【172】 Co地球温暖化の主犯ではない − 環境問題が語る問題 − 2008.11.10


 日本は80年代から省エネを進めてきて、模範的なエネルギー効率のよい国家であったが、「京都議定書」では、『現在のような化石エネルギーの消費が続けば、21世紀の地球は前世紀より約4℃の温暖化が進み、生物種の約4割が絶滅して生態系は壊滅する』として、議長国であった日本は更に2012年までに6%の削減目標を受諾して閉会した。数値目標の基準年となった1990年の段階で、まだCo2の排出規制に取り組んでいなかった欧米に比して、すでに日本は高いレベルの効率化を達成していたのだから、新しい目標を達成するのは極めて困難で、ロシアやアルゼンチンから排出権を莫大な費用を出して買い取り、世界各国から「日本は正気か」といぶかしがられている。
 ここに、「地球温暖化の主犯はCo2ではない」とする、丸山茂徳東工大教授の論文を紹介しよう。日本だけでも年間1兆円もの予算を費やし、膨大な利権産業へと変貌しつつある地球温暖化防止キャンペーンよりも、丸山論文のほうが信憑性は高いと思われるから…。


『 日本政府やマスコミが「地球温暖化の主犯はCo2だ」というする拠りどころは、ゴア前米副大統領とともにノーベル平和賞(2007年)を受けたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の予言だが、IPCCは「Co2の可能性が高い」としか言っておらず、ちゃんと逃げ道を作っている。ところがテレビや新聞では、Co2が100%の犯人だと替わってしまった。
 地球の温度はこの100年間に0.6℃上昇しているが、この程度の上下幅は地球の歴史上ありふれたことで、グリーンランドではわずか20年の間に10℃以上も上下している。
 Co2が1ppm増加すると、温度は0.004℃ほど上がる。昨今の人為的Co2の排出量は、ちょう
ど毎年1.0〜1.4ppm程度の増加で、これを温度に換算すると0.004〜0.005℃の増加に過ぎない。近年の気温上昇は、Co2の増加が原因ではないのだ。
 1940年から80年までの40年間、世界が化石燃料を大量に使い始め、空気中のCo2濃度が急増(28ppmの増加)した期間を見ると、地球の温度は0.1℃下降している。これひとつをとっても、気温変化の要因は別にあって、Co2温暖化主犯説は崩壊している。


 ならば、地球温暖化の原因は何か。「太陽活動の活発化」こそが最大の要因である。現在、太陽の活動はとても高まっていて、日光照射量は最大に達している。しかし、太陽エネルギーの照射だけでは地球の気温は−18℃にしかならず、太陽照射が大気を温めて温暖な気温となる。
 大気が温められて気温が形成されるとなれば、Co2こそ要因ではないかと言いたいところだが、大気の主体は水蒸気である。水蒸気は雲にもなり、地球の50%は雲に覆われていて、雲の量が1%増えると気温は1℃下がると考えられている。
 その雲の量に最も大きな影響を与えるのは「銀河宇宙線の飛来量(宇宙を飛び交う放射線)」
で、銀河宇宙線が増えれば雲も多くなるのだが、太陽の活動が活発になると宇宙線は大気中に入りにくくなる。銀河同士の衝突などが起こると銀河宇宙線の飛来量は大きく増え、雲が大量に増えて地球は寒冷化して凍りつく。(銀河宇宙線が大量照射すると、生物は突然変異する。スターバスト(銀河同士の衝突で大量の星が形成される現象)が起こった23億年前や6億年前(カンブリア紀)にはゲノム上の大変革が生じて、たくさんの新種の生物が誕生している。)
 人類史の中でも10世紀から12世紀はかなり暖かく(中世の温暖期)、グリーンランドにも緑地が広がり農場もあったが、16〜17世紀に寒冷化し現在のような氷の大地となった。17世紀初頭(日本では関が原の合戦のころ)はかなり寒かったようで、アルプスの氷河が前進したり、イギリスのテムズ川が氷結した記録が残っているが、当時は太陽の黒点が少なく活動が低下していたことが明らかになっている。
 銀河宇宙線の飛来に影響を与えるもうひとつの要因は地球の磁場で、今はどんどん弱くなっていて、あと1000年もすればゼロになる。250万年程前には、磁石が示す北と南が逆転したことが知られている(松山逆磁極期)。磁場が弱くなっていく過程では、宇宙線が地球上に盛んに降り注いで、雲が多くなる。すなわち、地球気温は下がっていく。
 地球の公転軌道も2万〜10万年の周期で変動(ミランコヴィッチ周期)し、日射量が変わることも考慮する必要があるだろう。
 さらに「古気候」の変動にも照らして考えれば、地球の温度変化は6000年前に温暖化のピークを迎え、その後、冷却傾向にある。人類が誕生した600万年前から数えると、4度の氷河期があり、今、われわれは1万年ほどの間氷期にあって、人類は農業を初め、産業革命を成し遂げ、豊かな文明を築いてきた。が、太陽活動の減衰はすでに始まり進行していて、2035年までには寒冷化の兆候が現れるだろう。いや、あと5〜10年の間に、その傾向がみえるはずだ。』とある。


