【97】 郵政民営化法案は 全ての改革に優先する基本!         2005.08.07


 郵政民営化法案が、8日の参院本会議で採決される。テレビや新聞は、法案に反対または棄権する議員は「否決ライン」を上回る可能性が高く、法案否決が濃厚な情勢となったと報じている。法案否決の場合、小泉首相はその政治信念に鑑みて、衆院解散・総選挙に踏み切ることだろう。
 まだ可決成立への可能性は残されているから、否決を前提としては考えたくないのだが、もし否決不成立・廃案となったら、「郵政民営化」はこの先、長期に渡って断行されることはないだろう。郵政省・公社・郵便局と政界の郵政族の思惑通りの結果ということである。
 今国会で、郵政民営化法案に反対を唱えている人たちは、この国の将来と自己の政治信条に照らして反対を主張しているのだろうか。この法案を成立させないことが、国民の真の幸せにつながると思っているのだろうか。


 行財政改革は、日本の喫緊の課題である。実現するためには、今までのぬるま湯体質に大ナタを振るい、政管財界の癒着を断ち切って、既得権益を粉砕していかねばならない。郵政法案だけでもこれほどの郵政族の抵抗である、改革を推進していくには不退転の決意を持つことが必要だろうし、何よりも自らが既製の利権構造にまみれていないことが不可欠である。
 小泉首相以外に、この改革を提唱してきた人はいなかったし、ここで頓挫すれば、この改革はふたたび断行されることはないであろう。
 改革は、すぐに100%の結果が出るものではない。また、誰にも満足のいく結果などもない。封建時代や独裁国家ならば、お殿様や国家主席の一言で大改革が行われるが、その改革も大衆の幸福に繋がる保障はない。この日本は民主国家だから、多数の意見を聞き、手順を踏んで物事を進めなければならない。実現するためには多くの妥協も必要であり、修正や方向調整を余儀なくされる。本来のものではないから反対だ…と言っていたら、民主国家では重要な改革は行われなくなってしまう。多少の修正はなされても、改革を断行するかどうかなのである。


