【65】ハンブルグ ゴルフ便り ―異国の地で20年続く日本人コンペ―  2006.10.07


 ドイツのハンブルグで、もう20年になる、日本人有志のゴルフコンペが開催されている。その会を世話している友人のメールから、遠い異国の地でゴルフを通じて交流する人々の様子や、洋の東西を問わないゴルフに興じる人々の姿をのぞいてみよう。


 『 20年前、ハンブルグに滞在している日本人の間でゴルフコンペといえば、ある日本の銀行主催のコンペのみで、下手なゴルファ―はお呼びでないという状態でした。そこで「下手でも、女性でも参加出来るコンペを!]と2名の世話好きの駐在員(100をやっと切る程度の腕前でしたが)のアイデアで、出来たのがハンブルグ「芋掘会」コンペです。タ―フを思いっきりとって(ダフってばかり!)まるでドイツ名物の芋を掘るがごとくのプレーヤーたちの姿から命名しました。
 進行を早める為にダブルパ―のスコア―でオン出来なければギブアップ。スコア―はダブルパ―+1とするなどの特別ル―ルを作ったり、ビギナ―でも賞品がもらえるように、ドラコン+チョロコン、ニアピン+3打&4打ニアピン、最多パ―&パー(8)賞 (=パーと8のスコア―が多い人)、珍プレ―賞、最多ギブアップ、最多ロスト賞…等々、皆が楽しくゴルフ出来る様に色んな賞を作りました。
 登録会員は60名ですが月例会参加者は20~25名。以前は40名以上の参加だったのですが、ここ10年、駐在員が減り続けているので、今では20名でも参加者が多い方です。ハンディ―の上限は40(20年前は60!)、シングルは5名。
 私は第1回目からの参加、それも初めてのラウンドが芋掘コンペでした。今年は20周年を迎え、創立当時からの参加者はわずか2人のみとなりましたが、私が万年幹事を引き受け、 嬉しいことに今ではハンブルグで一番レベルの高い、人気のあるコンペとなっています。
 20周年記念大会は、今年8月に総勢28名で思い出のゴルフ場(20年前の開催地)で、遠くデュッセルドルフやシュツットガルトからも参加者を迎えて盛大に開催しました。沢山の賞品の寄付もあり、高価な本革のバッグがあるかと思えば会の名前にちなんで、ラスト賞は芋10キロ。馬券は日本レストランのオ―ナ―の一人勝ちで、配当金はなんと4万4千円でした!


 このコンペでは私は幹事に徹していて、なぜかスコア―はいつも悪い。【章くん注、彼女は今年、女子のクラチャンを取ったシングルプレーヤー】 第一組目のスタ―トで、懸賞ホ―ルに旗を立てたりしながら、ペースメーカーとして迅速なプレ―を心がけています。
 そして、グリ―ンフィ―の交渉からゴルフ場の予約、レストランの予約、メニュ―の決定、賞品の購入、これらは20年間も同じことを繰り返しているので慣れたものです。プレー以外の部分でも結構大変なのですが、でもそれで良いのです。皆が楽しんでくれれば…。


 参加費は65ユ―ロ、夫婦は60ユ―ロ(9000円)。グリ―ンフィ―+ 飲食代(飲み放題食べ放題! … ドイツではアルコ-ルは少量ならば可、昼間はコントロ―ルはないので、皆ビ―ルを何杯も飲んでいます)+取りきりカップ代、賞品代…等が含まれていますので、すごく安いんです。
 特別賞品は1~3位、ブ―ビ―、ベスグロ 。その他の特別賞は飛び賞(5位・10位・15位…)、バ―ディ賞はボ―ル3個と決めています。毎回150個のボ―ルを買いますが、余った時は、さらに特別賞を作って全部消化。 全員が何らかの賞品を持って帰ります。


