【50】日本銀行の株買取 禁じ手の使用は、日本経済の終焉か (2003.9.30)


 9月18日のこのサイトへ、『日銀が銀行の保有株を買い取るなどという奇想天外なことを言い出した。歴史が証明する社会主義的過保護の愚策を、まだ繰り返すつもりだろうか。銀行を潰したら日本経済は破綻するという脅しは、銀行とその取り巻き政治家が言っていることで、日本の銀行は実はもう潰れている。公的資金を導入した時点で、日本の銀行経営は明確に失格の烙印が押されたのである。今は、旧態依然たる銀行を救済する策を弄するのでなく、新しい銀行の経営方法を断行せねばならないときである』と記した。
 日銀は株買取で、日本の株式市場は持ち直すとでも考えたのだろうか。あるいは、純粋に銀行救済のための施策なのか。報道によると、日銀は大手銀行から1、2年程度かけて上場株式を時価で4兆円ほど買い取るという。通貨の番人である中央銀行が、銀行から民間企業の株式を買い取るなど、通常の金融政策では考えられない。
 何が何でも銀行に手を差し伸べようという大甘の施策は、日本経済の体質改善に対して何の効果もないことは再三指摘してきたことだが、ここで日銀は企業の株主になって公の存在であることを自ら否定しようというのか。日銀の株買取が禁じ手である所以(ゆえん)である。
 市場も世界経済も、日銀の愚策を支持してはいない。日銀発表の翌々日20日、10年物長期国債入札が、価格競争入札分1兆3500億円に対し、応札額・落札額はともに1兆1852億円と、応募額が入札枠に満たない未達(札割れ)になったという、前代未聞のリアクションが生じたことを見ても明らかだろう。10年債は、流動性が高い債券の代表銘柄の一つであり、ここ数年の資産の運用難もあって人気は衰えることがなかった。そんな状況の中、未達が発生したということで、マーケットの狼狽ぶりは筆舌に尽くしがたいものがあった。金利は前日終値の1.180%から一時は1.305%まで急上昇(債券価格は下落)したのである。
 日銀の介入によって、市場は高値安定を保つだろうか。答えはノーである。これまで100兆円を超える資金を投入し銀行救済を図ってきて今日、問題は何も解決されず、株価は20年ぶりの安値である。ここで日銀が小手先の策を弄しても、株価の上昇はないだろう。
 銀行・企業の各々や関連官庁、政治の体質を変えない限り、日本経済が上昇に転じることはない。大手銀行や一部の大企業の経営陣のだらしなさのために、(勿論、政治家の癒着・無策ぶりも厳しく指弾されるだろうが、)日本全体が元気を失い、奮闘する中小企業は力尽きてバッタバッタと倒れていく。
 企業の体質を変えるとはどういうことか。現状を招いた現経営陣は、まず全て退陣することである。直接に手を下したわけではなくとも、経営陣にいて現状を容認した責任は重い。情報を公開して、癒着や談合でない正当な競争によって力をつけ、企業活動を行うことである。寝技に強くても、土俵が変われば通用しない企業では、これからの国際化時代を乗り切れまい。
 日本は、政治も経済も社会も近代化しなくてはならない時期にきている。ロマンチックに言えば、正義が行われる社会を確立することが大切であり、バタ臭い言い方をするならば、国政から地方まで一部のものが私服を肥やすという、この国の仕組みを変えなければならないということである。




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