【183】 大杉谷紅葉クルーズと十六尋滝  2009.11.14



 「午後から晴れ」との天気予報を信じて、雨の中を、日本最多雨地域の大杉谷へ向いました。大台町観光課が募集している「大杉谷峡谷 船上紅葉ツアー」に参加するためです。


 大杉谷は、ほとんど手付かずの原生林が広がり、数多くの滝、渓谷の巨石が次々と現れる秘境…。黒部峡谷、清津渓谷とともに日本三大渓谷、日本の秘境百選の一つにあげられています。
 大杉谷への登山道は、宮川第3発電所と大台ケ原を結ぶ登山道を歩くしかありません。登山道(特に宮川沿い)はアップダウンが激しく急峻な断崖にあって狭く危険なので、十分な装備と慎重な行動が要求されます。
 2004年の水害で登山道の多くの箇所に崩落を生じ、宮川沿いの登山道は現在通行不能です(奈良県から入る、大台ケ原より大台林道までは可能)。 【Wikipedia百科より】
 その大杉谷のほんの玄関口のところをのぞいてこようというのが、今回のツアーの目的です。
 

 午前7時、自宅(津市)を出発。津ICから伊勢自動車道に乗り、勢和多気JCTで紀勢道を走ります。
 雨模様の日でしたから、午前7時30分、まだ薄暗くて車はヘッドライトを点けています。


← 間もなく降り口、大宮大台ICです。






 8時前…、今日のツアーの集合場所 「奥伊勢フォレストピア」に着きました。




← コーヒーを飲みました。コップの水がとても美味しかった。





「奥伊勢フォレストピア」は宮川町が経営するリゾート宿泊施設…、人気の「奥伊勢宮川温泉」は美肌効果に優れているとか。季節の野草風呂や露天風呂などがあり、日帰り入浴客も多く訪れます。
 
 
 午前9時30分、「奥伊勢フォレストピア」のバスに乗って、宮川沿いに上ります。


 「奥伊勢フォレストピア」を出発して40~50分…、「宮川ダム」が見えてきました


 日本有数の多雨地域として知られる紀伊山地を水源とする宮川は、古来より暴れ川として流域の人々に恐れられてきました。
 宮川の作った谷が深いため、上流・中流域では本流の洪水による被害はあまりなかったようですが、橋や渡し舟が流されるなどの被害がありました。
 下流域は宮川の土砂が堆積した沖積平野のため、洪水が起きると被害は甚大で、古くは大神宮諸雑事記に717年(霊亀3年)8月16日の洪水の記録が残されているそうです。




  ダム湖 →


 1952年(昭和27年)2月起工式、宮川堰堤築造工事が着手されました。そして4年の歳月をかけて、1956年(昭和31年)12月、完成。重力式コンクリートダム 堤高:88.5m 堤長231m 相貯水量7,050万立方m(東京ドーム約57個分)、宮川水系への給水と、三重県南部の発電を担って、今日に至っています。


 このダムは、治水・洪水対策の役割を果たすべく、ダムに流れ込んでくる洪水の量で100年に1度の規模を想定して作られているそうです。「平成16年の台風21号来襲時の写真」が 三重県松阪建設事務所ダム管理室ダム管理課より提供されていますので、興味のある方はご覧ください。
 http://www.pref.mie.jp/MKENSET/HP/dam/t21/index.htm


 この湖底には、大杉谷地区の民家92戸が水没しています。


  10時30分、宮川ダム堰堤を出発。ダム湖を走る観光船の
 乗り場(=定期バスの終点…バスセンター)に着きました →



 ここには食堂・みやげ物店・公衆トイレ・観光センターなどの建物があります。平成16年の大水以来、登山道が閉鎖されていますから、訪れる人が少ないせいか、食堂やみやげ物店は閉まっていました。


← 10時46分、乗船開始。3艘目に見えている白い船が、今日、乗船する船です。


 現在、湖面を遊覧しているのは貸切船のみ。大台町営の定期船は休航中です。


 
ひときわ高く、山肌を紅葉に染めているのは国見山… →


 風もなく、湖面は穏やか…。でも、全面オープンデッキの船は、けっこう寒かったです。湖面を渡る風って、冷たいのですね。


← 大杉谷渓谷のシンボル「新大杉谷橋」(吊り橋)、その真っ赤な色から…通称「赤橋」が見えてきました。




  
緑色とのコントラスト
  が、ひときわ鮮やかで
  した。      →



 乗船場を出発してから40分…、11時26分に第3停船場へ着きました。


← 停船場と言っても、河岸にコンクリートの階段を下ろしてあるだけ…といったいでたちです(笑)。
 船は、この階段をめがけてへさきを突っ込み、接岸させます。


 へさきを湖岸の土砂に乗り上げて、ロープを渡して船を固定し、板を渡せば、上陸準備完了です。

 船頭くんの「どうぞ」の合図で、上陸開始…。渡した板は、全然揺れることもなく安定していました。


  水辺から、結構きつい階段を上ります。案内の人の話では、
 「100段ぐらい…」とのことです。           →



← やっと、上の道路まで上がりました。


 船着場から上がってきたところのこの道は、ダム湖の北岸を第3発電所まで車が走る、県道53号です。
 この道を5分ほど歩き、さらに右手の山間に少し入ったところに、「六十尋(ろくじゅうひろ)滝」があります。


