広がった。4オン2パット+1ぺナ+OBで「9」…、またやってしまった。100切り、ピーンチ!
 

 13番180ydパー3.  【拡大】 →
 全ての悪夢を忘れて、昭ちゃん、新たな気持ちでのティショットだ。
 5番ウッドを手にしてフルショット…。ボコンと鈍い音を立てて、頭を叩かれたボールは、ティグラウンドの前のクリークへと消えた。
 クリークの手前からドロップして打つのだが、キャディさんももう見捨てて行ってしまって(笑)、距離がわからない。
 バックティから50ヤードほど前に来ているから、残りは130ヤードぐらいだと言ったのだが、「150ヤードほどあると思います。6番で打ちます」と言ってグリーンオーバー…。その返しも上からのアプローチで、15mほどオーバーしてしまった。
 しかし、20mほどのロングパットを2本、10mを2本沈めて(バンカーエッジからの奇跡のチップインバーディもあった)予選を突破してきたミラクル昭ちゃんは、このパットをゴツンと沈めて、同伴競技者に「ななな…ナイス…バーディじゃなしに、えーと…」と計算させていた。
 グリーンエッジで見ていた僕は、「アハハハーッ、お前、ホントは上手いのか下手なのか解らんなぁ」」と思わず笑ってしまった。3オン1パット+1ぺナで5。
  

14番404ydパー4. 寄せワンで久々のパー。


← 15番380ydパー4


 桑名CCでは、一番短いミドルなのだが、左の林に打ち込んで
ダボ。林の中から出すのにも、昭ちゃん、ウッドを持っている。


 16番537ydパー5. 最早やヨレヨレの昭ちゃんに537ydをパーオンする力は残っていない。4オン2パットでボギー。
 





 三重テレビの中継ホールに入ってきたので、櫓が組まれ、担当のスタッフがカメラワークや音拾いなどのリハーサルをしていた。
 放送は明8日の決勝日だけだということを知っていた僕は、「今日は会社を仮病で休んで来たんだから、映すなよ」と笑いながら言うと、「あっ、大丈夫です。今日は放送はありません。…でも、明日までは残らないようにしてください」と切り返された。(大丈夫、今日で消えるよ。(笑))           【拡大】


 17番224ydパー3. ここまで11オーバーの昭ちゃん、
100切りには、あと4ストロークを残している。しかし、ダボ・ダボと来たらおしまいだ。
 桑名CCで一番長いパー3のこのホール、昭ちゃん、えいっ…とドライバーで打った。と、このショットが見事にピンの右5mにワンオン…。ホントにこの男は、上手いのか下手なのか解らない。ろくすっぽフェアウエイを捕らえることも出来なかったドライバーが、この土壇場でナイスオンするンだから…(笑)。
 やや下りの軽いフックラインを慎重に打って50cmにつけ、ナイスパー。難しい18番を残しているが、これでなんとか100が切れそうだ。「9」を叩かなければ… 


← 18番438ydパー4 【拡大】
  フェアウエイが狭く刈られている。


 最早や、438yの登りは2打では届かないと覚悟して、最初から3オン狙いの昭ちゃんだけれど、例のごとくラフからラフを渡り歩いて4オン、まだ15mほどのパットを越している。でも、まさかここから5パットはしないだろうから、100は切れたなと僕も安堵の一息…。付き添いも疲れる。
 と、この15mをゴーンと1パット…。「僕、パットに自信ができたのが収穫でした」と、能天気なことを言っていた。 
 かくしてインも12オーバーの48で、長いパットを5〜6発放り込んで、トータル「96」。
 やったね、昭ちゃん、おめでとう、100切り達成!
 

 「もう2度と試合には出ません」と言い残し、風呂にも入らず、スコアボートを見ることもなく、フロントへ行って清算…。予選通過のスコアを確認する必要もない気楽さで、おそらく全参加選手の中で、1番に帰ってきたのではないだろうか(笑)。


   帰りの高速道路で見た積乱雲。 【拡大】
    大空にニョキニョキと屹立して、大迫力だ…!
    昭ちゃんの今後のゴルフ人生を暗示しているのか →





 後日談…。コーヒーを飲みながら、昭ちゃんが笑う。
 「章さんみたいなギャラリーは居ませんよ。普通はコースの外側を、プレーの邪魔にならないように静かについてくるものでしょう。それを、フェアウエイを一緒に歩き、会話には入ってくるし、池に入れたらここから打てとか…、中部の選手はプロもアマも学生もレベルが低いとか…、一緒に回っていたプロや学生の子はちょっと目が点になっていましたよ」。
 「ええんや、あのプロは僕の同級生が支配人やっとるクラブの所属やし、ゴルフの上手な学生はチヤホヤされとるから、そんなもん偉いこともなんともないということを解からしとかなあかん」と章くん。
 「最後には、カートに乗って走りまわっとるンやから、何モンやと思ったでしょうね」。
 「ギャラリーは、風や木と同じ部外者やから、カートに乗ろうが、ボールを蹴飛ばそうが、何の問題もない。キャディさんも、手伝ってもらって喜んどったもンね」。
 「来年から、三重県オープンは、ギャラリー禁止になるンと違いますか」と、話題は尽きない。


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