【229】 
東京電力の解体・再編を −九電体制の見直し− 2012.03.22
 

 福島原発の事故により、福島県をはじめとして東北各県に甚大な被害をもたらしている東京電力が、4月からの値上げを発表した。原発の稼動が望めない中で、石油など原料費の高騰をその理由としてあげているようだが、「多大な迷惑をかけて、なおかつ料金の値上げとは、反省していると思えない」という指摘に、「料金の値上げは、電力会社の権利であり義務でもある」と西澤東電社長は言ってのけた。
 しかも、契約期間中は利用者の承認がなければ値上げすることはできないにもかかわらず、その説明は一切ないままに値上げの通知を送り届け、拒否の申し出のないところは承認したとみなして4月からの値上げを実施するという横着さだ。21日、その点が世論に批判され、さすがに値上げ延期を発表した。
 今なお放射能を避けて避難生活を余儀なくされている人が多く居る現在、電気料金の値上げを言い出す体質は、『電気を供給してやっている、嫌なら使うな』という意識から生まれてくるのだろう。しかも、多額の国費の注入を受け、国民の税金で存続させてもらっている会社なのだという意識が欠如している。これが東電体質…、いや、地域独占体制を謳歌する電力会社の体質なのだろう。


 値上げを言い出している東電は、全く不埒な会社で、解体再編する以外にその考え方を改めることはできないと思われる。
 原発事故で多くの人が故郷を追われ、仕事やその日常を脅かされているというのに、東電社員の
給与水準は、政府の第三者委員会(東京電力に関する経営・財務調査委員会)の報告書によると、大卒社員の年収は50歳で約1200万円、55歳で1300万円であった。事故を受けて2割カットを東電は実施したというが、それでも50歳で1000万円前後の年収が維持されている。
 さらに退職金(企業年金の事業主負担を含む)は、大卒管理職が約4000万円、高卒の一般職は約3000万円だ。
 そのうえ、多くの企業で労使折半となっている健康保険料は会社が7割負担しているから、実質給与の上乗せである。また、社員の「リフレッシュ財形貯蓄」には会社から年8.5%の利子補給が行われている。一般銀行の定期預金金利が最高でも新生銀行の0.5%である今日、破格の優遇措置だ。8.5%の利子とは、8年で元金が2倍になる計算なのだ。
 第三者委員会は退職金の引き下げ(それでも大卒管理職で約3500万円)や福利厚生水準を他企業並みに下げることを提案したが、今に至るまで給与の2割カット以外は実施されていない。
 これが、一般企業のように、自由な市場競争で営業努力によって得た収益を原資とするならば、何の異議を申し立てることもない。しかし、東電(他の電力会社も含めて)は人件費を含めて経費として計上し、その後に電力料金を決めるという特権を保障された会社である。高額な自分たちの給与も、手厚い福利厚生も、会社の資産や施設なども、贅沢な経費を全て計上してのち、そこから電力料金に決めるのである。
 現今の政府も自分たちの垂れ流しを改めずに増税を画策しているのを見ると、東電の身勝手な論理とダブル部分は多いが、東電は民間企業なのである。一般企業としての倫理・姿勢を以って企業経営にあたることこそ、義務であり権利であろう。


 地域独占、経費一切を計上して電力料金を決定するという、現在の体制下では、電力会社はどこでも同様の体質を持っている。諸外国に比べて、異常に高い電気料金が、それを証明している。【電気料金の比較、参照】 日本の将来のためにも、今、この機会に、電力の自由化を実現させるべきであろう。


  「日本は、今」 トップページへ