 山道を少し歩いて、ちょっと急な石段にかかるころ、大きな滝の音が耳に届きます。激しく岩を打つ、轟音です。


← 見えてきました。その高さが六十尋=90mあると言われる「六十尋(ろくじゅうひろ)滝」です。


 昨日の雨で水かさが増し、水は岩肌を流れ落ちるなどといった生易しさでなく、滝口から放射状に放出されていました。
 滝つぼよりも前方に落ちるせいか、岩に跳ね返る水しぶきもすざまじく、歩経路は水浸し…。たたずんで見ていると、衣類が濡れるような水しぶきでした。


    轟々たる水音を立てて流れ落ちる、豪快な滝です。→


 滝の前の大きな紅葉がキレイに色づいて、白い滝の水、黒い岩肌と、美しいコントラストを描いていました。


← 紅葉のアップです。
  












← 滝口です。水量が多くて、あふれ出ているというカンジですすね。


       左上の岩肌を細かく流れる水の白さもキレイです。 →


← 少し離れて、上流部から滝つぼまでの全景を撮りました。


 ここ大杉谷は、この六十尋滝を皮切りに、下から巨石が横たわる大日嵓、木や岩が苔むしている京良谷、150mを流れ落ちる千尋滝、深山幽谷そのもののシシ淵、そのスケールに圧倒されるニコニコ滝、見上げる巨岩の平等嵓などの名瀑・山峡が現れ、やっと桃の木小屋に到着…。さらにその上には、渓谷随一の七ッ釜滝、滝口から滝つぼまでを歩いて見ることのできる光滝、そして大杉谷最後の堂倉滝と続きます。
 登山道の復旧工事は下から進めることが出来ず、奈良県側から行われていますが、全通するのは5年ほど先とのことです。


       もと来た道を戻ります。大石、ゴロゴロです。→




← 階段を下りて、船に戻ります。
  
 出航して間もなく、湖岸からせり出している大きな岩が見えてきました。
「のぞき」と呼ばれている箇所です。
 ここは、ダムが造られる前、岩の上から流れをのぞくと、素晴らしい景色が川面に映し出されていたことから、一帯を「のぞき」と呼んだそうです。             ↓→
  


 すざまじい力が加えられて、岩が捻じ曲げられたことが、目に見えますね。
 深い山、刻まれた谷、そしてこの岩…。自然の力の大きさをつくづくと感じます。


 やがて船は、大和谷渓谷へと入っていきます。


← その入り口にかかる「大和谷橋」。銀色に輝くその色合いから通称「銀橋」が見えてきました。


 「大和渓谷」「垣外俣渓谷」や宮川ダムの堰堤を湖面上から見たあと、お昼前に遊覧船に乗り込んだ乗船場に帰ってきました。


 ここからバスに乗って、大杉谷の地名の由来となった杉の巨木を見に…、いや、ご神木ですから拝観に行きます。


 ところが、『ご神木こちら→』と書いた看板の横の道は、車が一台やっと通れる細い道…。でも、そこはさすがに地元のマイクロバス…。その狭い道へ乗り入れ、急な坂道をエンジン音を響かせながら登っていきました。大杉谷を、バスターミナルよりも奥に入ろうと思えば、この道しかないのです。


← 道幅の広いところで、対向車の有無を確かめながら進まねばならない道でしたが、紅葉のきれいな道でした。


 バスターミナルから約10分…。県道53号を上った右手にキャンプ村があり、その横の駐車場に車を停めて、さらに5分ほど歩きます。


  杉木立の中にお社が見え、その後ろにひときわ巨大な
  1本の大木が聳(そび)えていました。     →



 「うわぁ、こりゃぁ大きいわ」と、誰もが口々に叫んでいます。大杉谷の地名の由来となったこの大杉は、樹高約40m、地上1.5mのところの幹周りは約9.2mで、大人が6人で囲んでやっと1週する太さです。樹齢は1200年と推定されています。

 

← まッ直ぐに伸びた幹は、
この太さです。



  根っこは、
   もうひとつ立派! →


 樹皮に触れると神霊あらたか、自然のパワーがもらえるといわれています。




   横に人が立つと、その太さがはっきり分りますね。→


 午後2時30分、大杉谷を後にしました。



← 宮川上・中流に
 沿って走る、
 県道31号



 「奥伊勢フォレストピア」に帰り着いたのは3時15分ごろ…。宮川温泉にゆっくりと浸かり、午後4時10分、家路に就きました。


 大杉谷のほんの玄関口だけをのぞいた一日でしたが、圧倒的な自然の力と、訪れる者を優しく包んでくれる優しさを感じた一日でした。
                                         

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