【10】 三重県知事選 野呂昭彦氏 当選             (4.13)
   − これからの 三重県政を考える −


 午後8時16分、NHKが野呂明彦氏の当選確実を打った。統一地方選前半戦のうちの三重県知事選の結果が決まった瞬間であった。同時に、三重県政の8年前への後退が決定した瞬間であったというのは杞憂だろうか。


 野呂氏は、民主党・連合三重(三教組・自治労…)をはじめとする100余の団体が推薦する候補者である。従来の自民VS革新の図式からいえば、革新勢力に支持基盤を置く候補者と見られそうだが、革新とか改革派というのには疑問が残る。
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呂氏は父親の代から自身も自民党の国会議員として長年にわたり国政に参与している。地盤とする松阪市には、衆議院議長も務め自民党に大きな力を持つ田村氏がいて、小選挙区では自民党公認が得られず、新進党→民主党から国政選挙に出馬、自民党田村氏と争ったものの敗れたという経歴を持つ。のちに松阪市長に当選し、現在1期目の任期半ばでの、知事選出馬であった。

 野呂氏は、北川県政の継承・完成を公約のひとつに掲げている。さて、「カラ出張問題」で2億円に上る疑惑金の返還を行うとされている県職員を組織する自治労や、組合専従教職員の「給与返還問題」を抱える三教組などが推薦する野呂氏が、はたしてこれら公務員の襟を正して、生活者主体の県政を進展させることができるのだろうか。
 ここで留意したいことは、北川改革が断行されてきた三重県においては、民主・連合は革新勢力ではなく、いわば抵抗勢力であると認識せねばならないのではないかということである。「カラ出張問題」や「給与返還問題」は、北川改革が目玉として取り上げた、公務員の綱紀粛正を象徴する課題である。これらがウヤムヤになって後退することがあれば、改革は頓挫したと言わねばなるまい。野呂新知事の試金石として注目したい。


 そして、今回の知事選に際しては、同じ松阪市ということから田村氏が支援を打ち出し、強力な選挙活動を展開していたと聞く。地方の選挙であり無所属の立候補だから、自民勢力がバックにあることに問題はないし、本人は無所属であって革新とは言っていないから、これも問題はないのかも知れないが、ここで留意したいことは、従来から田村氏の選挙はファミリー企業が集票マシンとして強力に機能してきたということである。
 すなわち、その支援を受けて当選した野呂氏が、新しい県政に旧来型の談合体質を受け入れたりしたら、改革の継続どころか、県政を北川以前の状態に逆戻りさせることになる。情報公開を推進する近代民主主義の体制に逆行して、地方分権が進む日本の中でも三重県は取り残されることになるし、県民の税金をドブに捨てることにもなる。


 階級闘争を掲げ教条主義的な労働組合や教職員組合、対立を許さない一党独裁の共産党など、革新といわれる勢力が支配層を形成する社会は、健全な民主的社会とはかけ離れた道を歩くことが多いことに、当事者も人々も今一度思いをいたしたい。野呂新知事が、選挙の支持母体となったこれらの勢力に取り込まれて、県政を後退させるのではないかという懸念が、現実のものにならずに懸念で終われば幸いである。


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