白川郷から国道360号に入り、天生峠(あもうとうげ)の紅葉を見に行ってきました。
天生峠は、岐阜県飛騨市と大野郡白川村の境界上に位置する標高1,290mの峠です。神通川流域の飛騨市から庄川流域の白川村へ抜ける国道360号の途中、白川村と飛騨市の境界にあり、白川郷からの標高差は約800mにもなります。
峠に至る道は狭く、急坂・急カーブが連続する山岳路がつづきます。大型車(長さ8m以上)は通行不能…。普通車についても、積雪期である冬期は通行止め(例年、11月半ば〜5月末は閉鎖)になるほか、元もと地盤が弱いために無雪期も度々崖崩れによって通行止めになることが多い道路です。
峠一帯にはブナをはじめとする落葉広葉樹の原生林が広がり、知る人ぞ知る…紅葉の名所です。
【写真にカーソルを当てたとき、手の形に変わったら、大きい写真にリンクしています】
国道158号を富山のほうから南進すると、白川郷集落に入る手前に、ほとんどヘアピンカーブのような左折があり、360号に入ります。
入って程なく、道沿いに合掌造りの家々が見えてきます。このあたりの合掌造りには、日常、人が暮らしています。
360号に入ってしばらく走ると、右に矢印が出ていて「展望台」と書いてあります。よくパンフレットなどに載っている、合掌集落を一望する写真が撮れるところです。
これがその展望台から見た風景 →
(パンフレットより。雪の頃の夜景ですね)
←合掌集落を抜けると、道の両側に木立が続く、山道へ入っていきます。時刻は11時50分…。
このあたりの道幅はまだ、ときどき対向するのにスピードを緩めなくてはならない程度の狭いところがありますが、運転に支障のある狭さではありません。
でも、はじめから、中央の白線はなかったですね。
8m以上の大型車は、
「通行不能」と表示がありました。→
← このあたり、ちょっと狭くなりました。
でも、舗装の状態も良く、ガードレールもしっかりしていますから、走りやすかったです。
狭いところは、対向車が来ないか見通して、来ていれば広いところで待つことが必要です。
一部、ヘアピンカーブが続くところがありますが、安房峠の旧道で鍛えた章くんの山岳ドライブテクニックは、全く問題にもしません(笑…?)。
← 道端に、滝が落ちていました。
この360号は、平成6年に大改修工事が行われたそうです。
それ以前にこの道路を走った人は、対向もできない狭い道で、舗装もところどころ途切れて悪く、何よりもガードレールも無いところも多くて怖ろしかったと言います。
大改修以来、とても走りやすい道になっています。標高差をつめていく峠道ですから、ヘアピンカーブなどは仕方ないですが…。
上り坂の途中…、遥かに白山連峰が遠望されます。→
傍らに立っている案内板によると、左から御前峰(2702m、白山の最高峰)、剣が峰(2677m)、大汝山(2684m)、真ん中あたりに妙法山(1775m)、右3分の1あたりに野谷荘司山(1793m)、右端に三方岩山(1736m)です。
「案内板」は、かなり以前から立てられていたようで、大改修工事前にこの道を走った人の話の中にも出てきました。ここからの眺望は、その頃から素晴らしかったようです。
← 登ってくると、木々もかなり色づいてきました。
道路状況はかなり良いと思うのですが、それでも白川から飛騨古川へ向かうのに、タクシーに360号を走ってくれと言ったら、Noと言われたと何かの記事で読んだ覚えがあります。
地元のタクシーも敬遠する道路ということなのですね。
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12時30分、天生峠(1260m)の広場に着きました。
地元の人(だと思うのですが)が、テントを張って、
おでんやおにぎりなどの軽食と、山菜、きのこなどを
売っていました。 →
なめこのビン詰めが200円でしたから、とても安いんじゃないでしょうか。
ちょうどお昼…。章くん、おにぎり350円、
けんちん汁300円、おでん350円、
しめて1000円でお昼をあげました。 →
気温は9℃…。暖かい食事がありがたく、みんな美味しかったです。
お腹も膨れたところで、テントのお兄ちゃんに、「天生峠の紅葉の見所は、この一帯…?」と尋ねて、「山に入って30分ほど歩くと、天生湿原があります。そのあたりが見所です」と教えてもらいました。
湿原へ入る道の入り口に、管理テントがあって,500円の入山料が必要でした。
このあと歩いた山道は、きちんと管理されていて歩きやすく、その管理料としての500円は安いと思いました。
天生峠から籾糠山への登山ルートです。全行程6.2km、登り3時間、帰り2時間もみておけば十分のようです。 →
