【148】 ガソリン値下げを巡る攻防  − ガンバレ 民主党 −    2008.02.03


 3月末に期限切れとなる揮発油(ガソリン)税の暫定税率の存廃問題で、継続を図る与党と廃止を主張する野党が激突して国会審議は空転…。与野党は30日午後、「年度内に一定の結論を得るものとする」との河野洋平衆院議長と江田五月参院議長の斡旋を受け入れることで合意した。
 与党は、両院議長が30日午後、国会内で与野党6党の幹事長・書記局長に示したあっせん案の「総予算及び歳入法案の審査に当たっては徹底した審議を行ったうえで、年度内に一定の結論を得るものとする」という裁定内容について、河野議長が口頭で「従来の審査の慣例に従う趣旨」と説明。与党はこの発言で租税特措法改正案の年度内採決は約束されたと判断、あっせんを受け入れた。年度内に参院で採決されれば、仮に否決でも衆院で3分の2の多数で再可決し暫定税率は維持できるためだ。
 これに対して、民主党の鳩山幹事長は「まだ、ガソリンの値下げが行われないということではない」と説明しているが、野党各党の足並みは、社民党が「環境税に変える」などと主張して、微妙にずれている。
 各党によって議長斡旋の解釈はまちまちで、「一定の結論」のつけ方は不透明である。


 そもそも「つなぎ法案」は、揮発油等暫定税率延長法案が参議院での可決成立が行われないことを前提として提出されたもので、参議院の存在を無視した邪道・奇策である。こんなことがまかり通るのならば、全ての法案は衆議院の3分の2による再議決を前提とすればよいのであって、参議院は要らない。
 この「つなぎ法案」の撤回と国会審議の年度内決着(どのような決着かは別にして)を天秤にかけて、民主党などが議長斡旋を呑んだのは、政府・与党の策にはまったと言わねばならない。民主党は法案を取り下げさせたと胸を張るが、「つなぎ法案」はもともとなかったものである。民主党が国会審議を進める材料は「揮発油等暫定税率延長法案」の廃止・修正であって、これを前提として「年度内決着を図る」とするべきだろう。


 日本経済が閉塞状態にあえぎ、日用品の値上げラッシュに音をあげている国民生活を顧みれば、ここでのガソリン価格の引き下げは、喫緊の政治課題である。地方は四苦八苦、中小企業の倒産件数は相変わらず多く、歴然とした格差社会が顕在化してきていて、庶民の生活は疲弊しているのだ。
 長年の間、政権の座に胡坐(あぐら)をかいてきた政府・自民党には、ここでガソリン価格を引き下げるといった政治センスはもはやない。半世紀以上も政権を保ち続け、国費をほしいままに垂れ流してきた面々の耳には、全国民の4分の3が暫定税率の廃止を求めているのに、その声は届かず、それを聞こうとする姿勢さえ失われている。
 政府・与党が、国民の圧倒的な反対を押し切ってまで、暫定法案を10年延長などという暴挙に出て、死守しようというのは、道路利権に関係する族議員・国交省・地方自治体・建設業界の強い要請以外の何ものでもない。自民党道路部会で建設への絵を描き、国交省は建設発注の権限と予算を握り、地方はそのおこぼれに預かり、業界へは多額の工事費が落とされて、その何割かが政界にキックバックされていくといういつもの仕組みだ。その利権集団に、総裁選で借りがあり、手足を操られている福田首相は、暫定税率延長へ恥も外聞もなく邁進しなければならないという図式である。
 しかし、道路特定財源を一般会計へ組み入れていくことは、小泉・安倍内閣ですでに決定していたことではないか。今さら、道路建設だけに使うと縛りをかけるなど、時代を逆行させる愚行だと非難されてしかるべきであろう。


 社保庁の例を挙げるまでもなく、公費・税金・国費の動くところ利権が絡む。自民党長期政権の澱みに溜まったヘドロなのだろうが、今回問題になっている道路特定財源にも、目的外に流用したり、職員の福利厚生に名を借りた私的ともいえる散財が行われている。この無駄遣いについては、ここで説明するより、年金問題追求で知られる天木直人氏のブログのこのページに綴られているので、参照いただきたい。
 それを見ると、金の動くところ必ず利権がついて回っていること、官僚たちの巧妙なこと、全省庁で同じことが行われていることが判るというもの…。よくぞこれだけ、悪知恵が回るものだ。しかも、罰則が極めてあいまい。これでは、悪いことをするなと言うほうが無理というものか。官僚の乱れを糺すものは、政治の姿勢である。政治が襟を正すことを、強く求めたい。


