【7】「ゴルファーを笑え!」 (新潮文庫 夏坂 健 346P. )(10.19)


 軽妙洒脱な語り口と、豊富な資料を基に奥深いゴルフへの造詣で知られる、夏坂 健さんのゴルフエッセイ集である。自らもハンディ8のシングルプレーヤーであって、ゴルフと聞くとバッグを担いで世界中のどこへでも飛んでいく。スコットランドやアイルランドを車で走り、素晴らしいリンクスコースをプレーしながらその地の大学や博物館・新聞社などに立ち寄り、さまざまなゴルフに関する発掘を行なって、その資料は世界のゴルフ関係者から大きな評価を得ている。この本の一節を紹介しよう。
 『最古のゴルフに関する記録は、1457年、スコットランド議会が出した「ゴルフ禁止令」。しかし、昔、中国ではゴルフのことを「捶丸(ツイワン)」と呼んだが、943年に刊行された南唐の史書の中に、この文字とクラブを持って球を打ち地孔に沈めている絵がある。ゴルフのルーツは中国だったのだ』
 『史上初めてストロークプレーが行われた記録は、1759年のセントアンドリュースでの競技だが、5年後に初めて90台のスコアが出現、それから80台が出るまでに何と91年を要している。その3年後プロによって70台が達成されたが、60台が出るまでには更に48年がかかった。90台から60代に至るまでの道のりに142年というとてつもない歳月が流れているのである。』
 と、ゴルフ史を紐解き、更に彼は、『この世は楽天家と悲観論者に二分されながらここまで来たが、悲観論者たちによって物事が創造・誕生したためしはない。ゴルフの世界でも、功成り名を遂げた者は可能性をあきらめない者と相場は決まっている。ゴルフを進歩させたのは、人間の可能性を信じて挑戦の手をゆるめなかったネアカ人間たちだった。悲観論者とスライス打ちに未来はない』と断じる。
 ゴルフには3つの楽しみがあるという。プレーするゴルフ、観るゴルフ、そして、読むゴルフである。夏坂氏のゴルフエッセイに接して、読むゴルフの楽しさを教えられた。



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