章くんは、図の中の赤点のところを歩いてきました。天生峠駐車場を出発したのが12時40分、天生湿原へ着いたのが1時10分。湿原を回って、1時40分にカラ谷原生林へ入り、2時にミズバショウ群生地に着きました。
帰りは2時10分に出発、もと来た道を、紅葉・巨木をじっくりと観賞しながら、3時10分に駐車場へ戻りました。
← 探訪路は、写真の通りよく整備されいて、先週歩いた西穂高岳の
ような自然のままの登山道と違って、とても歩きやすい道でした。
山道の途中で、1箇所、視界が開け、白山連峰が見えました。 →
← 結構な山道なんですよ。
でも、章くんが往って帰ってこられる道ですから、ほとんどの人には適度なトレッキングルートといったところでしょうか。
天生湿原に着きました。
標高1400m、
視界いっぱいの紅葉です。 →
← 天生湿原の中洲に「匠屋敷」と名づけられた、小さな祠がありました。
伝承によると、ここで生まれた「トリ」と呼ばれた生まれつき手先の器用な少年が、後に、かの有名な「止利仏師」となったといいます。「止利仏師」…、確か、法隆寺の釈迦三尊像を手がけたのでしたよね。
あたりの紅葉は、
120%といったところでしょうか。→
← 湿原の草花も紅葉し、まわりの景色と相まって、秋一色です。
湿原の歩経路も、板が渡して
あったり、丸太の輪切りが並べ
てあったり、よく整えられてい
ました。 →
↓ このあたりが、湿原の最奥部(登山道の入り口)です。
← ベンチが置かれていて、湿原を歩いた人、これから登山道へ向かう人、戻ってきた人たちが、思い思いに休憩していました。
ここから奥へ入れば、巨木が立ち並ぶというブナの原生林です。
ここまで来て、この秋真っ盛りを探訪しないということは考えられないでしょう。
章くん、急な階段を下って、天生ブナ原生林へと
足を踏み入れました。 →
← しばらく行くと、黄色く色づいた山道の傍らに、カツラの巨木が点在していました。何という太さ…。
どれぐらい太い
のか、横に立って
みるとよくわかり
ますね。 →
巨木に抱きついてみると苔むした幹と葉がよい香りがする…、この時期だけ、特に甘い香りを放つ…と聞いたのですが、鼻が悪いのか、デリカシー不足なのか、章くん、トンと甘い香りは嗅げませんでした。
← さらに進むと、今度はブナの大木が並んでいます。
どれぐらいの大きさなのか、やっぱり横に並んでみましょう。 →
← 巨木が次々と現れるこの森は、自然のパワーを実感できるところです。
大きな木のパワーって、ホント、見るものを元気にする、不思議な感動があります。
カラ谷分岐の案内板にしたがって、ミズバショウ群生地に向い、右折しました。
ミズバショウの季節は終わっているのに、なぜ群生地へ向かったかというと、この自然公園のパンフレットに「ブナの巨木」と書かれていたから、その1本を見たいと思ったのです。
あたりの木々は、鮮やかな黄色に色づいていました。足元の落ち葉が、カサカサと音をたてます。
← 木漏れ日に輝く、この黄金色の
見事なこと…。
ブナの巨木の原生林です。→
← なかでも、いちばん太いヤツ!
気づいたら、あたりに人影は見えず、話し声もしません。ゆっくりと自然に浸ることが出来た時間でした。
でも、このあたりも熊の出没地域です(苦笑)。ガブッとやられたら、行方不明で処理されるでしょうね。
では、引き返すことにします。
原生林をかき分け… →
← さっき下った階段を上って…。
天生湿原に戻って
きました。 →
← 帰り道…。
今度は、湿原の西側の歩経路をたどって、帰途につきます。
紅葉をただ見るだけでなく、その山懐に分け入り、足で歩き、肌で感じた探索でした。
自然に、少しでも近づくためには、やはりその中に分け入っていくことが大切なのだなと思いました。
無事、駐車場に戻ってきて、生還のお祝いに
テントで串焼きにしていたヤマメをガブリ…! →
午後3時15分、車に乗り込み、飛騨古川に向かって出発しました。
天生峠までの登りは白川村を走ってきたのですが、峠から下りは飛騨市内です。路肩の土止め、ガードレールなど、よく整備されていました。
対向車が来ても、問題なくすれ違うことが出来る広さです。数箇所のヘアピンカーブは、どうしようもないのでしょうね。
360号から471号〜41号と走ります。
午後4時10分、飛騨古川に着きました。 →
飛騨の匠の技を伝える古い町並みがつづき、市内を豊かな水が流れる古川…。相変わらず落ち着いた雰囲気の町です。
古川でちょっと休憩をして、午後7時前、高山ICから東海北陸道に乗りました。
あとは滞ることなく走って、午後11時半過ぎに家に着きました。
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