【235】 震災瓦礫は現地処理を考えるべき   2012.06.04


 東日本大震災で生じた震災瓦礫の処理が、1年3ヶ月を経た今も遅々として進んでいない。まだほとんどが山積みされたままのところも多く、他府県への移送・焼却処理を呼びかけているが、賛成する住民は少なく、搬入に対しては体を張って妨害する事件も起こっている。
 震災後、原発周辺の住民は強制避難を余儀なくされ、今なお放射能汚染の状況は深刻であることを思うと、受け入れ側の過敏な敬遠も無理ないことだろう。『安全』と言われても、この国は政府も責任企業も学者もウソをつくことを、繰り返し見せつけられてきた。今なお、放射能被害者には解決策も救済策も完全には行われていないこと思えば、『風で舞い散る放射能を持ち込まないで』という反対住民の思いも当然だ。
 最善の方法は、現地処理を行うことだろう。僕はかねてから、放射能の漏出を防ぐ囲いを完全に造り、震災瓦礫を埋め立てに使って陸地を広げればよいのではないかと言ってきた。震災瓦礫を埋め立てれば海水が汚染されて、以後の漁業が壊滅する…などといった懸念が呈されたが、そのために防御工事をしっかりするのであり、また、それで海水汚染が懸念されるのであれば、他府県に処理を依頼するなどもとからできない相談でしかない。
 昨日、お昼前の報道ステーションを見ていたら、『発生した瓦礫を仙台平野沿岸部に整備する防災林の土台として活用。その事業を林野庁が担当し、6月にも着手する』という福島県南相馬市の計画を紹介していた。それによると、沿岸18キロに防潮堤を造った後で、内陸部に瓦礫などを再利用し、土を盛り、植林をして防災林を設置するというものだ。埋め立てに必要な瓦礫は、南相馬市のものだけでは足らなくて、他の市町村から求めなければならないという。埋めるというと、僕なんかは海の埋め立てと短絡するけれど、「瓦礫を利用した防災大堤防の建設」という陸の埋め立てを行なう方法もあったのだ。
 国内の森林再生に取り組む一方で、国外においては、1990年から熱帯雨林再生プロジェクトに参加して、マレーシアでは根が充満したポット苗を植樹する方法で、再生不可能とまでいわれている熱帯雨林の再生に成功し、1998年からは中国の万里の長城でモウコナラの植樹を行うプロジェクトを進めてきた、宮脇 昭地球環境戦略研究機関国際生態学センター長・横浜国立大学名誉教授の取り組みも紹介していて、「東北全域の瓦礫だけでは足らない」「生命の再生で防災を」と81歳になられる先生は頼もしい。
 瓦礫を全国の自治体に搬送するに、膨大な費用がかかる。そこに、いわゆるガレキ利権が生じるわけだが、それらに群がる政治家や業者の妨害を断固排除して、この計画を軌道に乗せたい。その金額を、地元の防災堤防の建設という事業に投入していくことも、大きな復興支援になるはずだ。
 環境省に問い合わせると、「広域瓦礫処理」は、被災地で受け入れる想定はしていません。そもそも、広域瓦礫処理は、岩手、宮城源でのがれき処理の負担を減らすための目的であり、被災3県内でのがれきの移動は想定していない」という、答えにもならない答えである。
 全国自治体に過分の負担をかけ、住民の理解も得られない、震災瓦礫の広域処理は、原点に立ち返り、現地処理の方向で見直すべきであろう。


 
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