【264】 ガキ大将国家への抑止力        2013.09.14


 中共は共産党の一党独裁が続き、トップの政治判断が法律に優先する、前近代的国家である。韓国は民主主義国家として日米と価値観を同じにする近代国家だと思っていたが、最近は日韓基本条約で解決済みの徴用工や慰安婦の賠償を日本に求めたり、戦前に日本や日本人と結託して築いた財産を没収するという「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」なんて遡及法を定めて、過去の事案を法律の番人たる裁判所が裁こうとしている。
 中韓は、もはやとても近代国家とは言い難く、その時の為政者の判断でどうにでも変わる、悪代官が統治する日本の江戸時代の様相である。それを恥じないのだから、子どもの世界でもある。
 「敵進我退、敵駐我撹、敵疲我打、敵退我追」(毛沢東、遊撃戦論)は中共の戦いの基本だから、力の空白があれば躊躇なく相手を進撃しなければならない。この「力の信奉者」を相手にするとき、決してやってはならないことは、力のバランスを崩すことである。こいつは俺よりも弱いな…と思えば、力ずくで屈服させようとするのは、ガキ大将がすぐに考えることだ。
 国際社会の監視があるなんて能天気なことを言っているのは、何も知らない不勉強をさらしているようなものだろう。中共は、米軍がベトナムから撤退(73年)するや西沙諸島パラセルをベトナムから奪い(74年)、ソ連航空部隊がカムラン湾飛行場から撤退(84年)するや南沙諸島に進出してスプラトリーを占拠(88年)、米海軍がフィリピンから撤退(92年)するやスカロボ岩礁を占領してしまった。チベット、新疆ウイグル地区、内モンゴルの征服・制圧・同化の不法性については、今さら言うまでもない。


 今、日本は何をなすべきか。東シナ海の制空権は、まだ日本にある。世界最強のF15戦闘機を有する自衛隊の航空力は、旧ソ連のスホイ-27戦闘機を改良した中国空軍の主力戦闘機「殲(セン)-11」に対して、今のところは優位だ。しかし、ここ20年にわたって軍事費を倍増させ続けてきた中共軍と、防衛予算を削り続けてきた日本とでは、その差は目に見えて縮まってきていて、このままいけば間もなく逆転されることは容易に予想される。そのとき、中共がとる行動も明らかだ。
 軍事力は、予算を増やしたからといって、明日から効果を表すものではない。最新鋭戦闘機を導入するには10年計画が必要で、パイロット、整備士などを養成するにも10年のスパンで取り組まねばならない。加えて、部品の供給や修理などは、防衛産業の技術力を維持し続けなければ、対応できるものではない。
 すなわち、日本は防衛予算を大幅に増強させて、次期戦闘機F-35の導入を一日も早く実現するとともに、国産の戦闘機の開発に取り組まなくてはならない。F-35やステルス機の導入はもちろん重要な日米の連携事項だが、自前の防衛産業・航空産業を持たないと、アメリカから渡されるブラックボックスを有り難くいただくだけのことになり、日本の航空技術力の向上・防衛力の増強にはならない。


 同時に、防衛関係の法律の整備も急がねばならない。イラク派遣部隊の佐藤隊長が道端で負傷して倒れている英軍兵士を助けるかどうかに逡巡し、後から来たオランダ軍兵士に「何やってんだ」と呆れられたという話は有名だが、傷ついた英軍兵士を助ければ禁止されている戦闘行為への参加になってしまい法律違反を犯すのではないかと考えなくてはならないというのはいかにも異常である。今は、尖閣周辺で海上保安庁の巡視艇が中共の艦船に撃沈されても助けることもできないのだ。個別的自衛権を行使して巡視艇の保護に出動するには「防衛出動」が発令されていなければならない。平時には、防衛行動はできないのだ。
 「正当防衛」(刑法36条)を根拠とするにも、海保護衛艦は海自の管理下にはないからいつも行動を掌握しているわけでなく、要請を受けて駆けつけても撃沈された後では、相手を攻撃することはできない。過剰防衛と判断されるのだ。
 自衛隊は、してはならないことだけが法律で規定され、それ以外は事態に対応するとする外国の軍隊と違って、法律でしてもよい行動だけが定められている。規定にない行動はしてはならないとする、いわゆるポジティブリスト方式を採用しているのだ。現場で対応できない状況が多すぎるし、「防衛出動」は国会承認が必要でもある。
 防衛力とは、危機をより悪化しないように対応できる抑止力でもある。法整備が甘ければ、緊急事態に的確に対応できず、攻撃しても反撃はしてこないとわかれば更に攻撃をエスカレートさせるというガキ大将国家の重なる横暴を招くことになる。防衛法制の整備は、喫緊の課題である。
 日本の誇る戦闘機・艦船が何の懸念もなく日本の領土を守る日が来てこそ、日本の防衛は一人前になる。日本に手を出すと必ず壊滅的な反撃に遭う…と、相手が認識するのだ。


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