 以下に、「郵政民営化法案」を成立賛成の根拠を述べる。
 @ 総額360兆円にのぼる郵貯・簡保の資金が政官界の各種資金として運用され、破綻しようとしている国家財政への危機感を薄め、政治や官庁の金銭感覚をゆがめてきたのは、紛れもない事実である。よく言われる「中央省庁や特殊法人が湯水のごとく予算を使い、その供給源が郵貯・簡保の資金である」…このことひとつをとっても、行財政改革の本丸と位置づけられる。
 「民営化せずに資金を国家管理のままにしても、支出を管理すれば解決できる。だから郵政民営化の必要はない」と、反対する多くの議員が言う。『支出を管理すれば』…と言い続けて管理できずに数十年、この国が借金まみれの国になったことを、この人たちはどう責任を取り説明するつもりだろう。仮に、『支出を管理』出来ていくとしても、360兆円を民間が管理し、活力ある日本経済のために活用していくことが、より良い方法であることは誰にでも解ることだ。
 A 「民営化すれば、採算の合わない過疎地の郵便局は閉鎖に追い込まれる」というのも、根強い反対理由だが、解決策は簡単なことで、設置義務を設けて、当面は現状を維持していく方法を講じればよい。「採算の合わない過疎地の郵便局」は、現在でも赤字なのだろう。それを現在は維持しているのだから、その方法を継承していけばよいことだ。竹中担当大臣も、その旨を説明している。
 ただ将来は、時代や社会に要請されていない赤字郵便局は、過疎地であっても、大都会であっても、淘汰されていくべきことは社会の必然である。そのときには、地域の振興策が工夫されて、郵便局なんて目ではないサービスシステムが構築されていることだろう。
 B 小泉首相の政治手法に反発してや、郵政族としての既得利権や選挙のメリットを失う恐れから、法案に反対する者も多い。聞こえてくる反対意見の全ては、反対のための反対である。
 昨日になって反対を表明した中曽根弘文参院議員は「論議も説明も不足している法案に反対する」と述べている。今まで態度を表明しないというのも政治家にあらざる姑息な姿勢であるが、小泉首相がスタートした4年前から提唱して論議し、委員会・国会審議を経てきたこの議案のどこが、これまでの諸法案に比して論議も説明も不足なのか。
 @Aで述べてきたように、この国を改革するために必要な方策であることは明らかなのに、「支出を締めればよい」とか「郵便局が半減する」など、延々と半熟な論理の反対論が述べられてきたために堂々巡りだったのだ。反対する者はどこまでも反対するし、誰もが納得する説明などあろうはずがない。国会議員が、この期に及んで何を言ってるんだというところである(と、あまりのわからず屋に対して、ちょっと八つ当たり気味だ)。要は、「郵政民営化」はやらねばならないことか、やる必要はないことか…を問いたい。
 C 民営化によって得られるメリットは大きい。
  ●「360兆円の市中流出」…日本経済の活性化に大きく寄与する。
  ●「政官の巨大な無駄遣いをなくす」…国庫管理に厳しさが問われる。天下りを繰り返
     して、4億円もの余剰所得を手にする役人もそれを受け入れる特殊法人も存在が
     許されなくなるだろう。もちろん、国民の監視が必要だけれど…。
  ●「小さな政府の実現」…市場原理、自己責任
  ●「郵政利権の根絶」…連座制で失職した元近畿郵政局長の自民党(橋本派)高祖憲治
     しの選挙は、郵政族の利権を象徴している。組織ぐるみで悪質。幹部が後援者集
     めのノルマを特定局長に課し、選挙違反で挙げられた時の想定問答集を用意し、
     警察の事情聴取を拒否するノウハウまで徹底させていた。郵政族のドン野中氏な
     きあとだが、郵便保険の損保進出など、郵政族の暗躍は続いている。
  ●「職員の綱紀粛正、労働意欲の向上」…往時、「全逓」と呼ばれた郵政職員の労働組
     合は、倒産、馘首のない労働組合として、過激な闘争をほしいままにしていた。
     窓口に来たお客さんにも、「切手の貼る位置が違う」とか「郵便物の束ね方が悪
     い」などと、わざと不快感を与えることを闘争手段としていた横着さであった。
     公社から民営化に移行しようとしている現在、接客態度は大幅に改善された。こ
     のことを見ても、民営化の利点がわかる。
 D健全な今こそ、改革を行わなければならない。国鉄民営化は、国家の必然として国民挙げての賛成であった。国鉄は大赤字をかかえていて、そのままでは借金が天文学的数字になることを、みんなが心配したからである。民営化の結果、JR各社とも健闘していることは承知の通りである。
 郵政公社も、ジリ貧の現状から見て、親方日の丸の経営ではいずれ不健全な公社となるのが目に見えている。健全な今こそ、いかようにも設計図が描けるのだから、今この時期に改革を断行して、世界に冠たる企業になるべきであろう。赤字続きだった政府郵便事業が、日本郵政公社が発足した2003年4月以降、200億円を超える黒字を2年連続で達成して、公社化の実を挙げている。民営化には、さらなる改革と発展が期待されよう。クロネコヤマトの小倉会長は「郵便事業は民営で十分可能」と明言していた。その郵政公社は、竹中担当大臣が指摘し、生田総裁も自ら認めて危惧の念を述べているように、「いずれは厳しい経営状況に陥る」ことが考えられるのだから、みんなに「民営化でもするしかないか」と言われてからよりも、今がその好機なのである。小泉内閣なくして、郵政民営化法案を提出する内閣は、この先…ない。


 緊急提言で、資料の不足も否めないが、郵政民営化は日本の構造改革に必要不可欠であり、全ての改革に優先する基本事項である。


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