 一番面白いのは珍プレイ賞。自己申告ですので、言わなきゃ損と、次々と面白い申告が飛び交います。
 ベストドレッサ―賞で、阪神タイガ―ズのユニフォ―ムを着てプレイした人がいました。阪神が優勝した時でしたが、これもドイツだから出来たのでしょうか。日本ではプレイ禁止…?
 握りで儲けて車を買ったとか買わなかったとか…、くれくれ詐欺(実力を隠してハンディをくれくれ!とわめいているから)にかからないようにと号外が飛んだり、プレー後の食事会のときは、握りの払いとハンディ交渉で大騒ぎです。


 芋掘会のプ―ル金で、「ドイツ人対アジア人のライダ―カップ」も6回ほど行いました。これは寿司食べ放題で、我がクラブのオフィシャルコンペに組み入れられるほどドイツ人には人気のあるコンペでした。
 年々ドイツ人の参加が圧倒的に多くなり、ドイツ人に東洋人としてプレイしてもらうことにしました。日本チームに参加するドイツ人の中には、日の丸の鉢巻をして来たり、髪を黒く染めて来る人もいたりして、「私は日本人ダア~」とパフォ―マンス。初めは面白かったけど これではライダ-カップの意味が無いと結局4年前に中止。 未だにクラブコンペとしては最高のコンペだったと語り伝えられています。(当然ですよね! 多くの在ドイツ日本企業がスポンサ―になってくれて、賞品はデジカメ・時計やプレ―ヤ―など高価な物ばかり。寿司もハンブルグで一番の高級レストランから取り寄せたりして、参加費は35ユ―ロ(約5000円)ですから!)


 芋掘コンペ100回記念大会には、私は皆勤賞で100本のバラを頂きました。残念ながら母の葬儀で皆勤は途絶えたけれど、それでも138回で不参加は一度のみ。自分でもすごい!と思っています。でもまあ、これは私が年間スケジュ-ルを決めて、自分の都合の悪い日は避けて開催していますから、当然なのですが...。


 芋掘会の歴史は私のゴルフの歴史でもあります。何百人もの方が参加され、そして帰国されました。ゴルフを通じて友好の輪が広がって行きました。東京と大阪支部が出来ました。そしてシンガポ―ルにも(シンガポ―ル以外はもっぱら飲み会ですが)。ゴルフに出会えて本当に良かったと思っています! 』


● 「芋掘り会」は、異国に滞在する日本人の皆さんの 月に一度の拠りどころだったのだと思われる。日系企業の協力を得られたというのも、この会が参加した日本人の皆さんに、いかに支持されていたかということの証明だろう。
 また、コンペの成功は、幹事の努力の賜物である。遠くからの参加者と豪華賞品を集めての20周年記念大会…、「今ではハンブルグで一番レベルの高い、人気のあるコンペ」に育て上げたご苦労に、乾杯!
 「ニギリで車を買われた」とか、「こいつが良いスコアを出すのは 俺が買ってやったクラブのおかげ」とか、ゴルフのベットの話は世界中どこでも同じ。ハンディをくれくれと言って勝っていく輩を、「くれくれ詐欺」と言うのも初めて知った(笑)。 
 コンペのアイデアから、プレーフィの交渉、賞品集め、いろいろな特別賞を作って参加するみんなを楽しませる配慮も行き届いている。自己申告の珍プレィ賞…、言わなきゃ損と次々と面白い申告が飛び出すというのも傑作だ。今度、僕たちのコンペにも拝借させていただきますと許可をお願いしておいた。
 極め付きは、「ドイツ人対アジア人のライダ―カップ」。ゴルフの存在意義ここにあり…というイベントだ。日本チームに参加するドイツの皆さんの、「日の丸鉢巻」や「黒髪染め」といった、にわか日本人振りもいい。 
 「138回で不参加は一度のみ」の名幹事さんには、「ハンブルグではお世話になりました」という方々が、日本にはもちろん、世界中に散らばっている。ゴルフクラブを持って世界を歩けば、どこでも下へも置かない歓待だろう。ゴルフって、ホントにいいものだ!
 芋掘り会が200回・300回と発展していくことと、名幹事さんがいつまでもご健勝で颯爽とプレーをされることを、心からお祈りしてやまない。


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