【4】「日本とは何か」(堺屋太一 講談社文庫 331P. \570 (10.5)

 明治から太平洋戦争までは軍事的成功を収めたと思い、今は経済的成功を遂げたと認識している日本、しかし、外国人から見ればやはり不可解な日本と日本人。国際協調を進めるために、日本はどう変わるべきか。その観点から歴史をさかのぼって日本の由来と現実を見つめ、日本の姿を描こうと試みる1冊である。1991年に上梓されたものだが、今日の日本の現状を、言いえて妙である。
 「ヨーロッバ・キリスト教文化圏」「中東イスラム文化圏」「インド・ヒンズー文化圏」「東亜中華文化圏」のいずれとも異なり、「第五の文化圏」と定義される日本はどう生きるべきか。少し長いが、あとがきの一節を要約して、一応の結論とする。
 『日本を世界に紹介する場合、「美しい自然と幽玄の文化日本」そして「技術と勤勉さの豊かな日本」であろう。これら、現実の日本政府の政策や日本企業の活動や日本人観光客の言動とはかけ離れた「美し過ざる日本」の紹介に、外国人は疑いと不信の目を向けている。あたかもかつての社会主義国が、「人民の幸福」を訴えれば訴えるほど、秘められた統制を感じるのと同じである。
 日本が「特殊」であることは、恥でも罪でもない。われわれは日本の特殊性を主張するのをためらう必要はない。……。今日の日本は、経済そのものにおいても、全体として見れば世界に威張れるほどの効率と豊かさには達していない。歴史の長い目で見れば、現在の日本の繁栄も、積み重ねられた日本文化の一瞬の淡い輝き程度であろう。
 われわれは、それをもたらした日本の由来を見きわめながら、この囲の未来を考える必要がある。小成に狂喜して傲慢になるほど危険なことはないからである。』





 読書トップページへ