【104】 78分間の歌合戦  −新企画もずっこけた−        2006.01.08


 やっと「歌合戦」を観た。12月31日、テレビをじっくり見て年を越すほど優雅でないので、ビデオに録っておいたものだが、今日までそのままにしていた。
 かつては視聴率80%といわれた、大晦日の恒例行事も、レジャーの多様化や歌謡曲の世代間格差が開いて、家族みんなを4時間、テレビの前に座らせる力はもうない。あまりの視聴率の低落振りに、NHKは全局の知恵を絞って新機軸を打ち出しての今年であった。それがみのもんた山本コウジ仲間友紀恵の起用であったのだが、みのもんたの独断専行で番組をリードするには巨大なイベント過ぎたし、山本・仲間の司会は原稿を読むお粗末振り…、とても臨場感・躍動感あふれる進行など望むべくもない展開であった。


 さて、のビデオを再生… オープニングは早送り、白組トップは細川たかしで早送り。赤組の川中みゆきは1コーラスだけ聞いて、あと早送り…。この差は、僕の個人的な嗜好の問題だ。
 … 水森かおり「五能線」は、最近、僕がカラオケでよくうたう歌。じっくりとフルコーラスを見るも、端折(はしょ)られていた。 次の坂本冬美は1小節で早送り…。 水森かおりと坂本冬美の間にも、誰か出ていただろうって、みんな早送り。ここに名前の出てこない人は、全て早送り。
 … 松浦あやや〜モーニング娘 遅いほうの早送り。歌は聞きたくないけれど、仕草をチェック。


 応援に登場したお笑いタレントたちのシラケぶりはどうだ。何をしてもケラケラ笑う、芸を見る目も乏しい若い子達を、テレビ局のスタジオに集めた前で、浮かれた芸を繰り返しているからだろうが、このレベルの低さには唖然とさせられた。ホントに、大阪のにいちゃんねえちゃんの立ち話のほうがよほど面白い(故横山やすしがダウンタウンを評した言葉)というのは、真実を突いている。今のお笑いブームは、繰り返し流されるテレビ画面が作り出したブームでしかない。


 … 長山洋子の今風メイクにはちょっと無理があったなと思いつつ、2小節で早送り。藤あや子美川憲一などなど、フルスピード早送り。
 前川清が石原裕次郎の「夜霧よ今夜もありがとう」を歌っていた。これも紅白の品位を貶める、くだらない企画だ。裕次郎の味わいが出せるわけもなく、前川清にヒット曲がないことを示しているだけ。同じく、トリに、天童よしみが美空ひばりの「川の流れのように」を歌っていたが、フィルムコンサートを企画して2人を偲んだほうが、よほど感銘を与えただろう。
 鳥羽一郎・山川 豊の兄弟コンビもよかった、1コーラスで早送り。香西かおり「無言坂」は僕の好きな歌だからフルコーラスを聞いたが、香西かおりは声が出ていない。
 吉永小百合が出てきて、いきなり反戦詩を読み始めたのには面食らった。続いて歌った、さだまさしの「広島の空」の前哨だったわけだが、そうとは知らないままに、吉永小百合が「父を返せせ、夫を返せ」と言い始めたものだから、ずいぶん唐突な感じがして、彼女の左翼的嗜好がまたぞろ顔を出したのかと懸念した。NHKもしっかり企画を練らないと、吉永小百合をさらし者にしたのでは、世のサユリストから受信料不払いを宣告されることだろう。さだまさしの歌には、なぜか聞き入ってしまった。


 後半オープニング。好き歌No1だというSMAPの「世界にひとつだけの花」の歌詞に驚いた。『花は1番を争わず、only oneを誇っている。』とか『人間はどうしてそんなに比べたがるの?』など、無気力日本を象徴するような歌をうたっている。これが「好き歌No1」なんて、中国公安局から大量投票があったのではないのか。『その花を咲かせることだけに、一生懸命になればいい』と歌う歌手が、韓国KGBの手先に見えてきた。この日本、民主党には悪いけれど、もう諦めるしかないか!
 幸田来未はいい。プロポーション、踊り…何をとってもいいが、歌声もはっきりしていて、訴えかけてくる迫力がある。高性能マイクに頼って、囁くようにしか歌えない歌手が多い中で、抜群のパンチ力を持っている。巻き戻して2回見てしまった。山口百恵になれるだろうか…、もう少し、日本を諦めないで見ていようか。
 浜崎あゆみ氷川きよし…フルスピードパス。ゴリエ…見たことなかったので、テープ再生。これは歌でなく、エアロビクスの発表会。
 小林幸子、さすがの大舞台である。虫歯のキャンペーンかと思ったバックの絵だったけれど、大掛かりな小学生の学芸会のような野暮ったさに、ますます拍車がかかっていて素晴らしい。一青 窈はぶきみ。石川さゆりは夜叉面の怖さ、森進一はあわれ。
 夏川りみ「涙そうそう」はフルコーラス聞いた。宮里 藍もそうだが、沖縄の子らしい、つやつやしたおばちゃん顔をしている。もう30年もすれば、2人とも日本を背負う、りっぱなおばちゃんになることだろう。
 松任谷由美が、香港から映像参加…。彼女は声の特異さだけが魅力であったが、もうその声も出ない。それに引き替え、競演していた中国の若手歌手の清らかな歌声、優しさ溢れる歌唱の上手さはどうだ。日本の若手のような、何を言っているのか分らないようなテクニックではなく、相手の心に響く力強い優しさなのである。来年からはアジア各地から、各国の歌手に参加してもらう企画はどうだろう。
 Dreams come true 出だしの2小節で早送り、五木ひろしも存在感なし。和田アキ子、白組からの出場に、やっぱり男かというギャグは陳腐だが、なんて歌をうたってるんだ。この辺すべてフルスピード早送り。
 北島三郎はさすが。歌にも舞台にもひきつけられた。「風雪流れ旅」を熱唱する背景は、おびただしい紙ふぶき…。あの大きな鼻の穴に吸い込まれていくのではないかと、手に汗握るスリルであった。
 

 かくして、78分間で2005年のは終わった。感想は、「こりゃぁ、誰も見ないわなぁ」というのが結論。僕たちの世代にはチンピラの怒鳴りあいのような歌は無理だし、若い子に天童よしみの魅力を説いても、「あの雪だるまみたいな人…」というぐらいで、歌唱を理解してはもらえまい。
 来年からは、2部か3部構成にすることだ。お年寄りから子どもまでがコタツに入って見る番組だから、世代分割の構成はタブーなのかもしれないが、もはや一家が揃ってひとつところで年を越すことはない。仮にみんなが集まってきたとしても、このを見ろというのは無理な話である。
 時間ももっと延長していいだろう。出場者ももっとたくさん登場させて、今年活躍した歌手、みんなが名前を知っている人を揃えることだ。… 6時〜8時までポップス、〜9時半ニューミュージック、〜11時45分は演歌といった構成にすれば、誰もが安心して見ることができる。それぞれの中へ、あっと驚く企画・演出をしていけば、歌合戦…という大晦日の年中行事は、大復活を遂げることだろう。



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