【64】 闘え 日本人! − 借りた金は 返すな −     (2003.04.28)
 

 自分たちの失策で抱えた不良債権はふくらみ、自力では更生できない銀行は、国から公的資金をジャブジャブと注いでもらっても見通しが立たず、日本再生のガンと成り下がっている。庶民から預かった金には金利をつけず、一方では貸し渋りどころか貸し剥がしを繰り返し、日本経済を支えてきた中小企業を痛めつけ、人々の息の根を止めようとしている。
 その陰で、わが国の自殺者は平成13年度で31042人。10年度から4年連続で3万人を越えた。かつて交通事故死亡者が1万人を越えたとき、交通戦争と騒がれて事故撲滅運動が大々的に展開されたが、全てが経済的苦痛の自殺ではないとしても、今、自殺者はその3倍である。倒産・借金ぐらいで、死ぬな!
 むら社会である日本では、倒産で周囲に負債を残したものは、世間に迷惑をかけたと烙印を押される。島国の国民にとって「他人の不幸は密の味」なのだ。それこそ、倒産以上に、人間としての品性に関する最も恥ずべき性根なのに…。なぜ、その人の再生に賭けないのだろうか。アメリカでは、健闘むなしく時利あらずして倒産を経験し、なお再起しようとする経営者は、豊かなキャリアをもつタフネスとして評価される。親の会社を潰した道楽息子はダメだけど!
 「借りた金を返すのは当り前」…?、果たして紋切り型の決まり文句で事態を結論してしまってよいのだろうか。
 個人が好意で貸してくれた金は、これは何としても返さなくてはいけない。でも、銀行やサラ金などの金融業者から借りた金は、商行為の産物なのである。貸す方も、そのことによって利益を生むとの見込みをもって貸すわけだ。借り手が倒産したなら、貸し手も見込みが外れたのだから、同等に責任を取るべきであろう。
 「あっても返さない」のと、「ないので返せない」のとは、同じではない。第一、預金者に金利も払わず、不良債権を生じて株主に配当もできない、約束を守らないのは銀行ではないか。しかも、その行員の給与待遇はなお群を抜いていて、経営者は2億も3億もの退職金を手にしていくのである。まだあなたは、「借りたものを返すのは当たり前」と言うのか!
 最近、サラ金各社が、さも庶民の味方のような顔をして、テレビCMを流したりしているが、その商法も金利も、かつて世間を騒がせた悪徳金貸し時代と何も変わってはいない。昔は「返せないだと、この野郎!」とテレビドラマの通りの取立てが始まったわけだが、今はサラ金規制法にひっかかるからそんな言葉遣いはしない。しかし、どこまでも付いて来る。
 サラ金、商工ローン、街金…など、べらぼうな金利を取る業者が多い。しかし、相手が銀行だろうが高利貸しだろうが、返せないから自殺するという必要は全くない。「利息制限法」で認めている金利は、10万円未満…20%、100万円未満…18%、100万円超…15%だが、貸し金業者が契約書に記載している金利は「出資法」に定める29.2%だ。2本の法律があるというのもふざけた話だが、交渉・裁判になれば利息制限法で交渉・処理すればよい。すると、4年6ヶ月ほど返済を続けていた人は、ほとんど元本がゼロになるという。それもダメなら、「返します、月1万円」と言えばよい。いざとなったら、5年間、逃げ通すことである。借金の時効は5年だ。
 多重債務者は、業者との交渉に時間を取られていては仕事にならないから、弁護士や司法書士などのプロに頼むのがよい。ところが、その辺の弁護士では通り一遍の処理しかしないし(処理法を知らない弁護士が多い)、依頼者の利益を図ってはくれない。業者は、この世界に詳しくない弁護士などナメているから、「日榮・商工ファンド弁護団」などに相談して、専門的な知識を持った弁護士に相談することである。
 事業を継続するかどうかは、「有利子負債がなければ黒字なのか」を見極わめ、それが赤字ならば、「借金は返さん」と宣言して会社をたたむことである。間違っても、それ以上の借金をしてはならないし、銀行に対して追加保証人や追加担保を差し出してはいけない。親戚や知人を連帯保証人にしたりして借金の追加を受ければ、最後の行き場を失ってホームレスである。
 経済的苦痛による自殺の原因として、日本の悪弊である連帯保証制度がある。閉鎖社会の陰湿さを象徴するこの制度は、連座制・五人組という日本の民衆統治の歴史の延長に位置し、人の世のしがらみを十重二十重に巻きつける悲惨な制度である。民主的な社会が築かれ、個人や企業の自立が(もちろん銀行など金融機関の貸し手責任も)確立されているアメリカには、こんな人質制度はない。「親の遺言、妻との結婚の条件、入信している宗教上の理由」と何でもよいから、連帯保証人は断固として断れ! 親戚・縁者を、自己担保以上の保証人にしてはならない。また、金融機関の責任において実施する金銭貸与に、人質をとる保証人制度は、法律で禁止するべきであろう。

 銀行と闘え! … 世界一おとなしい国民たちよ。その曖昧な微笑みは、大人の余裕などでなく、この国の今を貶(おとし)め、将来を危うくしていることに、そろそろ気付いたらどうなのか。
 ちょっと長いが、先日読んだ「再生(加治将一・八木宏之共著)」の前書きから、
「長引く不況、銀行はゼロ金利、株は連日の底値更新。わが祖国はギリギリの崖っぷちにかろうじて片手でぶら下がっている状態である。ここで、大胆な構造改革を断行しなければ国は持たない。ところがそれを必死で阻止しようとする輩がいる。官僚と銀行と、抵抗勢力と称する政治家どもだ。
 彼らは、改革を断行すればハードランディングで、この国はばらばらになるという。庶民はそんな覚悟は遠っくにしていて、独善的な金融機関によって中小零細企業は息の根を止められようとしている。今、改革を恐れているのは、その大波で足元をすくわれ、地位や利権をさらわれる政官財の抵抗勢力だけだ。彼らの頭にあるのは自分の保身だけで、国の将来や国民の幸せなどは微塵もない。
 ならば、国民は、自分のことは自分で守らなければならない。(以下 略)」。

 銀行だけではない。官僚・大手企業・政治家たち、権力の座に長年いたものには、利権が積み重ねられて腐敗が生じる。一部のものたちの利権に寄与する社会構造を改革し、庶民の幸せな日常生活を…正義が行われる社会を…この国の将来を…取り戻すために、日本国民よ 戦え!


 参考文献 「銀行の大罪」(高橋 求 著)  「新日本国富論」(大前研一 著)
      「 再 生 」(加治将一・八木宏之 共著)、
      「Q&A アウトソーシング活用の手引」(松崎龍一 著)



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