【61】イラク攻撃を長引かさないために              
(2003.3.30)


 大空爆を加えれば、イラク国軍は戦意を喪失し、アメリカ軍は無人の野を行くがごとくバクダットに進軍して、日ならずしてフセイン政権を打倒できるというのが、アメリカや世界の軍事アナリストがこの戦争に抱いたシナリオであった。
 ナメ切った米英軍は途中の町をチョンと押さえただけで、ひたすらバクダッドを目指したのだが、戦線は延びきって途中の補給部隊を攻撃され、補給路を切断されたり、捕虜を出したりしている。アメリカ軍の補給は1日2000トン、毎日10トントラック200台が、前線とクゥエートの補給基地とを往復している。
 進軍の止まった米英軍に対して、イラクの抵抗は勢いを増している。戦いが長引けば、イラクの度重なる国際世論へのアピールも、厭戦気分とともに効果を増してくる。国民皆兵の国イラクでは市民が銃を取り、民兵として参戦するから、軍事施設へのピンポイント攻撃に限るなどと余裕を見せてきたアメリカも、一般市民の間から撃ってくるイラクのゲリラ戦法に手を焼いている。
 しかし、以前に潮 匡人氏の論文に『一般市民が武器を取り戦うなど、言語道断である。…、一民間人に過ぎない彼らが戦闘行為を行うことは、明白な国際法違反である。法的にはテロリストの自爆攻撃と変わるところがない』とあったのを思い出す。民兵とは戦争犯罪人かテロリストというわけだ。また、民兵として一般市民が銃を取り発砲するのであれば、攻撃を加えるのに国際法違反というのは当たらないのではないか。銃を持った兵士が市井に隠れることこそが、国際法違反ではないのか。
 また、イラクの市民が「住宅地を誤爆したアメリカは犯罪者だ」と叫ぶテレビ映像が繰り返して流されていたが、これは戦争なのであって、そこに住んでいるのは承知のうえなのではないのかと思うのだが。
 戦争が長引けば、米英にとっては不利である。バクダッドに対する全面攻撃を宣し、一般市民の退避を勧告して、絨毯爆撃を敢行するべきではないのか。10万人規模の増員派兵を決め、量で押し切る作戦のようだが、その兵員の全てが到着するまでに1ヶ月を要する。イラクはこれから夏になる。砂漠の温度は50℃、対毒ガスの重装備で夏のイラク戦は戦えない。いずれ、米英軍の圧倒的な勝利は疑いのないところであろうが、住民を避難させたうえでの、早期終結を目指す徹底攻撃が、結局は市民の犠牲を少なく留める最良の策ではないかと思う。





 日本は今 トップページへ