【物見遊山9】 焼き物の里の隠れ会席 みちくさ料理「尾花」 (2002.6.28)
  

 国道422号線を三重県の上野市から滋賀県へ県境を越えて間もなく、焼き物の里「信楽」に入ったところの山の中に、みちくさ料理「尾花」はある。数年前、焼き物の土を買いに信楽へ通ったころ、県境は曲がりくねった山道であったが、工事中の一部を残して整備され走りやすくなっていた。
 6時20分ごろ津を出て、約1時間。「目的地の付近に到着しました。案内を終了します。」とカーナビに言われてから、まだそのあたりをぐるぐると探した。やっと見つけた小さな看板にしたがって車一台の幅の道をたどり、店の駐車場に入ると、石組みの築かれた庭と瀟洒な坪ノ内のむこうに、淡い灯かりに浮かぶ、白い麻暖簾が見えた。。
 主人の手さばきを見ながら料理をいただけるカウンターに座る。おまかせ会席の8品コース、オクラの細切りの前菜から、炙った鱧のつくり、うなぎ豆腐の汁、冷やし茄子と小芋、鮎の塩焼き、ミヨウガとわけぎを添える冷シャブ、揚げ物は甘鯛の霰包み、瓜の一夜干と鰻の短冊の酢の物、そして鮎飯と八丁味噌の赤だし。最後にサクランボと白桃のデザートが出る。順序は定かには覚えていないが、約2時間。
 ご主人は、毎日朝6時に大津まで買出しに出る。帰って仕込みをして昼食を出し、それが一段落すると夜の支度、夜席の料理を出して後片付けを終えると11時になると言う。「料理ばっかりで、丸1日が過ぎていきます」と笑っていた。
 最後の客になってしまって、「ごちそうさん」と店を出たのは午後9時40分。もと来た山道を帰る。このあたりは、秋には一面に尾花(ススキ)が咲き乱れるとか。


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