【86】 津 祭 り   −沢口靖子さんを迎えて−         2005.10.09


 10月の8(土)・9(日)日は「津祭り」である。8日はあいにくの雨であったが、9日は朝からよく晴れ渡ったお祭り日和で、メイン会場のフェニックス通りから市役所裏の西公園のあたりは、午前中からたくさんの人出でごった返していた。

安濃津丸 登場


 章くん、人混みと、祭り独特の高揚した気分が気恥ずかしくて、例年の津祭りにはゴルフか他所へ出かけるのだが、今年は「沢口靖子」がゲストとして参加するという話を聞き、ご尊顔を拝するために出かけたのである。「澪つくし」(1985年)以来だから、もう20年越しの片思いなのだ。
 市政だよりを引っ張り出して調べてみると、『裁判所前を午前11時に出航』とある。「出航」とは、津祭りにいつも曳き出される「安濃津丸」という道路を曳いていく船があって、芸能人のゲストとか津市の綺麗どころとかが、船上から沿道の市民に愛想を振りまく趣向が組まれ、今年は沢口さんが一日船長として乗船するわけだ。
近藤市長もにっこりと


 いつもは昼前まで寝ている章くんだが、この日は9時過ぎにはパッチリと起き出し、10時過ぎ、ブラブラと歩いて出かけた。家から安濃津丸乗船セレモニーが行われる裁判所前までは、徒歩で約20分ほどの道のりである。
 午前中だというのに、沿道にはたくさんの屋台店が出ていて、あたりには食べものの良いにおいが漂っている。ピカピカ光るおもちゃを持って、子どもたちもご満悦だ。
 章くんは「ベビーカステラ」が大好物。デフレの時代だからか、地方都市の津だからか、今までは1000円と500円の袋しか見たことがないのに、300円の袋も用意されていた。「500円のをひとつ」と言いかけて、グッと踏みとどまった。ここは地元の津市…、他所へ出かけて、ほおばりながら歩いていても差し支えないのとは、訳が違う。

ミス津たちと一緒に手を振る沢口さん

 案の定、「章さん、お早いお出かけですね」と声を掛けられて振り返ると、料亭「はな房」の孝之くん。豆絞りに紺色の半被を羽織って、何かの役目を負っての参加なのだろう。
 市議の村田くん、会計士の安井くんたちと行き交い、裁判所前に到着したのが10時45分。道路上には、すでに安濃津丸が引き出されていた。
 沿道にはたくさんの人出…。人混みの後ろでは憧れのお顔を拝見できないし、船はかなりの高さがあるので、はるかに見上げる形になって姿が遠い。
 歩道に「特別観覧席」という一角があるのを見つけた。席料1000円…、その席に陣取って、前で繰り広げられる踊りやパフォーマンスを観覧するわけであるが、章くんは、沢口さんをひと目見たらそれで満足、そのあとは近江八幡へ出かけるつもりである。沢口靖子が前を通る何秒間かに1000円は高いか安いか…、いや今は考えているときではない。即座に観覧席に入って、最後部の席に陣取る。後ろへいくほど高いし、立っていてもいいから、船に乗っている人たちと目線の位置が同じになる。

 11時、沢口さんが乗船して出航!。安濃津丸はゴロゴロとやってきて、歩くほどの速さで章くんの前を通過していった。
 沢口さんに同乗している近藤津市長が、カメラを構えている章くんを見つけて、「章さんもファンですか」と言って笑う。「ええ、念願が叶いましたよ」と答えたとき、沢口さんと目が合った。その距離、約10メートル!
 章くん、用意してきた一言をかけなければならない一瞬であった、「沢口さん、もう26歳になったの?」と。「誰が26やねん」と答えてくれるかなあ、…と章くんは思い描いていたのである。
 ところが、沢口靖子に見つめられて(ほんの一瞬、視線が行き会った程度のものだったが、章くんにしてみれば「見つめられた」ということになる)、章くんは硬直…! 
 とても声をかけられるような状態ではなく、茫然自失…。その間に、安濃津丸はゴロゴロと前を行き過ぎていって、章くんの20年来の憧憬は、祭り囃子の彼方へ溶け込んでいったのであった。



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