 更に、昨今、日本ではCo2削減が熱心すぎるほど熱心に叫ばれ、地球温暖化防止に向けて官民挙げてのキャンペーンが展開されているが、日本的地球温暖化防止キャンペーンへの警鐘に目を向けてみよう。


 地球温暖化に与えるCo2の影響はまことに微々たるものである。産業革命以前の大気中濃度は250ppmに対して、現在は381ppm。100年間に蓄積されたCo2は100ppmとなり、これを温度に換算すると0.4℃の上昇となる。このように、Co2の増加が地球の気候に与える影響は、驚くほど少ない。しかも現実には、上の丸山論文の中にもあったように、空気中のCo2濃度が急増(28ppmの増加)した1940年から80年までの40年間を見ると、地球の温度は0.1℃下降している。
 日本は、「温暖化防止に向かって一直線」という状態だが、個々にその努力を積み重ねていくことは地球温暖化をほんの少し遅らせる効果はあるかもしれないけれど、残念ながらそれを食い止めることはできない。なぜなら、日本以外の国は、アメリカやヨーロッパもCo2削減には本気ではなく、中国やインドにいたっては全くその気はないからである。
 「京都議定書」を守ることにヨーロッパは積極的で、現にCo2を減らしていると思われているかもしれない。が、複雑な計算は省くとして、京都議定書が締結されたのは1997年なのに、計算の基準とする年は1990年にさかのぼると定めているため、ドイツはこの年に公害垂れ流しの東ドイツを合併しているから実質的に+11%、イギリスは+5%、ロシアにいたっては+38%と増加枠を確保しているのである。
 世界中で、「温暖化を防ぐために京都議定書を守りましょう」と言っているのは日本だけ、実質的に削減努力をしているのも日本だけで、政治的にはひとり負け…、他の国は呆れ顔で嘲笑している。「それでも意義がある」というと言うのならばそれも結構だが、地球温暖化の犯人ではないらしいCo2を、年間1兆円の国家予算を投じ、骨身を削る企業や個人の努力を重ね、そして莫大な費用を投じて他国から排出権を買い取っていく日本の姿を考えれば、世界の現実に立ち返って再考しなければならない問題であろう。


