【170】 パルチザンの物語は永遠なれ −北朝鮮の後継者問題−   2008.11.01


 軽い気持ちで【雑記帳】に書き始めたのですが、ついつい長くなってしまったので、本文として載せたほうがいいかなと思い、「日本は、今(政治)」のこのページへ転載(コピー)しました。


 突然ですが、北朝鮮の後継者は、金正日の次男「金正哲」に決定したようです。


 2〜3日前にテレビで、フランスの脳外科の医師団が北京へ向かう姿が報じられていました。フランスから北京へ向かう医師など珍しくもありませんが、彼らはその後ピョンヤンへ向かう一行でした。美食の限りを尽くし、大酒をあおってきた金正日朝鮮人民民主主義共和国総統は、まず通風を病み、やがて心臓病、次に高血圧から脳溢血か脳卒中か、とにかく脳に重大な症状を発症しているようです。
 9月9日の建国祭にわれらが将軍様の姿がないなんて考えられないことで、先軍政治の北朝鮮にあって軍事パレードを朝鮮人民軍最高司令官が閲兵しないなんてことはないのですが、この日、とうとう彼は姿を見せませんでした。米国の苦し紛れの「テロ国家指定解除」はかなりの良薬だと思ったのですが、特効薬とはならなかったようですね。
 9月14日、朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」が、『私も最高司令官である前にひとりの人間であり…』と、偉大なる指導者金正日の「人間宣言」を掲載しました。そして、2002年以来、金正哲の母の高英姫を「尊敬するオモニム(母上さま)」として偶像化キャンペーンを張っています。北朝鮮では、偉大なる指導者の母もまた偶像でなくてはならないからです。(高英姫は在日の帰国者で、元踊り子。2004年に乳癌で死亡しています。)
 金正日には、2001年に成田空港で拘束された長男の正男と、三男の正雲がいますが、二人の母親に偶像化のキャンペーンはないし、正男は各地を走り回ってさまざまな人脈や利権を手中にしているけれども、政務や党務の経験がないのが致命的で、初めから後継者としての意志はなかったのかもしれません。正雲は年若く、後継者レースの候補者としては未知数…、金正日の妹婿の○○○(誰だったっけ?)が推薦していますが、金正哲が健在な限り出番はないでしょう。
 金正哲は、現在、平壌の朝鮮労働党の庁舎内の執務室(一説によると、秘密の通路でしかその部屋に行くことはできないらしい)で、後継者としての帝王学を学習中…。昨年、27歳で政権の中枢である党組織指導部副部長の要職に就いています。生母の高英姫が偉大なるオモニムとして称えられる一方、後見人には、平壌の実力者である党指導部第一副部長の李済鋼が付いて指導していますから、これからは彼自身も大衆の前に祖国を発展させる英雄としての物語と共に表われることでしょう。


 先軍政治50周年が2010年であり、金日成誕生100周年が2012年ですから、このあたりで後継者としての指名がなされるものと思われます。スムーズな継承のためには、それまで金正日には生きていてもらわなければなりません。北朝鮮には、「首領の在任期間中に後継者を選ぶ」というマニュアルが成文として存在しています。そうしなければ、体制が瓦解するからです。金正日の健康が危ぶまれている今日、北朝鮮にとって後継者の決定は喫緊の重大事です。
 今年6月28日の労働新聞に掲載されていました、「パルチザンの物語は永遠なれ」という政論も注目すべき一文です。「朝鮮革命の伝統は永遠に白頭山の血筋である…」と綴るその論調は、金正日から金正哲への継承を促し、称えるものでした。もちろん北朝鮮の公論は、金正日の了承を得ています。彼の病状如何によっては、ドラマの展開は早送りされるかもしれません。


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