【165】 自民党総裁選は麻生で決まり! 注目は衆院選以降に…。  2008.09.11
   − 自民党総裁選告示、 政権交代、政界再編への戦い −


 きょう、自民党総裁選が告示された。そして、すでに新総裁は麻生太郎で決まり…!。でも、自民党関係者も言っているように、セレモニーとして展開される5人の候補者による総裁選挙という結果の判っているレースは、自民党に活力を与え、毎日のテレビ画面を賑わして話題をさらい、その次に控える衆議院総選挙への弾みになることは確かだろう。
 単なる儀式に過ぎない自民党総裁選だが、これを鳩山幹事長が「乱立レースは(福田から麻生への禅譲)密約を隠すための茶番劇」などとコメントしているようでは、民主党も自民党の目論見にはまってしまうと言わねばならない。民主党も総選挙に備える派手なパフォーマンスを展開して、存在を示すことが、今は何よりも肝要だろう。


 総裁レースを争うというよりも、仲良く手をつないで選挙カーの上で横一列に並び手を振る5人は、自民党の起死回生のマスコットボーイ&ガールである。
 それぞれの印象を一言ずつ…。
 麻生太郎…。誰を総裁に担げば次に控える衆議院選に勝てるか、それが総裁選びの唯一のキーなのだから、麻生の選出は揺るがない。安倍・福田と2代の総理に連続して引導を渡す役割を演じた彼が、政権から引導を渡される自民党の最後の総裁を演じるのは漫画チックだけれども…。でも、歴史的道化師であるとしても、その役割が回ってきたというのは、今の彼の存在の大きさを証明しているということなのだ。
 与謝野馨は、ネットの総裁選ではビリだったけれど、本番では第2位だろう。総裁選レースを演出しなければならない自民党の台所事情から擁立された候補だから、それなりの背景は揃っていて、政治生命を失わない程度の票も用意されている。麻生との政策論争が楽しみだ。
 小池百合子…。政治の脇役として華を添える彼女は好きなのだが、表舞台に出てくるとなんと嫌味な女かと思ってしまう。まぁ今度の場合も、政界再編を視野に入れて、派閥の分割の核としての役割を演じているわけで、舞台の回し役ではあるけれど…。
 石原伸晃…。言葉が軽い。「一点の私心もありません」を立候補の弁のメインにするなんて、原稿に書いてある言葉そのままでしかない。だから、何を話していたか、ひとつも覚えていない。彼の言葉は、心に残らないのだ。自分の言葉で話さないと、永久に親父を越えられない。
 石破 茂は「自衛隊を軍隊に!」なんてカッコいいけれど、その目がイヤッ。それに、噛み締めながら話すような口調が、かえって信用できない。一昔前の大平さんを連想させる政治家といった玄人好みの印象だが、今風じゃないなぁ。脱皮しないと、次がないよ。


 政局の焦点は、すでに衆議院選挙に移っている。自民党は総裁選の盛り上がりをそのまま衆議院へとつなげて、10月末には解散総選挙の日程を描いていることだろうが、この場合、民主党の作戦は難しい。あまりに見事な作戦を立てて、民主党絶対有利となれば、麻生新政権は解散を先に延ばすだろうし、かといって手を拱(こまね)いていれば、自民党総裁選に埋没してしまって、政権交代に届かずに終わってしまうかもしれない。 


 それらを前提として、これからの民主党の作戦を考えてみよう。


 まず、自民党総裁選と並行して、候補者擁立で話題づくりを進めることである。太田昭宏公明党代表の東京12区や福田首相の群馬4区へ有力な議員を比例区と並立して…、また、小池百合子、佐藤ゆかりといった地元定着度の浅い選挙区、さらには全国の注目選挙区へ、話題を集める新人議員を擁立していくことである。「民主党は政権をとる。そのためにはあなたの力が必要だ」という殺し文句を引っさげて、人気と見識のある新人候補者を発掘することだ。
 選挙戦のキャッチフレーズは『日本再生の鍵、政権交代!』。その説明は、「巨額な国費のムダ遣いや国の借金など、自民党政治は行き詰まっています。社保庁や農水省に代表される官僚の不祥事、企業の不正など、自民党長期政権は日本の政治・官庁・企業に癒着を生み、馴れ合い、利権、談合などの風習を蔓延させてきました。こうした、世の中の至るところに溜まっている、社会のチリや澱(よど)みは、一度、政権が変わらないと掃除することはできません。政権交代で日本に溜まったホコリやヘドロを掃除して、日本の風通しを良くし、活力を取り戻しましょう」といったところか。


 ただ、政権をとった民主党が、本当に国民の望む政治ができるかどうか、そのへんが悩ましい問題だ。国民は、緩やかな変化を望んでいる。そして同時に、目に見える変化も期待している。だから、全体的にはゆるやかで、ある部分では象徴的に劇的な改革を行っていかなくてはならないという、交代した政権ゆえの課題がある。そして何よりの懸念材料は、民主党は支持母体の多くの部分に、組合連合を持っているということである。
 連合勢力の強い三重県(私の地元なので何かと目に付く)を見ていると、組合民主主義がはびこり、決して公務員の活性化や意識改革は推進されているとは言えず、北川県政時代よりもむしろ後退し、先日の全国学力テストの結果に見るように、教育は低迷している。
 民主党の政治が、連合・自治労・企業組合などの支持から脱皮できず、組合官僚主義に偏るようなことがあったら、国民はすぐに民主党を見限り、もう二度と連合勢力が推す政党に政権を預けることはしないだろう。
 政権交代が実現したとしても、そこからが小沢一郎にとってはイバラの道で、横路・鉢呂・赤松といった古くからの労働組合上がりの議員が反小沢のノロシを上げて路線決定に異論を唱えるとき、果たして妥協せずに新生日本を築くための民主党路線を貫くことができるか。そこでこそ、民主党の真価(正体かナ?)が問われる。


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