 さらに、環境問題は大きな利権…金儲けにつながっているという点も指摘しておきたい。身近な例では「レジ袋追放」である。レジ袋を作るのに石油が消費されるという説があるが、レジ袋が作られる石油成分はプラスチックや重油などとして使うことができずに燃やしていた部分を使っているので、石油のムダ遣いを有効利用しているのである。
 昔、石油コンビナードでは使うことのできない成分を煙突から炎を上げて燃やしていたけれど、今は水蒸気が上がっているだけで炎は見られない。以前には使われず燃やしていた成分が有効利用されていて、それがレジ袋になっているのである。レジ袋がタダで供給されているのは、余りもので作られているので非常に安くできるからでもある。
 また、小池元環境相は在任当時、「ごみのほとんどはレジ袋に包まれていて、レジ袋があるとごみが増える」などと言っていたが、レジ袋を無くしたら代わりのゴミ袋を作らなければならないのは、自明の理だろう。どうせ捨てて燃やしてしまうのだから、タダで貰ったものを使うのが一番良いのに、なぜレジ袋と同じ成分でできたポリエチレン製の袋を新たに買って使わなければならないのだろう。びっくりするような不合理ではないか。
 レジ袋をやめれば、これまでレジ袋を作るために使っていた成分を煙突で燃やさねばならないことになって、Co2が増加する。また、買い物袋(=エコバッグ)を使えと勧めているが、エコバッグの材料はBTX成分といってプラスチックなどを作る高級成分である。年に1回、エコバッグを買い換えて古いものを燃やすとすると、石油を使う量はレジ袋を使い続ける比ではない。
 レジ袋の追放は、ゴミ袋、エコバッグの売り上げ増大でスーパーの懐(ふところ)が潤うこと、環境省の仕事をふやすことが、『利点』であろうか。エネルギーの節約は経産省、食べ物は農水省、河・町づくりは国交省などが担当しているから、肝心の環境問題で環境省が存在を示すには「レジ袋」だ「クールビズ」だと言わなければならない。さらには、年間1兆円もの予算を獲得して膨大な仕事を作り、利権・天下り先を確保しようとしている。しかし、その環境行政には、何らの必要性も日本国民にとっての利益もない。環境問題に取り組むには、人類が目指すべき目標を見据え、地球の生命についての思考が必要なのである。


 話を地球温暖化にもどそう。そもそも地球の気温は、生命の維持膨大なエネルギーを要する寒冷化よりも、人間も動物も植物も活動的になり、生産性も向上する温暖化のほうが望ましいことは確かである。
 4〜5世紀、ローマ帝国を滅ぼしたゲルマン民族の大移動は、小規模な寒冷化によってヨーロッパ北部の生産が落ちたための南下であったし、同じ時期、日本にも大陸から1万人もの帰化人が南下してきている。ロシアの旅順租借は不凍港を求めた南下であり、13世紀のチンギス・ハーンの世界制覇も、乾燥地帯では膨れ上がった人口を養えなくなったがための膨張であった。これらは、気候が人類の歴史を作ってきた実例である。
 地球が寒冷化すれば、世界が養うことのできる人口は激減する。20世紀の初めに20億だった地球の人口は、21世紀初頭に60億を越えて、2006年には67億となった。100年で40億人、6年で7億人増加した人口は、2050年には90億人になる。その過程において、丸山教授は2020年ごろから人類社会に大混乱が生じると警告している。
 爆発する人口に、食料は不足し、石油も枯渇する。寒冷化すれば、ニューヨーク・シアトル・北海道・トルコ・ロンドン以北に人は住めなくなり、世界の食糧生産はますます減少して飢餓に陥る人々が増える一方、さらに莫大な化石燃料を燃やさなければならなくなる。
 どうすればよいのか。ここでも、人類が目指すべき目標を見据え、地球規模の哲学的な思考が必要となる。人口爆発、食糧危機、技術革新、世界国家…などの視点だ。ただ、エゴイズムを押し通す国家の枠を人類が超えることができないとすれば、食糧生産を増大させて自給し、化石燃料から脱却して太陽エネルギーや風力発電などの低炭素社会を構築することが、まず第一に必要だろう。
 2035年にも到来するという地球寒冷化…。行く末をしっかり見据えて進まなければ、ただ食うためだけに人間が争い殺し合い、文明も叡智も何もかもを滅ぼす「凍れる未来」がやってくることになる。


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