【9】津市長選 近藤現市長の三選決まる   ― 3期目の課題 ―   (6/16)


 今日投票の津市長選で、近藤現市長の三選が決まった。近藤氏32000票、対立候補の小倉昌行君は23000票で、堂々の圧勝である。
 この市長選を一言で論評すれば、県都津市に胡坐(あぐら)をかく、津市民の政治オンチがもたらした結果ということだろう。三選を果たした近藤氏は篤実温厚で信頼に足り、市政に向かう姿勢も真摯である。だが、2005年の市町村合併特例法の期限を控えて、地方自治が大きく様変わりしようとしている現在の市政を担当するものとしては、津市を県都として県政の中心にすえて構想を立案しようとする積極性が見られない。岡村市政以来、この30年間、道路一本通らなかった津市を、岡村市政を引き継ぐ近藤氏に、相応の批判票を積み上げるでもなく、無条件に委ねる津市民の太平振りには、あきれを通り越して感動すら覚える。この先、時代の流れに取り残された津市の地盤沈下は免れまい。


 近藤市政の過去2期8年間は、時代の見えないサイエンスシティ建設がメインテーマで、景気の低迷する今、その未来は閉ざされたままである。もちろん現在が悪いから全て悪いというわけではなく、むしろ津市の将来については必要な布石であろうが、次の一手が成り行き任せでいかにも手ぬるい。企業の誘致に際しても県や国との連携に手をこまねいていて、状況の打開に前進の兆しが見られない。IBMなどの世界的企業の誘致を計画しているというが、アメリカの景気が爆発的に良くなるなどといった神風が吹かない限り、近藤市長の任期中に実現の可能性はなかろう。津市の年間予算にも匹敵する425億円の資金を投入して、景気が悪いから仕方がないというのならば、見通しがつくまで近藤氏は今回の市長選で話題になった退職金の受給を凍結するなど、決意を形に表すべきであろう。
 三期目の最大の懸案である市町村合併にも、周辺市町村からそっぽを向かれているのが気がかりだ。「津市には、中核市形成への意欲が見られない」「いずれ周辺から頼みに来ると思っている」「合併問題で、津市の対応は冷たい」という声が、周りの行政担当や議会関係者から聞こえてくる。合併が避けて通れない時代の要請であることを意識できず、県都の首長としての自覚を欠いた、近藤市長の姿勢は問われるところであろう。行き着くところは津市との合併しかないのかも知れないが、周辺市町村の人たちが言う、『金もない、人もいない、将来もない。プライドだけ高い津市には何の魅力もない!』は、われら津市民にとって、愕然とする指摘である。


 三期目に入る近藤市政の課題を挙げてみる。
 先ずは、津市の現状を人口・面積・出荷額から見てみよう。   【三重県立図書館資料】

 


  (万人)

四日市29.0

鈴 鹿 18.8

津  16.4

松 阪12.4 


 (平方Km)

@熊野  260

A松阪 210

B四日市197

C上野 195

D鈴鹿 195

E尾鷲  193

F伊勢  178

G名張 130

H亀山  111

I津   102

以下略

出荷額
 (百億円)

四日市 174

鈴 鹿  152

上 野   39

津     38

ここから浮かぶ課題は、
1、「都市基盤の整備」
 @ 産業構造の改編 

 町の活性化とともに、財政基盤の確立のためにも、確かな製造業を据えた産業構造を確立することが肝要である。県庁を初めとする県の機関や、三重大などの国の機関に頼る構造から…、職業別人口比における公務員の異常に多い状況から…、物を作り出し、販売流通を促し、津発の創造交流が発信できる都市への構造変換を図るときである。

 A 市域面積の拡大
 市域の総面積が県下13市のうち10番目、下から4番目で、松阪・四日市・上野・鈴鹿などに比べると、実に半分の広さしかない。このことは、工業・商業の隆盛を図り、人口を増やして市の活性化を達成するには致命的な問題である。 
 B 市町村合併
 津市が、産業を振興し、人口の増加を図るためには、市域面積の拡大、すなわち近隣市町村との合併は緊急の課題である。しかし、現在、津市が市町村合併を行うとき、第一の相手であろう安芸郡の各町村との関係は、こと合併に関して必ずしも友好とはいえない。少なくとも、安芸郡内の町村に津市と合併することが必然だという観念がない…というのが不思議である。
 市町村合併の問題は、県都津市として避けて通ることのできない問題であり、合併特例法の期限は2005年と、期限のある話である。津市は、「合併問題検討会」をフル回転して、この問題に遅れをとらないよう具体的な行動に入らなくてはならない。合併のメリット・デメリットを検討し、正しいリーダーシップと配慮を持って、近隣の市町村に提案を行なうことが必要である。近隣の市町村とその人々の疑念や不信感を払拭する努力をすべきであって、資料・情報を正しく伝えて信頼を得、胸襟を開いて呼びかけを行うことは、合併の中心となるべきものの責務であろう。

