【14】特殊法人の廃止統合は、国民の力を結集して!       2001.09.05


 政府の行政改革推進事務局は4日、各省庁が3日に提出した所管する特殊法人と認可法人の組織見直し案を公表した。計160法人のうち、廃止するとの回答は5法人にとどまり、大半の回答は廃止・民営化を前提に見直すとの、小泉純一郎首相の基本方針を拒否する実質的な「ゼロ回答」となった。【9/3日本経済新聞】

 省庁の権益を守ろうとする姿勢の頑なさを、改めて見せられた思いがする。特殊法人の現在行っている事業の必要性が無いとは、口が裂けても言えないところだろうが、問題は、第一に本当に必要な事業かどうか。第二にはその事業を遂行するのが特殊法人でなければならないかどうかということである。

 第一の本当に必要かどうか…についてだが、その事業については今まで行ってきたことが全然無駄であったということにはならないのだろうから、その点について言えば「必要」ということになるのだろう。しかし、その事業は、今のこの時代にあってはどうなのか、他と統合したり、ほかに委託して、その事業体(特殊法人)は廃止できる…といったものはないのか。その検討も議論もせずに、この事業あるいは事業体は必要で残さねばならないと、ただ結論付けている。

 第二のどうしても特殊法人でなくてはならないのかという点だが、多くの論拠には、不採算性の高い事業だから国の手でやらねばならないという論理が目立つ。甘えた話である。国なくして、何の事業もできはしない。その国が危急存亡の時期にきているというのに、国の中央省庁の当事者の意識の低いことは、何事であろうか。「省益あって、国益なし」…日本の官僚は自分の帰属する省庁の利益を守り、その権限の拡大と慣例の厳守に情熱を燃やす。そういった、自分たちの権益を守るもののみが有能な官僚であるとする定義から、天下国家を大きく視野に据えて職務に取り組むスタンスへと、日本の官僚も脱皮する時期にきているのではないか。

 太平洋戦争へと突入していった時期の日本において、陸軍も海軍もその当事者たちは、だれひとりとして米英を相手にしての戦争に勝てると考えていた者はいなかった。しかし、「この戦争に反対である」と口にすることは、陸軍のまた海軍の自らの組織に対して著しく背信の行為であった彼らは、勝てない戦争であると知りつつ、組織の論理に縛られて、破滅への道を辿ったのである。

 全体の取るべき道を省みず、セクトの利益を優先させることは、このように危険である。官僚の体質が昔も今も自分たちの組織を守ることを至上とする愚かさから脱却できずにいるのなら、ここは、日本の将来のために改革をすすめようとする努力を、国民みんなが支持し、推し進めることが肝要である。今こそ、物言わぬことが美徳と黙してきたこの国の人々は、自らの声を政治に向かって発し、巨大な権益を頑なに守ろうとする族議員や利権省庁の抵抗を断固として排除し、近代国家日本への改革を実現しなければならない。



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