【203】 日本経済の復活のために


日本経済、中国に抜かれて世界第3位に転落
   2011.01.24
     − 日本経済のお勉強 その@ −
  


 かつて世界第2位を誇った日本経済は、中国に抜かれて、第3位に転落しました。日本経済の何が中国にしてやられたのか…。GDP(国内総生産)の数字においてです。


 そこで、GDPって何だ…というのが今日のテーマです。GDPとは、国の経済規模を測る数字です。かつて世界の18%を誇った日本のGDPは、今やや8%に落ち込み、この数字を見ただけでも、日本経済に昔日の元気はないですね。
 この問題では、では日本経済を再生するためにはどうすればよいのかというところまで論じてこそ目的を達成するというものでしょう。追々、その点を考えていくつもりですが、まず今日は、GDPって何だ…という基礎の基礎を定義しておきたいと思います。
 GDPとは、「Gross Domestic Product」の略で、直訳すれば「全・国内・生産」となり、通常「国内総生産」という言葉で流通している。各国の国内で1年間に新しく生産された物品やサービスの合計金額です。
 例えば。ある会社が1本100円で売る予定の鉛筆を、40円で原材料を買ってきて製品に仕上げ、100円で売ると、この会社が計上した国内総生産に対する金額(これを経済用語で「付加価値」と言いますが、早い話が稼いだお金=荒利益です)は60円です。原材料を全て日本国内で生産されたものを使えば、原材料会社が40円、鉛筆会社が60円の粗利益を稼ぎ出したことになり、日本国内での付加価値は100円を計上することができます。日本中で生産された付加価値を合計すると、それが日本のGDPになり、2010年は539兆円でした。
 農林水産業、建設・不動産、電気・ガス・水道、金融、卸・小売業、公務員を含むサービス業など、あらゆる産業が含まれますが、資源に乏しく、加工型産業が圧倒的に多いわが国では、GDPの大部分は企業の生産活動が生み出しています。ですから、元気で豊かな日本にするためには、産業・企業の生産高(付加価値)を大きく向上させていくしか方法はないということが、当たり前の話ですがまず言えるると思います。


 以前は、国の経済規模を表すには、GNPという言葉がよく使われていました。GDPとどう違うのか、なぜ使われなくなったのでしょうか。



ユニクロは、日本の経済にどんな役割を果たしているか    2011.01.30
  − 日本経済のお勉強 そのA −


 GNPは、Gross NNational Productの略で、「国民総生産」と訳します。その国の国民が、国内国外を問わず、世界のどこかで生産した付加価値を合計したものです。それに対して、GDPは、その国の中で、生産者がどこの国の人であっても、とにかく生産した付加価値を合計したものです。
 先にあげた鉛筆会社の例で見てみましょう。100円で鉛筆を売る会社が、日本国内で原材料を調達して40円で仕入れ、60円の粗利益を上乗せして100円で売ったとすれば、GDPもGNPも100円です。
 しかし、外国にある外国の会社から原材料を40円で仕入れたとしたら、日本のGDPもGNPも60円です。さらに、原材料も加工も外国企業が行った製品を80円で仕入れれば、日本のGDPもGNPも20円にしかなりません。
 ここで考えたいことは、日本の会社が外国に工場を建て、現地で原材料を生産し、現地の人を雇って加工した製品を、日本に80円で仕入れ100円で売ったとしたら、日本のGDPは20円で、GNPは100円となります。
 GNPが増えた場合、その会社の利益は増大しますが、日本国内の雇用や景気にはつながらず、日本の付加価値は上がりません。すなわち、日本が元気になり、国民が豊かになるには、日本国内での生産高…GDPを増やすことが大切なのです。
 お金やモノが、たいして海を越えて移動しなかった時代には、GDPとGNPはそれほど変わりませんでした。でも、世界はグローバル化の時代を迎えて、各国の企業が海外に工場や営業所を多数構えるようになると、GDPとGNPは大きく異なるようになります。その国の経済力を測るには、その国の国内で生産した価値を測るのが適切だろう(実際に景気の良し悪しも国内生産額のほうが実感に一致します)ということで、先進国の多くがGDPを採用するようになり、日本も1981年から両方を、83年からはGDPだけを発表しています。
 昨今は、人件費の安い中国や東南アジアに工場をつくり、そこで作ったものを日本に持ち込んで大量に売りさばくという企業が増えました。それが悪いことだとは言いませんが、やはり日本経済の底上げを図り、景気を扶養させるためには、むしろ外国企業の日本進出を積極的に進め、日本国内でモノやサービスを生み出すことが大切なのです。世界基準として、国の経済規模を表す数字がGNPからGDPに切り替えられたということからも、経済・生産の体制はどうあるべきかが見えてくるのではないでしょうか。
 GNPでなく、GDPを増やさなくてはなりません。例えば、ユニクロを展開するファーストリテイリングは、2010年8月に発表した第1四半期業績によると、売上高2634億6400万円(前年同期比39.8%増)、営業利益610億6000万円(49.1%増)、経常利益586億4900万円(58.2%増)、当期利益348億5300万円(57.2%増)【流通ニュース】とありますが、生産のほとんどを中国で行っているユニクロの売上高がいかに向上しようと、どうでもいいことなのです。ユニクロが儲けるのは結構なことだと思いますが、それはユニクロの経営者と社員にとっての喜びであって、GDPの増大にはさほどかかわりのない…、すなわち日本経済の浮揚にはたいした役割を果たさない大増益だからです。
 

