【9】「亡国の徒に問う」 (石原慎太郎 文芸春秋社)       (10.31)

 石原慎太郎が、議員を辞する前後数年間の、「文芸春秋・諸君・正論・発言者」等に寄稿した論考を集めたものである。
 「日本は溶けていく。…、太平洋戦争の敗戦を恥辱と捉えた昭和一桁生まれ辺りまでがかろうじてかつての日本人の原形を備えていて、その後に登場した国半は大方、価値の基軸が失われた後の、教育を含めて総じて戦後民主主義的発想と情操の中で育ってきた人種…。価値の機軸を問い直し取り返す時期」と始まって、「細川氏の侵略戦争発言は首相の犯罪」と断じ、天才科学者ホーキング博士の言葉『どんな星でも文明が進みすぎると自滅する』をひいて警鐘を鳴らし、だから基軸を取り戻せと主張する。
 石原慎太郎という男は、最近という訳でなく、以前から過激な男だということが判った。でも、大変な人気者である。小泉首相も構造改革・憲法改定を掲げて歯切れのよさで人気を得ている。物言う論者たちは反体制的進歩派が圧倒的だけれども、物言わぬ大衆は、案外、体制的強硬派なのだ!




【10】「誰が歴史を糺すのか」 
(井沢元彦 祥文社)        (11.6)

 井沢元彦が、梅原 猛・猪瀬直樹・大石慎新三郎・渡辺昇一・山折哲雄らと日本の諸問題について行なった対談を収録したもの。井沢が「私は梅原日本哲学の自称後継者ですから」と言うのを、梅原に「私とは多少違うところもありますが」とやんわりいなされたり、(井沢)「アミニズムといった霊魂的宗教は劣っているものとして滅ぼされたのですね」、(山折)「それは錯覚であって、実際には人間の深層部分に流れつづけています」と、井沢の底は浅い。石原行革相のブレーンとしてテレビで顔を見る猪瀬は、「日本の横並びのぬるま湯的平等主義から、太平洋戦争が勃発し、特殊法人が生まれた」と言う。




【11】「誰が日本を救うのか」 
(日経新聞論説副主幹 田勢康弘 新潮文庫)(11.8)

 扶桑社の歴史教科諸問題から、日本の姿勢といった問題が気になって、【9 亡国の徒に問う・10 誰が歴史を糺すのか・11 誰が日本を救うのか】と一連の本を読んできた。とともに、小泉首相の靖国参拝に関して、「東京裁判 上・下」(毎日新聞社)も同時進行で読んでいるが、膨大な本でなかなか進まない。
 この「誰が日本を救うのか」は、「指導者論」である。『日本人は外国人からは解からないことが多い。何も喋らない人が珍重される』。集団主義だったから、自分の意見を持たないあいまいな人間がよかったわけである。『うまくいけば ばれずにすむ…人間の行動として、これほど下劣なことはない。政治に言葉を取り戻せ。明確な国家観を持て。我々が立派に生きる努力をしなければ、結局、政治も国も変わらない』と言い、責任の所在のはっきりしないあいまいさが、この国を窮地に追い込んだと厳しく指弾する。




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