【111】 北朝鮮 ミサイル7連発                   2006.07.15
      ― 日本再軍備に 恵みのミサイル ―


 北朝鮮が7月5日、長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を含む計7発のミサイルを発射した。7発は、ロシア沖の日本海に着弾した。


 技術的に検証をしてみると、この着弾地点、ロシア沿海州沖ピョートル大帝湾の付近は、北朝鮮がミサイル実験を行う上で近隣諸国との問題という点からはもっともトラブルが少ないと予想される場所で、そこに実に的確に撃たれている。もちろんロシアには事前通告をしていただろう。
 スカッド、ノドン、テポドンと射程の異なる3種類のミサイルを7発も次々に発射したことで、実験データの収集、またミサイル輸出のためのセールスポイントも途上国などの潜在的な購買層に十分アピールするだけの結果を出したといえる。7発の連射は、ミサイルの一斉射撃も可能であることを見せつけて、日米の防衛システムに対する牽制の意味も込められていた。
 政治的にも、イラク問題・イランの核・イスラエル問題など厄介な課題を抱えるアメリカに、北朝鮮問題に妥協を求めたタイミングだったといえる。事実、アメリカはクリストファー・ヒル国務次官補が急遽中国入りして、打開策を模索している。


 このように7発連射の北朝鮮の意図は、いちおう所定の目的を達したかの感もあるのだが、反面、今回の事件は日米の対北朝鮮強硬派の勢いを増長し、日米同盟を強化させる方向へと流れを加速させてもいる。
 北朝鮮が日本へミサイルを撃ち込むことの必要や利点はないし、その可能性もない。だから、北朝鮮のテポドンは夏の夜を彩る花火のようなもので、華やかながら実害はない。
 むしろ、日米は持っている全ての情報収集能力を発揮して情報を入手、スカッド、ノドン、テポドンすべてのデータの蓄積をすることができた。アメリカでは国防総省が進める、北朝鮮やイランの弾道ミサイルからNATO諸国を守るためのミサイル防衛システム配備や、ポーランドとチェコに新たに迎撃ミサイルシステムを導入するという年間100億ドルのプロジェクトにゴーサインが出ることだろう。
 日本国内でも、日米同盟強化や自衛隊強化論が強くなり、憲法改正への世論に拍車がかかると思われる。北朝鮮は戦略的判断に基づいて今回のミサイル発射に踏み切ったのだろうが、結果として日米同盟強化や自衛隊強化を求める勢力に願ってもないプレゼントを与える形となった。北朝鮮が失った最大の財産は、戦後日本の60年間に脈々と築かれてきた中韓への贖罪論を崩壊させつつあることだ。日本の軍備構築にとっては、まさに「恵みのミサイル」だったといえるだろう。
 日本は、北朝鮮のテポドンの後押しを得て、これから憲法改正・軍備の整備へと向かうことになる。いわゆる右傾化などといった軽い言葉で形容できる変革でなく、近代民主主義国家のあるべき姿としてのシビリアンコントロールを機能させた、周辺のアジアの国々にも支持・信頼され、かつ、最新の軍事防衛力を持つ国家に成長しなくてはならない。安倍新政権の第一番目の課題となった。


 蛇足ながら、この政治的変革期にあって、テポドン騒動の最中に中国を訪問して、胡錦涛国家主席に面会してもらって喜んでいる、小沢一郎民主党代表に危うさを感じる。山崎拓、加藤紘一、二階俊博など、日本の方向を危うくする媚中派と呼ばれる政治家たちのしどろもどろ振りは、中国にどんな尻尾を掴まれているのかと勘ぐってしまうが、今後、交流協議機関を開設するなどのはしゃぎぶりには、対中外交を政治のカードにする危うさを知らないはずはない小沢一郎にして中華の威光に呑まれたか…、あるいはボケたか。目の前のニンジンにかぶりつくのではなく、地に足をつけた政権構想を提示しなければ、政権交代は絵に描いた餅に帰してしまう。



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