【34】 食品表示の偽ラベルは 氷山の一角!       2005.02.19
  
 1月の23日に雪印食品の虚偽表示が発覚してからこのかた、日本国中がこの問題に揺れ動いた3週間であった。輸入牛肉を国産のラベルに張り替えて、国産牛肉の政府買取制度に便乗、在庫の処分を図ったというものだが、虚偽の表示をして買い取らせたから詐欺ということになったわけだ。
 米国産や豪州産の輸入肉がいつの間にか国産肉に変身…、産地を偽られたと熊本の畜産家が賠償請求を出すなど、ドタバタ劇が続く。
 しかし、事件を聞いたとき、こんなものは、外務省疑惑と同じで氷山の一角だと思った。そのあとから、佐賀のスーパーや熊本のトマトにまで偽ラベルが見つかって、一挙にお笑いネタのようになってしまった。農協ぐるみの偽ラベルというのもあったそうだから、やはり何でもありの様相である。
 牛肉の表示などはまったく当てにならないことを露呈したわけだが、従来から食品の表示については、数多くの虚偽表示が指摘報告されていた。今、巷では、大沼産コシヒカリと○○○は全くのウソ…などと公然たる噂が流れているし、先日、長野県で乗ったタクシーの運転手さんは、「その工場でポリに詰めている水が、『六甲のおいしい水』とラベルを貼って売られているんです」と笑っていたが、公然たるウソが罷り通っている世界である。
 虚偽表示については従来から指摘があって、例えば有機栽培と表示し、ごていねいに栽培した農家の名前まで書いてある大豆について、あるテレビ番組のリポーターが産地を訪ねたところ、その名前の農家は実在したのだけれど、出てきたおじさんは、「うちでは大豆は作っていません」と宣言するというオチであった。スーパーで売られている大豆の袋に書かれた名前の農家が実在しないという、全くのでたらめ表示もあると聞く。
 食品の偽表示というのは、こんな世界での出来事なのである。もとから疑ってかかるのが当たり前で、偽表示だったと言われて、「あっ、やっぱり!」という世界なのだ。
 今回の雪印食品も虚偽ラベルまでならば、「あっ、やっぱり!」なのだけれども、政府買取制度に便乗して国の金を騙し取ったというので、詐欺事件として大騒ぎになったのだろうというのが、私の認識なのである。


 ちょっと逆説的な言い方になってしまったが、偽ラベルが当たり前である状況は、世の中の仕組みが間違っていることなのである。
 管轄するのは、狂牛病で勇名を馳せた農林水産省なのか、後手後手行政の言い訳け専門である厚生労働省なのか解からないが、その行政責任をはっきりさせなければならない。
 見つかっても罰金50万円以下という法律の手ぬるさも、間の抜けたおとぼけ振りであるが、管轄責任のある監督官庁の面々は、狂牛病の国内での発生を許してしまうようなチェックの甘さがあり、発覚してからも抜本的な対抗策を講じきれなかった無能ぶりであるが、それは、偽装を見逃す軽薄な危機意識とあいまいな責任体制に起因する。この問題の再発を防止するには、やはり監督官庁の意識と責任を強化するしかあるまい。
 しかし、日本の官庁の責任意識の低さは、本当に救いがたい。今更、外務省や財務省の体質や政策を繰り返して論じるまでもないが、ここはひとつ、外部からの人材を招いて人事を構築する制度と、監督・処分権を持った監察組織を常備して、綱紀粛正と意欲喚起を図らねばならない。



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