【254】 防衛準備を急げ!       2013年3月12日(火)


 今、北京で開催されている中共全人代で、習近平が国家主席に選出され、いよいよ習近平政権が本格的にスタートする。
 全人代に先立ち習近平は甘粛省・蘭州軍区を視察したとき、人民解放軍兵士を前に、「部隊は常に戦争に備え、戦えば必ず勝利するよう備えよ」と訓示したという。自らの政治スタンスを固めるために、強硬的である姿勢を示して、軍部や国内ナショナリズムの支持を取り付けようとしたのである。
 また習近平は政策の要衝として、「偉大なる中華の復興」を掲げ、それを成し遂げられるのは中国共産党のみであり、その目的実現のためには強い手段を用いることも躊躇しない」と言い切っている。
 強硬な政治を宣言する習近平の足元で、中共は年間20万件といわれる民衆のデモ・暴動、「南方週末」に見られる自由・人権・言論への統制に対する反対運動、そして国際法を無視しての強行外交に対しての国際社会の批判など、体制を揺るがす火種がくすぶっている。党指導者や高級軍人のすさまじい汚職・腐敗は、誰もがもはやこのままの体制が許されるはずがないと思うレベルに来ているが、声を上げることもできない国民の大部分は経済発展の恩恵にあずかれない存在だ。
 大気汚染、河川の汚れ…など、人々の健康に深刻な被害を及ぼしているが、今も工場の煙突からは有害な排煙が立ち上り、排水口からは汚水が垂れ流されている。抗議をすれば官憲によって弾圧される中共社会は、大きな不安定を抱えている。


 脆弱な政権、政治がコントロールできない軍部、そして、不安定な社会…。国内の不満を外へ向けようと、反日教育に固まった国民を扇動して対日強硬姿勢を強めたり、緊張を高めたりするのは、独裁政権が常態的に用いる政治手段である。
 特に中共は、毛沢東の覇権主義『力による建国』を建国の基盤とする独裁共産主義国家である。毛沢東語録には「政治は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す政治である」「鉄砲から政権が生まれる」と記されていて、中共は勝てると思えば武力を行使することにためらいはない。中国知識人の常識である古代の兵書「孫子」には、「兵力が敵より少ない時はあらゆる手段を講じて戦いを避けよ。兵力が敵の五倍あれば躊躇(ちゅうちょ)なく敵を攻めよ」と書かれている。
 日本が、もし防衛力の整備を怠り、23年間にわたって2桁の軍事費の伸びを計上する中共が、軍事力の対日優位を獲得したときには、必ず日本にたいして戦端を開く。チベット制圧、新疆ウイグル自治区の侵攻、内モンゴルの抱合など、何の必然もない征服行動を突然に起こしてきた歴史的事実を見れば明白であろう。
 中華人民共和国成立以来、中共がかかわった主な戦争は、朝鮮戦争、中印戦争、中ソ国境紛争、西沙諸島海戦、中越戦争、南沙諸島海戦などが挙げられるが、最近の対フィリピン、ベトナム、インドネシアなども含めて、チベットや新疆ウイグル地区の制圧など、相手方に国際法的にも倫理的にも何の落ち度もないなかで、一方的にゴリ押ししていったものも数多い。圧倒的な数量パワー・人的パワーで、弱小国の領土や資源を強奪し、制圧して人権無視の強権圧制を断行している。日本に対しても、民主党政権下のごたごたのように隙を見せれば、中共は必ず侵攻の手を伸ばす。
 

