【94】 ライブドア VS フシジサンケイグループ                2005.3.6
    −今日的なマスメディアの体制構築の機会−


 ライブドア(堀江貴文社長)とフジテレビジョンとのニッポン放送株取得合戦が白熱化している。ライブドアはニッポン放送株の47%を取得したといわれる(5日現在)が、これに対してニッポン放送は発行総数を2倍以上にしてライブドアの持ち株比率を下げ、その支配を不可能にしようとしている。ニッポン放送のこの行為は商法・証券取引法違反だと、ライブドア側は新株予約権発行を差し止めるための仮処分を東京地裁に申請し、来週には出されるであろうその判決が注目されている。
 ニッポン放送が大量の増資を決めたことは、ライブドアの支配を阻止することが目的であることは明らかである。商法は支配権の維持や争奪目的の新株発行を禁じており、株主は発行差し止めの仮処分を申請できるとしている。現時点で同放送の筆頭株主であるライブドアは「新株予約権の発行はフジのニッポン放送に対する支配権を維持することを目的とするものだ」「ニッポン放送の株価下落を意図していたことも否定できない」などと訴えたわけだが、この主張には正当性がある。
 これに対し、ニッポン放送は「ライブドアの傘下に入ればフジサンケイグループから離脱し、企業価値に甚大な影響を与える。企業価値の維持へ、必要不可欠な判断だ」(亀渕昭信社長)という。今後、フジグループであり続けることが企業価値を保ち、株主にとっても有利になるという主張だ。


 判決については7対3でフジテレビ側(ニッポン放送)に有利であるといわれているが、果たしてそうだろうか。「フジサンケイグループに残ることがニッポン放送の価値を維持し続けることだ」という主張は、既存の価値を維持するだけのことであって、将来に築いていく新たな価値への評価が何もない。ニッポン放送は、フジサンケイグループを離脱すれば、何らの企業努力もせず、新たな価値を見出す可能性もないと宣言するのだろうか。
 また、株の取得が争われているときに、大量の増資を行って企業の買取を阻止するような、こんなやり方が認められるならば、日本の株式市場は経済原理の厳しさが働かない、魅力の乏しいものになってしまう。責められなければならないのは、ライブドアの攻勢を許したフジサンケイ側の甘さであって、資本の論理に則ってメディア獲得に乗り出したライブドアを「金さえあればなんでもできるのか」などといった言葉で批判するのは、情緒的に過ぎる的外れな世迷いごとである。
 フジサンケイ7対3で有利というのは、経済界・政界などの、新しい秩序創作に戸惑う、いわば既存勢力がさまざまに言うコメントが、7対3でフジテレビ寄りであるということに過ぎない。
 例えば、日経連の奥田会長は、「堀江さんの『金さえあれば何でもできる』という考えは、日本社会で1番まずい話なので、道徳的におかしいと政財界から非難が出た。堀江さんも甘んじて受けないといけない」と述べている(2/24 朝日新聞)。このコメントも、奥田氏がご自身でも言っているように、日本社会でしか通用しない話である。こんな発想で、外人買いが50%に迫ろうという日本の株式市場を外国企業の攻勢から守り、世界市場へ進出していく日本経済の舵取りができるのだろうか。
 批判されるべきは、既得権益を守ることにしか眼中にない旧体制のマスメディアであって、新しい企業が参入を試みると、みなで協力して排除し、大手数社が今日まで既得権を守ってきたという、この体制であろう。今やインターネットの世界では、「○日の国会」と検索すれば、質疑の様子がメディアプレーヤーで再現されるのである。
 既存のマスメディアは、各界の広報の発表をそのまま書くだけや、下請けの製作会社に丸投げで作らせた番組をつなぐことが仕事の、築き上げたネットワーク…既得権体制の上にあぐらをかくだけの存在であってはならない。日進月歩のメディアの世界に正対し、グローバーリズムの趨勢に取り残されない努力を行うことの重要性を、今回のライブドア問題で真摯に学ばなければならない。


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