【63】 ゴルフの1ストロークが持つ意味               2006.06.16
    ― 「一輪の花を愛でつつ」 ハリー・ブッドショー ー

伊勢高原14番ホール
 きー坊(女の子)からのメールが届いた。
『 今日一緒に回った美人のゴルフは、6インチどころか、変な場所にボールが止まったら、平らなところまで出してもOK。 パットも70cm位のはOKで、木の根っこに止まったボールを打とうとしてカラブリした時、一緒の男の人が、「出せば良いのに…、ゴルフのルールは、プレーヤーが有利になるように出来ているのだから、一度読んでご覧」だって。
 甘〜いゴルフして、良いスコア出して、気分良く帰るというのもゴルフだし…。 ン、彼女のゴルフが甘いのは、ニギリをしてないからかもね。』


 美人を1人、ニギリ地獄に引きこもうとしている(?)女の子からのメールだが、章くんの返信は…、
『 ゴルフのニギリはスパイスだよね。全然ニギらずでは何か足らないし、大きすぎては続かない。AUくんのように、いつもの仲間からいつも巻き上げていては一緒に行く相手がいなくなってしまう(笑)。AUくんは、ハンディ8としてはゴルフが強いからね。それに引き替えKIくんは絶対にニギらない。なぜかは判るでしょう…、そう、彼はハンディ8としては下手すぎる。ニギったら100%勝てないから。ゴルフもいろいろ、ゴルフ場もいろいろ、ゴルファーもいろいろだよなぁ。
 その美人にしても、「甘〜いゴルフして」、果たして「良いスコア」につながるかどうかは疑問だよ。目の前の一打に限って言えば有利になるかも知れないけれど、ゴルフは長い目で見ればみんなに公平に出来ているもの。自分に有利に図ると、ゴルフが卑しくなったり、上達が止まってしまったり、社会的な評価を落としたりして、どこかで不利益をこうむるよ。
 1打に名誉と命を賭けて、先人が営々として築いてきたゴルフの歴史を知れば、自分に有利に図るなんて、とても出来ない。1打で人生を変えたゴルフアーはいくらでもいる。1打の意味を知るべしだね。
 最古のゴルフ・ルール(不文律)は、たった2条、「ありのままの状態でプレーせよ」「自分に有利に振舞ってはならない」。
 かつての日本アマ優勝者で、学生ゴルフ界の指導者川崎 肇さんは、学生たちに口を酸っぱくして言ったという、「決して触るな! タマはいじるとくせになる」(←僕の創作じゃないよ)。
 でも、プライベートなラウンドで、ローカルルールに認められたりしている場合、デボットのボールを横へ置いてあげたり、深いラフに潜ったボールを草の上に置き直してやったりするのは、それはそれで良いと思うよ。』


 1960年、廣野GCで行われた日本オープンで、陳清波はスコアの上では1位ながら、1ストローク少ないスコアを申告して失格となった。 ベン・ホーガンは、全米オーブンで「アドレスしたらボールが動いた」と1ペナネールティを申告し、1打差で5度目の栄冠を逃がしている。また、優勝争いをしながら、ラフに転げたボールに一輪の花がもたれていたのを見て、アンブレアブルを宣したイギリスのプロ、ハリー・ブラッドショー。彼の名前はこの1打でもって、永遠に語り継がれることになった。ゴルフにおいて、1ストロークの持つ意味は果てしなく大きい。




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