【16】コンビナートの町の絶景レストラン 「グランデ−ル」  (2002.8.11)


 このレストランを紹介するには、まず30゜ほどの傾斜の急坂を車で上り下りできるかどうかを尋ねなければならない。住宅街の中の細い道を縫っていって、最後の50mはエイッと掛け声をかけてアクセルを踏まなければならない急激な上りをクリァしないと、玄関のドアに辿り着けないからである。
 この上りを紹介しただけで、このお店に行ったことがある方は、思い出していただけるかもしれない。それほど強烈な上りなのである。お店の人は、「連絡いただければ、運転のお手伝いに行きますよ」と言ってくれる。それほど強烈な上りなのである。四日市采女町で「急な坂のレストラン」と聞けば、すぐにわかる。
 その上りを這い上がって行くだけの価値は十分にある。店内に入ると、南東に広がった窓から暮れゆく四日市の町並みが一望され、前庭の右奥には音を立てて滝が流れ落ちている。
 料理は、アラカルトも豊富だが、10000円ほどのおまかせコースを頼めば間違いがない。アミューズに出されたマッシュルームの冷製クリーミースープを口にしたとたん、フレンチの世界に引きずり込まれる。前菜もメインもよい味わい。特に、分厚く切った子牛ロースのポワレは、口に含むとソースの香りがかすかにして、噛むとジュワッと味わいが広がる。
 このシリーズでは、味がいまいちのときは味に触れないことにしているのだが、美味しいときは美味しいと紹介することにしている。お酒の飲めない私にはワインの講釈ができないのが残念だが、ワインメニューに並ぶ種類も豊富だ。
 午後8時ごろ、裏山に住むタヌキの一家が遊びに来た。ご主人が前庭に料理の余りを並べると、お行儀よくそれを平らげていく。ナイフとフォークもほしそうだった。


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