【33】 田中真紀子外務大臣 更迭!
  
              (2002.01.30)

    ー 惜しまれる 小泉純一郎の誤謬 − 


 午前0時、NHKニュースが、田中真紀子外務大臣更迭を伝えた。一瞬、我が目を疑ったが、次には、小泉改革の底の浅さを見た思いがした。これで、小泉内閣も急速に支持を失い、失地挽回に奇策を弄することになることだろう。
 アフガニスタン復興支援会議へのNGO(民間活動団体)の閉め出しに、鈴木宗男議員の関与があったことを問題としたことについて、田中外相は何の責任を問われなければならないのか。国会答弁に持ち出して混乱させた方法が悪いというのであれば、いつの場合も真相は全て藪の中である。白日の下に引き出さなければ、常にうやむやで巨悪は惰眠をむさぼるばかりではないか。
 外務に特定の議員が関与し、ODAという莫大な援助資金の運用に力を持つという現状を追求し、公明正大なかたちに戻そうとする指摘に、抵抗があって混乱を生じた責任を取らせるというのでは、正義を行うものは常に首をとられることになる。
 「この時期、国会審議が混乱して問題処理が長引けば、2001年度補正予算案審議だけではなく、02年度予算案審議にも重大な影響を及ぼす」ともっともらしい理由を挙げているが、要は小泉首相の胆力の無さがここに至って暴露されたということだろう。外務省の改革をはじめとする省庁改革に腰が引け、道路建設や特殊法人の解体にも権益を守ろうとする抵抗勢力と妥協を繰り返して、いっこうに具体的成果を挙げることのできない小泉首相に対して、ここまで国民が80%を越える高い支持率を与えつづけてきたのは、ひとえに小泉ならば、政界の黒い疑惑を一掃し、中央省庁の権益を解体して、正義が行なわれるガラスばりの…国民が納得する政治を実現してくれるであろうという期待感がその基盤であった。
 竹中経済財政政策担当大臣のめったに当たったことは無いけれど流暢な経済論、やればやるほど悪くなる塩川清十郎財務大臣の財政、実直さだけでここまできた坂口力厚生労働大臣の事後処理専門政治、今までが悪人イメージの大臣が続いたので悪いことだけはしないだろうということで任命された巨大利権省庁国土建設省のあたくし大臣、狂牛病にかかっているのではないかと思われる武部勉農水大臣、森山真弓法務大臣・遠山敦子文部科学大臣・川口順子環境大臣は3人官女みたいなものだし、2代目のひ弱さで守旧派の恫喝にぶっ飛んでしまった石原伸晃行革担当大臣、…、自衛隊の地位向上にかかる成果は評価される中谷元防衛庁長官、ええっとあとは、そうそう銀行への公的資金投入は絶対にしないといった数日後に投入した柳沢金融大臣、片山総務・平沼通産・村井公安・尾身南北大臣などはまあいいとして、何事も評論家としてのコメントしか残さない父角栄の宿敵福田赳夫の息子の官房長官などなど、この人たちは居なくても別に困らないなぁという内閣にあって、唯一、外務省改革を鮮明にして妥協せず、対外的には日本の外務大臣としては珍しく言うべきことを言って、目に見える奮闘をしてくれていたのが田中真紀子外務大臣であった。
 小泉純一郎に、何かの具体的な成果を期待して、国民は政治を預けたわけではない。経済通でもなく、外国に太いパイプがあるでなく、郵政民営化だけの政策に特徴があったわけでもない。ただ、小泉ならば政治の世界で正義を行なってくれるであろうという一点のみで、これまであまりに党利党略私利私欲にばかり走った政治を見せつけられてきた国民は、大きなうねりとなって彼を総理総裁に押し上げ、今日までの無為無策ぶりをも、苦笑しながらガマンしつづけてきたのであった。彼が、政治に正義をもたらすであろうと信じればこそ…!
 野上次官、坂田利夫…ン鈴木宗男議運委長か、その両者の首と外務大臣の首とでは、あまりに軽重の差がありすぎるけれど、3者の首をとって一件落着とするのでは、従来の馴れ合い…くさい物には蓋をの政治と何ら変わらない。問題の本質的な解決にもなっていない、NGOやODAの活動(その資金運用)に特定の議員の関与はあるのか無いのかについて、何の究明も行なわずに、真相の解明に手を触れた当事者の首をとることが、小泉政治の手法であることを示したわけである。
 もはや、国の将来を賭した構造改革を、この小泉首相の手で行なえるとは思えない。改革に際しては、繰り返して指摘してきたことであるが、全ての人々の私利私欲を排除して既得権を剥奪し、政界の再編成を為してでもやり遂げる強固な意志が必要とされる。今回の問題に見せたような、本質に手を入れず問題をあやふやにし、改革の同志の首を取って旧勢力との妥協を図ろうとする小泉純一郎に、改革のイニシアティブは取れない。
 ポスト小泉は…といきたいところだが、ちょっと先走り過ぎか。しかし、見渡しても人物がいない。今の日本、大人物が出てこの国を救う以外、再生の道が無いような気がしてきた。
 日本の政界に真の正義が行なわれるには、田中真紀子総理大臣の誕生を待たねばならないのだろうか。そうなると、髭が温かそうな野上次官は極寒の外務省カナダ大使館所属グリーンランド特別出張所の全権所長、田中真紀子の首を取ったと橋本派では功労者とされているであろう坂田利夫議員は、ODAの利権供与でアフリカが得意だから、今も激しい戦闘の続くソマリアへ常駐政府特使として単身赴任ということになるだろう。






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