【141】 自民党総裁選  − 自民党政権幕引き内閣への戦い −   2007.09.20


 安倍首相の突然の辞任を受けて、自民党総裁選出レースが追い込みの様相です。麻生太郎、福田康夫のマッチレースですが、自民党の国会議員はナダレを打って福田支持に回り、追い込みとは言うものの事実上は福田総裁誕生が決定的です。


 麻生太郎は、安倍首相の辞任を前に相談されていたとバラして、一挙にワルモノになってしまいました。「何で止めなかった。無責任辞任の首相と同罪だ」と総スカンを食って、流れは一挙に福田康夫へ…。総裁選告示の2日前まではポスト安倍の大本命だったのですが、まさに一寸先は闇…ですね(苦笑)。
 麻生太郎は、頭に浮かんだことをそのまま口に出していますね。漫画思考の男だからそれも仕方ないけれど、頭から一度腹に落として、それから口にするといいのに…。でも、それでは彼の持ち味が出ないかも知れません。
 総裁選を意識して出版したのであろう彼の著書『とてつもない日本』にしても、日本の現状について、論拠の浅い、国民にとって耳障りの良い言葉を羅列しているだけで、分析力や説得力に乏しいものとなっています。日本は今どうすることが必要で、自分はこの日本をどうしていきたいのかといった覚悟が見えてこない著作で、本のページ数の少なさが物語るように、日本を預けるのは今ひとつ厚みが足らないといったところです。


 福田康夫は古い自民党そのもの…。自民党政権の幕引き内閣としては、まさにうってつけの役どころでしょうか(苦笑)。
 政策も何も発表しないままに派閥単位で議員のほとんどが福田支持を表明…、これで幹事長に旧体制の象徴のような古賀 誠なんてことになったら、小泉・森・小渕・橋本・村山・羽田・細川・宮沢・海部・宇野…とさかのぼって、竹下内閣のころ様相です。省庁の権益や個々の議員の既得権は守られるという図式でしょう。
 しょせん自民党は、江戸時代の封建幕藩体制の政党なのですね。みんなで集まって相談し、少々後ろめたいことも「みんなで渡れば怖くない」という談合体質が 安心の条件なのでしょう。だから、テレビカメラに向かうと、ひとりひとりは「領収書は1円から」なんて言っているのに、党の総務会での討議になると「5万円からだろう。政治なんだから」などと、民意から乖離した決議を堂々とできるのです。個人の意見が確立していない、談合集合体なのですね。
 

 この総裁選を、解散総選挙…の視点から見てみますと、今年末にはないと思いますが…、来年春か…秋か…、福田総裁の下で 衆議院選が行われることは確実です。
 特に小泉チルドレンの面々には、自民党の公認が取れるかどうかが死活問題です。だから、テレビカメラの前で小泉決起の要請文を読んでいた片山さつきが、翌日には福田康夫の後ろに並んでいて「ガンバロー」と出陣式の拳を突き上げている(大笑)。
 熱烈な福田支持をアピールして、自民党公認を勝ち取ろうという、彼女たちの戦いでもあるのですね。
 その点、小泉決起で小泉チルドレン30数名を集めたのに一転福田支持を固めた、育ての親の武部元幹事長に弓を引き、「アンタには もうついてけやんわ」と集会場で席を立って、北海道へ向かったという杉村太蔵くん(北海道は彼の郷里で 次回は 北海道の小選挙区から出たいと思っているらしい。武部も北海道…ですね。)のほうが、生き方としては潔い。
 比例代表も自民党は前回ほどの票は取れるわけがないから、太蔵君の生き残る道はもともとないのだろうけれど、潔さ=長生きの秘訣とはいかないところが、人生の難しさですね。


 ただ、福田政権に期待するものは何もないことも事実です。

 
 挙党体制…すなわち自民党議員全体の協力体制をつくるのでしょうから、各議員やグループの権益を補償していくということになり、族議員は復活して、公務員改革は大きく後退することになります。小泉改革により、利益誘導型の政治を改めようという考え方が芽生えてきたように思いますが、福田政権下では議員の既得権はしっかりと保護され、例えば国家公務員共済年金の見直し=年金一元化など話題にも上らなくなることでしょう。

 また、アジア重視の美名のもと、中国・韓国におもねる外交が展開され、保障としての巨額ODAが復活して継続的に支払われていくことになるでしょう。私は【138 安倍政権の役割】で、『日本の戦後を総括して、日本の歴史を取り戻し、民族の誇りを再確認し、教育や文化や日本の形を再構築することは、極めて大切である。日本のこの部分が確立しなければ、対外援助は賠償になり、技術協力は贖罪のための奉仕になる』と書きました。福田政権下において、対中韓外交は確実に謝罪外交が展開されます。ご存知の…媚中派・親韓派議員の復活です。対外援助の何%が、彼らのフトコロに還元されるのでしょうか。
 福田康夫は、官房長官時代に拉致被害者に冷たかったという批判を払拭するためにか、「拉致問題は私の手で解決する」と謳い上げていますが、再開するであろう対北朝鮮人道支援を何百億円か支払わされるだけで、彼の手で奪い返すことのできる被害者は一人も居ないでしょう。
 拉致問題は、残念ながら、北朝鮮の指導者か国家体制が変わらないことには、一歩も前には進まない問題です。今の北朝鮮には、もはや拉致問題は存在しないのです。
 北朝鮮は「テロ指定国家の解除、経済援助…」などを条件に核放棄を宣言し、もはや旧式となっていて稼動しているのかどうかも疑わしい寧辺(ニョンビョン)の核施設へのIAEAの査察を受けることに同意していますが、現在の核開発の拠点は他所に移していて、外交の切り札たる核を放棄することは永久にありえないでしょう。何らかの結論がほしいアメリカはそれでも妥協しようとしていますし、日本は蚊帳の外です。

 福田康夫に、大東亜戦争の歴史を見直そうという意識はないでしょう。靖国へは行かず、戦没者慰霊施設を新しく造ればよいと主張しているのですから、日本の戦争犯罪という問題に正面から取り組もうという意欲はなく、方法・手段で切り抜けようとしています。
 国の指導者に、国のために戦い死んだ人たちの名誉を回復しようとする気概がなければ、私たちの父や祖父は永遠に犯罪者であり、またはその片棒を担いだものたちとなります。日本の歴史を糺さないかぎり、子どもたちに反省と謝罪を教えなければならず、今日の日本の繁栄はアジアの人々の犠牲上に築かれたものであるという罪過を背負っていかねばなりません。
 東京裁判で裁かれた日本の罪科が、国際法に鑑みて犯罪であったはずがないという、各界で認められている戦後の数多(あまた)の検証を、時の内閣は世界へ発信していく責務があります。
 誇りのないところに、意欲も気概も生まれません。戦後日本の奇跡的な復興は、戦前の日本が育んだ人々によって成し遂げられてきましたが、戦後の日本で育った若者たちは、どこかひ弱で…独善的で…排他的です。その反面、実社会で耐える力に乏しく、粘り強く物事を解決していく力に欠けています。これは、日本が誇るべき歴史を否定し、犯罪国家として自らを卑下しなければならない国のあり方に大きなかかわりがあると思うのは、私だけでしょうか。


 もはや この自民党に期待するものは、何もありません。心置きなく政権交代を目指すことができるようです。


 なんだか「福田政権誕生」のコメントのようになってしまいましたが、安定…を求めて、福田を選出…。その福田が、ママならない国会運営に、持病のカンシャクを起こして、解散…、総選挙…、政権交代…という運びでしょうね。


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