◆ 清水寺秘仏のご開帳と大文字送り火         2003/8/16【物見遊山53】

清水寺奥の院ご本尊(秘仏) 千手観音 

 清水寺奥の院のご本尊「千手観音菩薩坐像」が、脇侍の地蔵菩薩・毘沙門天や風神・雷神とともに、243年ぶりに開帳されたと聞いて、お昼から拝観に出かけた。
 丸山公園に車を停めて、八坂神社を抜け、高台寺道から三寧坂・二寧坂・一寧坂を登る。すごい人出だ。そういえば今夜は大文字。お盆に帰って来た亡き人の魂を霊界に送る「五山の送り火」が、京都の夜空を焦がす。
一寧坂で舞妓さんに会った。アルバイトさんか…。
 一寧坂で舞妓さんに会った。でも、振る舞いが素人っぽい。アルバイトさんだろう、本物はもっとキリッとしている。道を歩いているときは…。

 千手観音さまは、まばゆいばかりの仏様だ。正面のお顔と、向かって右に怒りを表す瞋意面、左は慈悲を表す菩薩面の三面を持たれ、過去・現在・未来の三世を観ぜられる。ヒノキ材の一本割矧造りの坐像で、鎌倉初期の彫刻仏像である。
 慈愛あふれる観音様に比べて、左右の梁の上から下界に睨みを利かす風神・雷神の躍動感はどうだ! 江戸初期、七条大仏師庚音作とあるが、青肌の裸姿で風袋を背負い天空を駆ける風神、赤鬼のような裸姿で虎皮の褌をまとい、背中の小太鼓を打ち鳴らし雷光を発する雷神。不況を吹き飛ばし、たるんだ世の中に活を入れるためにのお出ましと見た。

富美屋の川床
 夜7時。先斗町へ出て、富美屋へ上がった。加茂の河原に浴衣姿の人々が行き交い、川岸の床席の灯かりが点る。川面を吹きぬける夜風が涼しい。
 午後8時、東山三十六峰如意ヶ嶽の支峰、大文字山山麓の大の字に火が入る。左京区松ヶ崎西山・東山の妙・法、北区西賀茂船山の船形、北区大北山の左大文字、そして右京区北嵯峨の水尾山(曼荼羅山)の鳥居形を合わせて五山の送り火というが、この三条河原の床席からは東山の大文字がビルの隙間からかすかに見える程度である。
ビルの合間から望む 大文字

 ← 真ん中左上、かすかに浮かぶ「大」の字の
  灯がわかりますか。



 もしあなたが「今日は大文字焼きの日ですね」と言ったら、あなたは京都人からヒンシュクを買うことになる。京都の人は「今日は大文字さんの日どすなぁ」というような表現はしても、”大文字焼き”とは言わない。「何とか焼きやなんて、まるで饅頭みたいに言わんといて」なのである。先斗町 富美屋の川床
 小1時間…、最後のほうはかすかな残り火が、この世への未練の情念のようにゆらゆらと揺らいで、やがて、いつの間にか山肌はもとの暗闇に戻っていた。
 大文字の送り火を終えると、京都は足早に秋へと装いを替える。




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