自衛隊のイラク派遣延長に思う                  2004.12.02【政治93】


 イラクに派遣している自衛隊の駐留が、12月14日に期限を迎える。小泉首相は再選なったブッシュ米大統領に駐留延長を約し、これを受けた形で政府・与党の承認も大方の合意が形成されている。スペインやフィリピンはすでに撤兵し、オランダ・スゥエーデンなども、来春には撤兵することを表明している。その中で、戦闘を認められない自衛隊であるが、撤退の意思はない。
 今の状況の中で、自衛隊が撤退することは無理な相談である。戦後の安全保障のみならず、現時点での政治・経済の端々までをアメリカと軌を一にする日本にとって、独自判断での撤退はありえない。ここは、イギリスとともにアメリカ主義を支える両輪としての役割を、完全に果たすことこそ、世界の中でその存在を認められる方策である。
 「現憲法の規定の元で、自衛隊を派遣することには、重大な疑義がある」とする派遣反対の主張には、世界への展望と国家としての戦略が欠如していると思う。世界は今、アメリカを中心とする資本主義的自由主義と、その専横を阻止しようとする勢力とがぶつかり合っている。もし日本に、フランスやドイツのように、アメリカを否定しないまでもヨーロッパ共同体のような寄るべき基盤とするものがあるのならば、アメリカを牽制し、時には利害を衝突させて自分たちの勢力伸張と利益を図ればよい。しかし、日本には、いま、アメリカから離れて独自路線を歩むことがプラスになる材料は何もないのである。
 むしろ、アジアには、中国とインドという飛躍的な成長が予想される大国があり、これらの国と友好関係を保ちつつ、アジアでの地位を保とうと思えば、アメリカとの連携は欠くことはできない。間違ってはならないのは、アメリカと手を切った日本など何の魅力も存在意義もないのであって、アメリカとのパートナーシップを太く保ちつつ、言うべきことは言い、日本としてやるべきことはやるというのがあるべき姿である。
 それでも、現憲法の下では違法である…というのならば、憲法をこそ変える努力をするべきだろう。憲法第9条の第2項、戦力不保持の項目を改正して自衛権の保持を明記し、わが国の安全と世界の平和を守るためにある自衛隊の存在意義を明確にして、国家の安全保障に必要な法的枠組みを確立しなければならない。
 交戦権を持たない国を、世界が信頼するわけがない。国連がそのよい見本であって、アフガニスタンやイラクの復興に乗り出してきたところ、自爆テロで事務所を吹っ飛ばされたら、「職員の安全が確保できない」などと言って、すぐに逃げ出してしまった。秩序を回復し安全や平和を実現するには破壊や侵略を許さない力が必要であり、世界は結局のところは非道や無法がまかり通るところであって、弱肉強食が現実である。世界は日本人の常識の外にあることを、しっかりと見つめるべきであろう。


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