【156】 大分の教員採用汚職の教訓        2008.07.18
 

 大分の教員採用汚職が、あまりに大きなニュースになっていることに驚いています。


 こんなことで大騒ぎするなといった意味でなく、もちろん正直者が馬鹿を見るなんて世の中を許してはいけませんが、今まで教員や公務員の採用には口利きが行われていることは当り前…だったからです。
 議員枠なんていう定員枠もありましたね。だから、長年の間、教育現場でその現実を見聞きしてきた人たちは、自分の子弟や知人が採用試験を受けようとしているとき、自分のコネを存分に使って合格を働きかけたわけです。現金や商品券の授受という行為はいかにもまずかったのですが、少なくとも贈る側には後ろめたさはなかったことでしょう。今まで繰り返されてきた行為ですし、そうしなければ不利益をこうむることも知っていました。今回逮捕された当事者たちは、運が悪かったんだと思っていることでしょう。


 繰り返しますが、だから贈収賄した人たちは悪くないとか、コネを使うのは当然とか言っているわけではありません。一つ一つの事例に大騒ぎしていても意味はなく、構造的な仕組みを根本的に変えないことには、問題の解決にはならないということを指摘したいと思うのです。


 長年、教育界で生きてきたものが強いコネを得て子弟の合格を図ったことと、長年、中央官庁で生きてきたものがその地位・権力と強い先輩後輩の絆で特権的な天下りを繰り返していくことと、根は同じでしょう。むしろ天下りのほうが強権的ですし、国費を食いつぶす金額が膨大ですから、程度は悪いというべきでしょうね。

 日本の社会に巣食う、利権・癒着の構造の変革に真剣に立ち向かわないことには、大分の教員採用汚職といった不祥事は繰り返され、その都度、マスコミや人々はヤリ玉に挙げられた小悪党をヒステリックに糾弾することになります。
 その結果、末端のいつもは善良なのに魔がさしたとしか言いようのない犯罪者をひっ捕らえ、トカゲの尻尾を切り捨てて、ガス抜き沈静化が図られ、腐敗の構造は手付かずのままに残るのです。巨悪は今夜も枕を高くしてぐっすりお休み…ですね。


 どうすればよいのでしょうか。僕は民主党の回し者というわけではありませんが、今は「政権交代」がその処方箋の筆頭でしょう。自民党長期政権によって日本社会の隅々に溜まった澱(おり…底にたまった残りかす)=政権に結びついた利権・官公庁の横暴・政官財の癒着…などを掃除するには、監督政党が替わる政権交代が必要です。

 そしてもうひとつ、政党にばかり任せておかないで、国民一人ひとりが考え・発言し・行動することが望まれます。そのためには、志を同じくする人を見出して手を取り合い、発言の場を探して意見を言い、行動に参加することが、何よりも求められます。



 と、書いて公開したところ、早速にメールを貰いました。

 『 僕の周辺でも 県や市町村の職員の試験に不合格だった人が 臨時職員で採用され、いつの間にか正規職員になっているってこと、よくあります。

 親戚の子は保育士になるのに市会議員に頼んでいました。後ろめたいこともなんともなく、「頼むの当たり前やん」みたいな感覚でしたね。そのせいかどうかは判りませんが、見事採用になって、今は保育所に勤めています。

 おじさんは、「うちの娘が採用されんかったら、お前の次の当選はないぞ」と市会議員を脅していましたから、これのほうが犯罪ではないでしょうか。恐喝罪とか禁止! 』と。


 日本社会の慣習と言ってしまってはいけないのでしょうが、こうした事例は周辺に多いのではないでしょうか。頼めば合格できるのならば、頼まない手はない。人間の業や弱さを考えれば、個人の正義感に委ねて解決できる問題ではない。やはり不正や不公平を許す社会のシステム・構造を正していくことが肝要なのでしょう。
 

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