 日本を侮(あなど)って…、あるいは国際常識からは程遠い生温(なまぬる)さの日本の対応を試そうと、中共が小出しの挑発を続けることは、偶発的な接触が生じる可能性が高く危険である。これを避けるには、日本には手出しはできないということを、相手に対して明確に認識させる必要がある。
 そのためにも、日米の連携密度を強化するとともに、日本の防衛力を高めることが重要である。対中共防衛には日米が協力してあたることを常に確認していくと同時に、日本は武器輸出三原則を見直し、関連企業は20万社にも及ぶといわれる防衛産業(軍需産業のこと)の振興を図るべきだ。国産機の開発が検討されていたのを、米国からの圧力で、当時の中曽根首相が鶴の一声で米国との共同開発を指示した、自衛隊戦闘機の製作を始め、防衛装備の開発を急ぐべきだ。
 特に、中共との戦闘において、現在は装備・戦闘能力とも日本優位が専門家の一致するところだが、ミサイルの保持数量には圧倒的な差がある。中共が保有するミサイルを一斉に日本に向けて発射すれば、イージス艦、P3C、迎撃ミサイルを動員したとしても全てを打ち落とすことはできず、日本のいくつかの都市は大きな打撃を受ける。日本はより大きな抑止のために、攻撃用ミサイルの開発保持を急ぐ必要があろう。
 さらに、原子力潜水艦を持たないことが、日本のウイークポイントである。酸素補充の必要がなく、長時間の潜航が可能な原潜は、神出鬼没の働きをして、どこからでもミサイルを発射することができる。日本が中共と対等に話をするためには、「持っていない」と言いながら、核弾頭ミサイルを装填しているかもしれない原潜を、東シナ海から世界の海へと潜航させることだ。『日本には手を出せない』という状況を作り上げることが肝要である。


 習近平が新政策の最大の課題のひとつに挙げているのが「官僚腐敗の撲滅」であるように、今の中共の政府・党の上層部、官僚、地方公務員らの汚職・特権意識は目に余る。彼らは地位を利用して何千億円という蓄財をなし、海外預金にして、国家崩壊の時には海外へ脱出しようとしているらしい。国民の許す範囲をはるかに超えている腐敗の程度は、年間20万件ともいわれる暴動の多さに現れている。
 支那の官僚の腐敗・汚職・地位利用は、民族のDNAに刻まれた習性と言うべきかも知れない。長年、支那の属国として国の仕組みや文化に大きな影響を受けた小中国の韓国においても、歴代の大統領やその一族が蓄財を図り、多くは有罪判決(中には死刑判決)を受け、自殺した者もいる。
 本家の支那ではその程度もすざまじく、例えば 康熙・雍正・乾隆と続いた清の全盛期にも、後期になると官僚の腐敗は目に余るものがあり、乾隆帝の側近であった和伸(わしん、ホチエン)が汚職を摘発されて没収された私財は8億両に達したといわれる。当時の清朝の歳入は約7千万両だったから、これは国家の歳入の11年分以上という巨額である。フランスの太陽王ルイ14世の全盛期の財産が2千万両と換算されているから、その40倍に当たる。シナ人の汚職癖は歴史的なものと言うべきだ。【山川出版社、世界史研究より】)
 中共の国家の体制はかなり揺らいでいる。指導者や官僚の汚職は中共人民が解決するであろう問題だろうが、チベット・新疆ウイグルや活動家に対する(国際的に見た場合の)不法行為は強く抗議して、やめろと言い続けるべきだろう。直接、中共社会に働きかけるような手段に訴えてでも、独善的横暴な一党独裁国家は打倒すべきである。早晩、中共の現体制は崩壊するとは思うが、それを加速させるための働きかけを行うべきである。それもまた、日本の防衛手段の一つだろう。


 日本と中共との間には宣戦布告をして戦争を始めるようなことはないと思うが、現場での接触がきっかけとなって戦端が開かれる可能性がある。1937年、日中戦争への端緒となった盧溝橋事件は、駐屯していた日本軍が中国国民政府軍に発砲した偶発事件が引き金だとされる。最近、ソ連共産党の秘密文書公開から、国民党軍を日本軍と戦わせてその勢力を削ごうとした中国共産党軍が、国民党軍に向けて撃ちかけたというのが真相であると明らかにされているが、このように偶発的な…あるいは些細な行為が重大な事態を引き起こすことがあることを覚悟しておくことだ。
 現今の中共の行為は、国家の方針として東シナ海の制圧を企図したものである。中共は太平洋に覇権を唱えるために第一・第二列島線を敷き、沖縄やグァム島を含めて領土領海にしようとしている。だから、百歩譲って尖閣を共同管理しようと提案しても、中共の無理押しが止むことはない。
 中共との戦端が開かれる可能性は、現実のものだと覚悟する必要がある。日本が選ぶ道は2つ
①は防衛準備を進めて、中共が戦端を開かないような体制をつくるか、②中共の征服を受け、東海省としてチベットと同じように存在するか
…である。いずれにしても、覚悟が必要である。


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