【270】「建国記念日」を考える       2014.02.11

 とあるスナックで、「2月11日は何の日だ?」と聞くと、10人中5人が「建国記念日」。あとは「文化の日」「憲法記念日」「春分の日」なんて、勝手なことを言っている。「じゃぁ、なぜ2月11日が建国記念日に定められたんだ。その理由は?」とさらに聞いたら、10人のうち9人までが「……?」。
 日本では、大東亜戦争終戦以来67年にわたり、国の成立史が学校で教えられなかったことを、改めて考えさせられた。

 建国記念日に定められている2月11日は、神武天皇が橿原神宮において初代天皇に就かれた日である。その日を皇紀元年1月1日(辛酉年(神武天皇元年)1月1日)と定め、戦前の日本は年代表記に皇紀を使用することが多かった。皇紀元年は西暦の紀元前660年である。
 皇紀元年1月1日を西暦2月11日に定めたのは、文部省天文局が算出し、暦学者の塚本明毅が審査して決定したものである。その具体的な計算方法は明らかにされていないが、当時の説明では「干支に相より簡法相立て」としている。

 「戦後レジュ−ウムからの脱却」を掲げる安倍内閣のもと、国の成立にかかわる物語も教育の中で語られるべきだろうと思う。
 とあるテレビ番組で、売り出し中の若手哲学者(と紹介されていたが、ホントのところは知らない)古市憲寿(としのり)なる若者が、「日本の国の建国記念日は、戦後の出発点の日…終戦の日でしょう」とか言っていた。
 民族の歴史に物語の入り込む余地はないと考えるのも、日本の戦前と戦後には連続性はないと考えるのも、それぞれの信条・身上・心情である。ただ、古代の人々の国家成立の思いを秘めた記紀の綴りに、神秘のロマンを感じ、民族の歴史を紡ぎ上げることも、歴史は国家の履歴書であることを思えば、有義の営みであるといえるのではないか。
 いささか情宜的に過ぎる言い回しであったかもしれないが、アメリカ(1776年大陸会議でアメリカ独立宣言に署名がされた日)や中共(1949年、毛沢東が天安門で建国宣言をした日)などのように、成立が近年で事実関係が明確な国(世界のほとんどの国が1800年以降に建国されている)は建国記念日を明確に示しうるけれども、古い歴史を持つ国々…例えばイギリスは伝統的に聖ジョージの日(St. George's Day、4月23日)が宗教的なナショナルデーだが法定祝日ではないし、スペインも建国の日は定かではない。大韓民国は日本と同じように建国神話による建国記念日を定めていて、紀元前2333年、建国神話において檀君が古朝鮮王国(檀君朝鮮)を建国したとされる日を開天節(10月3日)としている。(また、8月15日を光復節と呼んで、1945年ポツダム宣言により日本からの独立を祝う日としている。)
 日本は、「記紀」を国史として、古代より継承されてきた伝統を受け継いでいる。連綿として継続されてきた万世一系の天皇を戴き、国家として継続してきた歴史を持っている。世界に類を見ない、近世に成立した世界のほとんどの国々から尊敬と羨望をもって称賛される歴史である。
 古代の建国物語が、模糊とした神話をもって語られることは不思議でも何でもない。ローマ帝国の人々も、神と人間が混在する建国神話を戴き、自分たちを狼に育てられたロムレスの民であると信じていた。建国神話を持つ民族は、悠久の古(いにしえ)より続く、長く豊かな歴史を持つ民族なのである。

 日本は「建国記念日」を、改めて見つめ直すときを迎えている。古代神話や日本の国体についての論議は、戦後、GHQによって禁止されてきた。大東亜戦争という呼称も、東京裁判や原爆投下や本土大空襲を批判することも、そして神話時代から続く日本の国体を称賛することも、敗戦からサンフランシスコ講和条約の締結によって日本が再び独立するまでの7年間、一切許されなかった。日本は、自国の歴史を奪われてきたのである。そして、その時代に勢力を得た、戦前の日本を否定する勢力は、その後の日本にもはびこり、戦後日本に大きな過誤・誤謬をもたらしてきた。
 しかし、戦後67年を経て、ようやく日本にも国の歴史を取り戻し、民族の誇りを求め、自らの力で国際社会に踏み出そうという機運が芽生えてきたように思われる。最近の中共の覇権主義丸出しの力によるごり押し、韓国の狂信的な反日を受けて、日本にも民族の独立心がよみがえってきたというところか。
 テレビの討論番組を見ても、かつては保守的な言動をすることがはばかられるような機運があったけれど、昨今は左翼的言動がこっけいに見えるような様相だ。新聞の反日的扇動記事は、今や批判の対象になっている。
 これらの状況からも、日本の歴史を取り戻す主張が、しっかりと語られる時期が来ているといえる。そのための切り口として、「建国記念日」の位置づけを明らかにすることが、大きな第一歩となるだろう。

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