【158】 福田改造内閣スタート −改造内閣支持率の怪−    2008.08.02


 福田改造内閣がスタートした。閣僚17人中13人が交代した大幅改造である。景気減速や物価高騰を受け、経済政策を重視した改造であろうことは、経済関係閣僚に財務相…伊吹文明自民党幹事長、経済産業相…二階俊博党総務会長、経済財政担当相…与謝野馨前官房長官といった顔ぶれを揃えたことからも推察されるが、新資本主義下で構造改革にもがく日本の新機軸を打ち出すことが出来るか…、国民の側からは旧態依然とした顔ぶれ過ぎて期待が持てない。
 例えば、二階新経産相は人も知る媚中派代議士、前回の経産相(第3次小泉改造内閣)在任中には、東シナ海の春曉ガス田の開発問題で中国側に対して一言の発言もせずに手も足も出なかった。それどころか、麻生外務大臣(当時)が中国によるガス田開発強行に断固対応するという姿勢を示すと、「この日本の対応にこそ問題がある」、「強硬に対応するなら勝手にやればいい」と述べる始末…。
 新幹線の中国への輸出に関しては、「日本は、中国から文化を教わり、その延長線上に今日の日本の繁栄がある。その中から、たまたま新幹線の技術を開発した。(…中略…)この技術が中国の発展にもしお役にたつならば、どうぞひとつお使いください。積極的に協力します」と発言している。
 WTO総会決裂など、中国を初め台頭する国々との交渉が重要課題となっている今日、二階経産相でこの難局が乗り切れるのだろうか。まず、無理だろう。
 さらに替えるべきは、渡辺改革担当相に立ちふさがり、霞ヶ関官僚の擁護代弁者であると目され、内閣支持率を大きく下げる方向へと貢献した町村官房長官であったろうと思うのだが…、伊吹財務相、二階新経産相、谷垣禎一国交相、さらに古賀誠選対委員長、そして熱心な消費税立アップ論者の与謝野馨経済財政担当相が加われば、改革逆行派・増税派の揃い踏みと受け止められても仕方ないところだ。


 世論は麻生幹事長誕生を好感している。確かに、低迷する経済や打開策を提示できない政治など、閉塞感が蔓延する中で、彼の明るそうなキャラクターはひとつの救いなのかもしれない。ただ、彼の著書「とてつもない日本」を読んでも、日本の可能性をひたすら信じる姿勢は貫かれていて、だから日本は大丈夫なのだとは書かれているが、自らの政治理念を読み取ることが出来ない。だから日本をどのような方法でどうしようとしているか…が見えない。
 漫画で知識を得たと言っているけれど、それこそ大丈夫か? 先日、僕も喫茶店で、横山光輝著の漫画「三国志」を見たのだが、氏が20年の歳月を費やしたというだけあって、筋書きも流れもしっかりと描かれていると思った。しかし、家に帰ってから宮城谷昌光の小説で同じ箇所を読み返してみたら、格調高い万言を労し、登場する人物の考えや心情などについて語られていて、奥深く入り込むことが出来たように思った。麻生太郎の危うさは、対人間についての対応は非凡なもを持っているけれども、内面のない政治思索なのではないか。


 さて、注目の行政改革担当相は茂木敏充…と続けたいところだが、今日の目的は福田改造内閣についてのコメントではない。新聞各紙の内閣支持率についてである。


 本日付で各紙が発表した福田改造内閣の支持率は、下の表の通りだ。


紙 名   支 持 率   前回支持率 不支持率  前回不支持率 備   考    
                                                  
朝日新聞 24% 24% 55% 58% 変わらなかった
毎日JP 25% 22% (データなし) (データなし) 3ポイントの微増
サンケイ 31% 26% (データなし) (データなし) やや回復
東京新聞 31% 26% 48% 53% 4.7ポイント上昇した
読売新聞 41% (データなし) 47% (データなし) 評価は好転した


 各紙とも、今回の内閣改造は、低迷を続けてきた支持率の大幅アップにはつながらなかったとする結果が示されているのだが、気になるのは、ひとり読売だけが他の4紙と大きく異なる数字を掲げ、支持率41%を掲載している点である。
 もともと調査の方法などによって、ある程度ばらつきが見られることはあったけれども、読売は支持率が他の4紙から10%以上もかけ離れ、支持・不支持率が接近している数字を掲げるというのは、意図的な数字であると勘ぐられても仕方がないのではないか。あるいは、調査方法に問題があったのか、いずれにせよ支持率をかさ上げして、新発足する改造内閣へのエールとしたい思惑があるのだろうが、自らの意図のままに数字を操っては、読売新聞の紙面に対する信頼性が揺らいでしまう。
 渡辺恒雄が主幹兼社主を努めている限り、仕方のないことなのかもしれないが、ひとり読売の社内事情としてせいぜい新聞の売れ行きとジャイアンツの人気が低迷するぐらいのことならば目をつぷっていてもいいのだが、日本の世論を操作しかねない意図が垣間見えるようなことになれば、放置しておくわけにはいかない。
 読売内部では彼自身は裸の王様であるとしても、その進退に助言を与える友人知人は数多いはずである。テレビでも、親しいことを公言している政治評論家なる人も居るのだから、「このままでは、俺たちの恥になる」と描き口説いて、彼自身に花道を飾らせてはいかがなもだろう。


 この支持率、改造後すぐに表われる数字は直感的な人気投票のようなもので、それほどの意味はない。むしろ、これから10・11月ごろにかけての推移をじっくりと見つめていきたい。



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