2、「生活環境の整備」
 @ 津港周辺部の整備

 中部国際空港への三重県側のアクセス港として、国の予算に港湾建設費用の一部が認められた。中部国際空港への海上アクセスの発着点として、津市の新港建設が新規事業に採択されたのである。04年度の完成を目指し、今後三年間で約十九億円をかけ、津市中心部の贄(にえ)崎地区の海岸にターミナルや桟橋などを整備する。
 利用者は果たして確保できるのか、また採算の問題など、津港アクセスの道はむしろこれからこそが厳しい。
 当面の津市の課題として、津港周辺の整備を進め、人々が集まる地域を造らねばならない。周辺には駐車場を初め新しい仕事を創ることができるが、従事する人たちへのレクチャーをしっかりして、人々が気持ち良く集まり利用することができる地域作りを実行することだ。利便性をPRして、たくさんの人たちに利用してもらうよう、経営努力が大切である。海上アクセス便や遊覧船などを中心に、観光スポットとして売り出すなどの新機軸も工夫することが必要だろう。
 ゆめゆめ第三セクターなどといったお定まりの転落コースにだけには陥らないよう、今から官民の知恵を絞り、責任体制を確立していくことが肝要である。世界に羽ばたく海上アクセスが、世界に向かって恥をかくことにならないよう願いたい。
 A 海岸道路の建設
 海上アクセス港「津港」へたくさんの車を呼ばなくてはならない近未来を見越して、伊倉津から白塚まで続く堤防を利用しての、海岸道路の建設を提案したい。いずれ中勢バイパスが完成するということになったが、松阪から鈴鹿へ抜ける車は市内を走らなくなるだろうけれど、津市内に入る車の、市部への出入り口で生じる渋滞の緩和にはつながらない。津海岸道路の建設を本格的に検討することが急務であろう。
3.「学術・文化環境の整備」
 @ 独自の教育プログラムを

 学力低下が懸念される「新指導要領」が、いよいよこの4月から全国の小中学校で実施された。地方分権法案の成立を受け、地方の時代といわれる現在、地方自治体は主体性をもって地域の特性を生かした独自の教育プログラムを作成して、この問題に取り組む必要があることは、かねてから提言してきたとおりであるが、遠山文科相も、各教育委員会と学校はそれぞれの工夫で教育レベルを維持する努力をなすようとの通達を発している。
 愛知県犬山市などですでにその取り組みが始まっているように、学習事項を整理して独自の教育プログラムを組み上げ、研究の体制を整えて、教育先進市「津」を掲げ、学力低下必至の現状に敢然と立つ姿勢を示すことが必要である。
 新指導要領が実施された結果、世の児童生徒や父兄に、『勉強は、「学習塾」で習うもの』と言われ、塾通いの児童生徒が増えたならば、公教育は…文部省と教育委員会そして学校は、教育の場における敗北宣言を余儀なくされ、もはやどこにも存在意義はない。そのような事態を招かないように、今、公教育がなさねばならないことは何か、その真価を賭して考えねばならない命題である。

 A 祭り、銘菓、タウン誌、市民講座 … 市民文化を大切に
 文化の継承と新しい価値観の創造は、地域の民位を維持し向上させるために、必要不可欠な事項である。
 ために、地域のオリジナリティを掘り下げ、津市の歴史的民俗的伝承を表現した「祭り」を実現することを考えたい。津祭りのソーラン踊りは、参加者も年々増えて隆盛を見せていることを評価するものの、地域のオリジナリティを掘り下げ、津市の歴史的民俗的伝承を表現した催しとは言いがたい。地域の伝承を基底に据えた津の祭りのあり方を、ぜひ考えてみたい。
 津市を代表する「銘菓」はあるのだろうか。市民の自発的な津市を発信する「タウン誌」はどうだろう。その充実を図り、市民が幅広く参加できる「市民講座」を実現して、地域の発展向上を実現することに努めたい。
 B 高田本山、津城址、皆楽公園 の観光整備

 高田本山は貴重な歴史的文化的遺産であり、人々の信仰と親しみを集めていることは、多くの事跡とお七夜の賑わいを見ても理解されるところである。津城址、皆楽公園とともに、観光地としての開発を行い、アクセス港としての津港や御殿場海岸とともに、観光客の誘致を図りたい。
 4.「行政の目的と責任」
 行政の目的は、住民へのサービスである。そのためには、市職員が、公務員としての本義をよく理解し、誇りを持って公職を全うすることである。
 行政の責任は、住民の満足を得ることである。住民の満足とは、市からのサービスに満足するといった短絡的なものでなく、その市に住むことを喜びとする津市を実現すること、津市の市民であることを誇りとする住民意識を実現することである。

 人を育てることに、意を用いる津市でありたい。現在と将来の津市を託する人材を、プログラムと機関を整備して育て上げることである。
 同時に、津市が県都として政治的立場を強化するために、津市から国会議員を選出することも、政治オンチの津市が手がけねばならない課題であろう。人材を育てることのできない津市の足引き体質は、教育プログラムの改編によって改めねばならない。人材を選出することのできない津市民の意識レベルは、津市政に古参議員のボス支配を許し、利権構造を温存する旧体制のままである。市民の意識の近代化と、市政への参加を促して、レベルアップを図らねばなるまい。


 産業・生活・教育文化にわたって、高い理想を持ち、市民とともにそれらを着実に形にする行政を実現してほしいものである。






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