【78】「年金」問題は、抜本的な解決策を              (2004.1.16)


 昨年、日本の平均寿命は過去最高を更新して、女性が84.93歳、男性が78.07歳となった。イギリスの科学誌「ネイチャー」は、2050年の日本の平均寿命は90歳を越えると発表している。そのとき、20才から64才までの労働人口に対して65歳以上の年金受給者人口の比率は「5対4」となり、ほぼ1人の勤労者が1人の高齢者を養う形になる。
 昨年暮れに厚生労働省が発表した、「将来、年金の支給額は、現役給与の50%以上」という基準には、何の財源も示されては居らず、年金に国民の関心が集中している今の状況を乗り越えるための、単なる口約束に過ぎない。「百年安心の年金制度」と当時の坂口厚相が胸を張ったあのときの制度は数年で崩れ去ったことをみても、いずれ年金崩壊の危機を目の当たりにさせられた国民が、受給額を落としても破綻するよりはいいと諦めるのを待って、なし崩し的に支給率を低減させていくことだろう。
 同時に、高負担を強いることも、自明の理である。経団連の奥田氏などは、消費税15%といったあまりにも経営者サイドからの提案過ぎる主張を繰り返して、日本改革を提案しているが(ほかのさまざまな提言とともにこの主張があることも事実だが)、消費税15%は日本がこのままのかたちでいけば、そうしなければ国家が立ち行かない数字というべきだろう。消費税アップの前に断行しなければならない支出削減…政官業の構造改革、癒着利権体質の改造などと、それらの諸問題を解決しての国の活性化など、取り組まねばならない課題は多いことを、もちろん前提としなければならないが…。
 輸出に頼らなければならない日本の産業を援護するために、円高を食い止めようと、去年1年間だけでも財務省と日銀は、約21兆円に登るドル買い介入をした。1j=125円の時代からこれまでに、日本がドルを買った合計は5000億ドル…53兆円。今、1j=105円になって、7分の1が対米不良債権となっている。
 わたしはかって「5年後には破綻する、この国を再建するものは」と題して、対米追従の外交・経済を改めて日本の路線を主張していく世界ルールの構築と、それに伴う自立した国民意識の持ち方についての提言をしてきた。政治経済などでアメリカに協力することは当然としても、日本の国益を切り売りして、取引に応じることは背信行為であろう。
 関連を追及していくと、話が広がりすぎてしまうので、もう一度「年金」に戻して、税金の投入給付額の削減、支給年齢の延長、収入・財産のある高齢者への支給見直しは、避けられない現実であろう。
 その中で、現役年齢の延長を是非とも図らねばならない。人生50年の時代から比べれば、みんな確実に30年は長く生きるのだから、70歳現役の社会を構築していくべきであろう。今の70歳はずいぶん元気で、まだまだ社会の第一線で働くことができる。もちろん、職種によるが、55歳頃を境にして給与は逓減状態にしていくのは当然だろう。だから、高齢者を雇用していると給与が高くつくということにはならない。
 60歳を越えた人にもどんどん働いてもらって、65歳からの年金の支給は、働いていて収入があることを前提にして初めは小額支給とし、70歳を越えれば漸次増額すばよい。働く必要も意欲もないという人は無理に働く必要はなく、自らの蓄えで悠々たる人生を送ってもらえばよい。今でも、若い人で働かずに暮らしている人は居る。
 現役年齢を延長すると、ただでさえ働く場のない若い人の職場を奪うという指摘があるかもしれない。しかし、そこは需要と供給の関係で、高齢者よりも若い人のほうが良いという職場は若い人を採るだろうし、腰の座らない若者よりも仕事を任せられる人のほうが良いという会社は高齢者を採るだろう。高齢の人に職場を取られると嘆く若者のほうが間違っているのだ。
 そして、80歳を越えれば、ひととおりの暮らしの費用は国がみるというのはどうだろう。年に何回かの旅行に行く人は行ってもらえば良いし、ゴルフも釣りも結構である。この費用は、それほどの金額を必要としない。むしろ、そうなれば老後に金を残す必要がなくなり、内需の拡大には確実に繋がるだろう。


 政府、厚生労働省は、小手先の方策ではなく(年金問題だけでなく、行政全般について言えることであるが)、ありのままの正確な数字を示して、国民の覚悟を促し、判断を仰ぐべきである。国の歳入の半分が借金である状態にあって、根拠も示しえないのに希望的な観測を揚げ続けていくのは、責任ある政治のなすべきことではない。



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