【日本は今、220】 今更、TPP議論なんて…?   2011.10.14
        − 日本の農業の問題点は、根源を解決すべき −


 TPP(環太平洋パートナーシップ協定・環太平洋戦略的経済連携協定)への参加の是非をめぐる議論が熱を帯びている。何を今頃言ってるんだ、FATにしろTPPにしろ、世界はその方向に動いている。長引く経済の低迷にビビっている日本人の思考は内向きになってきていて、今ある経済・生活レベルを防衛することのみにとらわれて、世界に打って出るという思考回路が失われてきているのだ。


 TPP反対は、特に農業関係者・農水省に「生産コストの高い日本の農業は、TPPによって海外から安い農作物が入ってくれば壊滅的な打撃を受ける」と反対が強固だ。例えば米は、現行778%という高い関税がかけられている。農水省が掲げる日中間の米価の差は4倍(中国の米は日本の米の4分の1の価格)というのだが、このデータは10年以上も前のもので、2009年の60キロの輸入価格では、中国米10500円に対し、日本が15000円である。まだ4割もの差があるというかもしれないがその差は大幅に縮まってきていて(昨今の円高で、更に圧縮されているはず)、現実に中国の富裕層は安全でおいしい日本の※を輸入し、買い求めている。


 このように、TPP反対論は、データも恣意的に古いものを出してくるし、また、議論のレベルも低すぎる。そもそも日本の農業の問題点は、狭い耕地にしがみつく効率の悪い生産体制、農協を軸とした新規参入を阻もうとする排他的利権体制、選挙の票田であることを期待しての補助金漬けの甘えた体質など、その構造的な欠陥こそが指摘されねばならないはずだ。
 日本の農業の壊滅は、TPP参加などという時点のものでなく、もう数十年前から、その根底が揺らいでいるのだ。それを、TPP反対派の言うように、今のままの関税を盾にした保護政策ばかりをとっていては、日本の農業の体質強化は将来にわたって実現せず、近い日に崩壊せざるを得まい。
 今、日本の農家は兼業農家が85%を越え、その収入の多くは近くに工場などに働きに行っている、兼業者の給与所得によっている。日本が貿易の自由化に踏み切らず、企業の国際競争力が低減し、工場の海外移転が続いたら、兼業農家も生活できなくなるのだ。非農業部門の生産性や所得が上がってこそ、農産物の消費も増えるというものだ。
 日本の農業を育てるためにはTPPやFTAに積極的に参加し、農地の共同経営や農業技術の革新を行い、安全で高品質な農作物を世界に輸出する農業を確立しなければならない。反対論は農業関係者や農水省に強く、また、山田前農水相・鹿野現農水相らはその先頭に立っているというが、この人たちは日本の農業が抱える真の問題点を考えたことがあるのか、また、農業問題を含む経済や、独善(ブロック経済)を廃しながら世界の安全問題をとのように発展させてきたのか考えたことがあるのか。民主党国会議員のうちの190人もがTPP参加反対の署名をしたと伝えられているが、その氏名を明らかにして、歴史の審判を受けさせるべきだろう。


 TPPは上に述べたように経済的利点も大きいが、環太平洋戦略的経済連携協定と訳されるとおり、太平洋を取り巻く自由主義の国々の安全保障の問題も包括している。ここで日本が躊躇するならば、先日のオバマ米大統領の演説に日本の名まえが一度も出てこなかったように、環太平洋における、そして世界における日本の重要性はますます低下することだろう。
 「愚劣な政治は国を滅ぼす」。言うまでもないことだが、今更TPP参加を議論しているなんて愚の骨頂である。広く世界に目を開いて、正しい日本の将来構想を作り上げてほしい。


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