 世論調査の結果、全国民の73%…4分の3が望んでいることを見ても、民主党は『ガソリン値下げ』のスローガンを、断固掲げて国民の先頭に立つことである。
 「目先の利益誘導と取られかねない」とか、「国会運営は民主党にも責任がある」などと、せっかく正面突破の好材料を持ちながら、自分のほうから無用の物分りのよさを発揮して躊躇・後退していては、国民の支持を雲散霧消させてしまう。
 全国の自治体の長(知事・市長村長)が暫定税率廃止には反対と口を揃えるのは当然で、ここで賛成と言えば、国からの交付金は削減、あるいは停止されてしまうし、地元へも道路利権を誘導できないから、口が裂けても反対とは言えないわけだ。しかし、自治体の長としては、ひも付きでない一般から、「何に使ってもよろしい」と交付金を受け取るのが一番ありがたいのではないか。それが、地方自治というものである。


 民主党に提言したい。@現在、建設予定に登っている全国の道路を、必要度に応じて「建設」・「予定」・「暫定」の3段階に分け、 Aそれぞれを建設したときの試算を行い、 Bそのための金額を提示すべきである。民主党が発表した「道路特定財源の改革ビジョン」に、明確な数字をつけて欲しいと思う。
 そして、C政府・省庁のムダを具体的に示し、それによって削減できる金額を計算して提示することである。1月28日の委員会質疑で、細野豪志衆院議員は特別会計の積立などの余剰金(いわゆる霞ヶ関埋蔵金)は96兆円に上ると福田首相に迫り、政府は「余剰金を返納させる」ことを検討すると発表した。消費税の1%が2,5兆円だから、その40年分である。
 現在の国政には不正やムダが無数にあることを、しっかりと国民にアピールすべきである。例えば、今回 政府が見直しを決めた独立法人の内部保留も、毎年余ったお金を国に返さずに、自分たちの金庫に溜め込んできたもの。また、国土交通省の随意契約は99,9%の金額で成立しているというから、納入業者の利益は莫大で、当然その裏側では内部保留・還流・汚職…が行われている。
 国交省だけでなく、日本の官庁は地方も含めてどこでもこの体質だから、民主党政権が実現したらこれを根本的に改革すると宣言し、政治から利権とムダを排除すれば、消費税を上げず、赤字国債の発行をしなくても歳費はまかなえると宣言するべきであろう。


 今回の暫定税率の継続に賛成する人は、『財源不足に陥る』という政府の脅しを真に受けているのだろう。この国は、政府・与党と中央官庁が組んで、平気で国民を騙す国だということに、まだ気がつかないのだろうか。私が以前に書いた「消費税10%は国民を欺く大増税」をもう一度読んで欲しい。
 ガソリン価格を下げて2,5兆円が入ってこないとなると、政府は大騒ぎして、地方への交付金をストップする暴挙に出るかもしれない。しかし、その2,5兆円が景気後退の税収減で生じたものであれば、当然その手当てを講じることだろう。2,5兆円の手当てなど、国費にしてみればいかようにでもなる金額である。得意の打ち出の小槌を振って、赤字国債をちょっぴり上乗せするか、特別会計から抜き出してくるか。この政府・与党では、節約で捻出することは毛頭考えないだろうから…。


 今から考えれば、民主党の取るべき道はただひとつ…、「つなぎ法案」を自民党に衆議院3分の2で再議決させ、そして、暫定税率10年延長も再議決させるべきであった。その間に、道路特定財源(をはじめとする税金・国費)がいかに無駄遣いされてきているかを丁寧に白日の下にさらしていけば、国民の怒りは爆発…。そこへ、数字を入れた説得力のある民主党案を提示すれば、流れは一挙に民主党へであった。
 それを、議長斡旋などという自民党の筋書きに乗せられて「和解」してしまったのは、一種の国民への裏切り…。
 これで、ガソリン代は下がらず、暫定税率10年延長が確定してしまったら、民主党に対する信頼は一挙に幻影であったことが露呈してしまう。やっぱりこんな連中には、政権は任せられないと…。
 これからは、なぜそうしなければならないかという理由を国民に詳しく説明しながら、参議院での審議を引き伸ばし、暫定税率10年延長を衆議院で再決議させることだ。
 国民は、「和解」に応じてガソリンの値下げを実現できなかったとしたら、その民主党を『国民への裏切り者』と断じるだろうが、暫定税率の矛盾を指摘して参議院決議を断固拒否し、期限切れに追い込む民主党を、『国会審議(議長調停)への裏切り者』とは決して呼ばない。


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