【日本は今、218】 野田内閣(ぼくちゃんの水槽内閣)スタート  2011.08.05


 9月2日、皇居での認証式を終えて、「野田内閣」が正式にスタートした。野田首相は「適材適所」を強調して「実務型内閣」と評価しているが、党内融和に配慮した結果のポストばら撒き内閣である感は否めない。実務に徹すれば党内各派のバランスに欠け、バランスを図ろうとすれば仕事の出来ない内閣になる。この内閣は、言うまでもなくバランス重視の内閣である。
 自らを泥にまみれる「ドジョウ」と称しているのにちなんで、記者から「ドジョウ内閣か」と問われると、「仕事をした結果で皆様から名前をつけてもらえば…」と言っていたが、スタート時点での命名を試みると、初入閣が多数を占める素人集団なので「ぼくちゃん」と冠をつけて『ぼくちゃんの水槽内閣』と呼ばせてもらおう。親方のドジョウを筆頭に、金魚あり、ボラあり、タコあり、かまぼこも泳いでいるような水槽のようだからである。
 野田首相は、早速に「国家の運営は官僚の皆様の協力なくしては進みません」と、官僚に擦り寄っている。方針は政治が決める、その方針に従って官僚は仕事をしてほしい…というのがあるべき姿だ。財務相を務めて、官僚の狡知なしたたかさと権力の強大さを目の当たりにした野田佳彦には、もはや政治主導の気概はない。政治的後退の第一歩である。
 新内閣の仕事に期待が持てないのは、民主党にそもそも人材が居ないからだろう。安住財務相は小型野田佳彦財務相で、基本的に財務省の言うがままだろう。公務員改革などどこ吹く風の増税路線を突っ走ることは間違いない。
 鉢呂経産相…、社会党出身者であることが致命的だ。社会主義者を経産相にしてどうするんだ。原発廃止に突き進もうとするだろうし、官庁が強大な許認可を盾にして規制を行う全体主義経済を推し進めようとするだろう。日本経済の停滞・衰退が目に見えるようである。
 一川防衛相は、すでに自分がいかに防衛大臣に適していないかを自覚したようである。「私は防衛問題には素人で、これこそが究極のシビリアンコントロール」なんて公言している男に、日米同盟の根幹である普天間問題を解決できるとは思えない。防衛がわからない男に、アメリカを初め世界各国が防衛問題を語るはずもない。野田内閣の言う適材適所とは、この程度のものなのだ。
 山岡賢次国家公安委員長の胡散臭さ(うさんくささ)はどうしようもない。前任の岡崎トミ子は国旗及び国歌に関する法律に反対し、2003年には訪韓時に元慰安婦とともに日本大使館へ抗議デモを行っているし、中井 洽は(私の住まう三重県1区選出で汗顔の至りだが)議員宿舎の鍵を渡すなどといった度が過ぎる(それも度重なる)女性スキャンダルもさることながら、複数回にわたって出された衆院予算委員長時の解任動議、秋篠宮ご夫妻に対する不敬ヤジ事件など、まことに政治家としての品性はおろか適格性にに欠ける。
 民主党にはこんな人材しか居ないということなのだろうが、山岡賢次はパチンコ疑惑やマルチ商法推進疑惑が色濃くかけられている。この山岡を国家公安委員長に据えるなど、泥棒に泥棒を捕まえろといっているようなものであり、加えて内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全担当)だというのだから、何かの冗談か思ってしまう。野田内閣の火薬庫として、いずれ火煙を上げるのではないか。
 内閣の目玉というべきか、仕分けで名を売った村田蓮舫の公務員制度改革担当特命大臣への就任だが、蓮舫に公務員制度の改革はてきない。そもそも、彼女が担当した「仕分け」は、「次世代スーパーコンピュータ開発について「世界一になる理由は何があるんでしょうか?2位じゃダメなんでしょうか?」とピントのずれた発言をし、予算削減を決定するという無軌道振りであった。
 しかしその結果は、「中止・凍結」と決定された事業の半分以上が、そのまま継続して存続・建設されている。例えば
、事業仕分けで「凍結」となった埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎の建設事業が再開されている。事業費は105億円、建設再開を決めたときの財務相は野田首相その人である。凍結とされた事業が、大震災復興財源のため増税が検討されている最中に復活するなど、言語道断ではないか。それ以前に、事業仕分けなんて、何の拘束力も持たない政治ショーに過ぎないということだったのだ。民主党の政治なんて、ほとんどみんながこの程度のものだ。
 蓮舫特命相が、公務員改革をホントに実行しようというのならば、かつて自民党政権下において渡辺喜美行革担当相が行ったように、「改革基本法」といった法律を国会に提出して成立させ、法の縛りをもとに制度の改革を行う姿勢を示すことだ。それならば、彼女の政治に賭ける信条を信用することにしよう。
 

 新内閣の支持率は65%で、内閣発足直後の調査(1978年の大平内閣以降)としては5番目に高く(小泉内閣87%、鳩山内閣75%、細川内閣72%、安倍内閣70%)、不支持率は19%だった。もっとも、菅内閣ですら発足時には64%だったけれど…。
内閣を支持する理由では、「これまでの内閣よりよい」48%が最も多かったことからも、「前政権に比べれば…」「民主党政権よ、ここらでしっかりしてくれ」という前提付きである。
 ぼくちゃんの水槽内閣』は、これからの仕事の積み上げによって『水族館内閣』になり、大海原に泳ぎ出す『大洋内閣』になることができるか? 今の民主党に根ざす限り、見果てぬ夢になると思うが、どうだろうか。


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