 それでは、GDPを増大させる…、 国内での生産を増やすためにはどうすればよいのでしょうか。


日本経済再生のために  
2011.02.02(水)
 − 日本経済のお勉強B − 


 日本経済再生のためには、GDPを増やす…、すなわち日本国内でモノやサービスを増やすことが不可欠であることはご理解いただけたと思いますが、では、そのために何をするべきでしょうか。
 経済のあり方は大きく分けて、金融・資源・製造の3種があります。「金融」は世界に伍するノウハウや体制が、日本にはありません。近代資本主義が成長してきた激烈な競争体験が日本にはありませんし、金融には避けて通れない…よく時代劇に登場する、寝ている病人の布団を剥ぎ取っていくような過酷な非情さも必要ですが、日本人の国民性には合致しないところがあります。だから、日本の経済にはやたら規制が多いし、自由に競争させればすぐに敗れてきて、負けたものは不平不満すら社会の性にする。自由競争は、日本人には向かないのです。だからといって、自由競争をするなと言っているわけではありません。むしろ、弱点を認めた上で、国際競争に打って出ることを考えるべきです。しかし、国際金融情勢に慣れていない、かつ、規制の多い日本軽罪の現時点では、金融立国は無理と言うものです。
 「資源」は、言うまでもなく日本はほとんどなく、20数兆円の原油・原料・食糧などを、外国からの輸入に頼っている現状です。むしろ、この分の外資を稼がなければ、日本は立ち行かなくなります。だから「製造」に国を託すしかない。環境型ビジネス・鉄道や原子力発電などのインフラ輸出・マンガやアニメなどのコンテンツビジネス・蓄電池や宇宙産業などの新技術など、新たな成長材料はあり、それらは体制に育てていかなくてはなりませんが、今の日本が勅命している経済的課題は、「日本のものづくり」をいかにして守り、大きくしていくかでしょう。
 

 菅内閣は「法人税の5%軽減」を打ち出しました。日本の現在の法人税は約40%(国税27.99、地方税11.55、合計39.54%)で、世界で一番高い税率です。。第2位はアメリカで39.21%、3位はフランスで34.43%です。
 日本の法人税が5%引き下げられるとして35%となりますが、フランスよりもまだ高くて、世界第2位…。これでは、法人税を下げた意味がありません。高い税率の日本の法人税ですが、利益を生み出せない企業が多い現状では、税収は見込めないわけですから、高い税率の意味もありません。ここは、思い切って25〜20%ぐらいにしてはどうでしょうか。それで景気が回復すれば、税金は入ってくるのですから現状のゼロよりもいいでしょうし、企業の足国が確かなものになればその時点で税率を30%に上げることも可能でしょう。
 25〜20%ぐらいにしてはどうかという提案は、今のままでは外国企業に来てもらうどころか、日本を逃げ出す企業が続出する恐れがあるからです。現に、即年の日本企業の海外投資額は一昨年比44%と急増しています。企業の生産の中心が感慨へと流出していく「日本国内の空洞化」は、現実のものとなっていることが、この数字を見ただけでも理解されると思います。
 さらに、家電、自動車など、日本のものづくりの中核をなす産業は、昨今、韓国などの新興国に激しく追い上げられています。いえ、すでに逆転しているというべきでしょうか、韓国のサムスン電子の純利益は日本の大手電機メーカーのそれをはるかに上回っていますし、世界市場で売り場の中央に並んでいるのは勧告製品だというのが現実です。韓国は、人口は日本の半分、GDPは5分の1程度、人件費もそれほど安いわけではありません。なのに、なぜここまで躍進したのか。最大の要因のひとつが、24%という法人税の安さです。
 そしてもうひとつ、韓国では国家破綻かと言われた1997年のIMF危機のときに、企業の統廃合が進み、市場占有率の高い、高利益を追求できる会社が誕生しています。日本では、独占禁止法の縛りがあって、実現できない大統合です。
 ここで言えることは、世界の現実を見据えて、時代が要求する形に、日本は法律の改定を含めた構造変化を遂げなくてはならないということです。


 TPPは、避けて通れない課題です。 【今日はここまで。続きは また近日…】


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