【読書168】
 日本は勝つ  石原慎太郎・田原総一郎 対論集  文芸春秋社

2011.07.25

   

 田原総一郎ってもう終わっているけれど、この対論集は2000年に出版されたもの。民主党政権はまだ誕生していなかった。 


 1989年ベルリンの壁崩壊、1991年ゴルバチョフの辞任によりソ連邦解体、その後の世界は冷戦構造が消滅し、アメリカの支配(パスク・アメリカーナ、アメリカンスタンダード)が続いてきた。
 石原慎太郎は安保を見直してアメリカ支配から脱却し、自力で国を守る戦力を持つべきだと言い、田原総一郎はアメリカの傘下にとどまりつつ自衛の戦力にとどめ、近隣融和の道を歩めと言う。
 が、二人とも、戦後日本の民主主義には国家の存在が排除されていたから、憲法を改正し、教育を整え、国・国民の自信と誇りを回復させることが肝要だと説く。
 本質的な自立のないものには自己決定はできない。では、誰が日本の自主性・自立性を奪ったのか。それはアメリカでなく、日本人自身である。
 国家の自立に何が必要なのか。「戦略」である。米中新冷戦構造下における日本の戦略とは……。


 今の日本の政治の低迷は、自己決定が出来る政治家がいないことに起因する。竹下以後、日本の総理は会社の専務級の人物ばかり…。(現在は係長ぐらいだ。)
 戦後日本で独自の戦略を持った政治家田中角栄の失脚は、アメリカ(虎)の尻尾を踏んだことにあった。インドネシア、サウジアラビアとの三国で石油の共同開発を計画し、中南米のウランを求めて原子力エネルギーを開発しようとした角栄は、アメリカ石油資本(メジャー=アメリカの国益)の逆鱗に触れたのである。
 ある日、ロッキード社の内部資料がアメリカ証券取引委員会に誤配で届けられる。ここから、ロッキード社より田中角栄に渡ったという5億円の裏金疑惑が発生するのだが、捜査はロッキード社コーチャン副会長の免責証言という異例な形で立件されていく。そして、総理大臣が外為法違反容疑で逮捕されるに至るのである。
 アメリカによる日本の支配というのは、こんな一面も持っている。GHQの日本占領から、憲法制定、安保条約、年次教書、定期会談などなど、表向きの手かせ足かせも多くあるが、アメリカの意向に逆らったら力技(ちからわざ)を用いてつぶすというのが、これまでの日米関係だった。
 本当の意味の日本の独立とは、こうした目に見えない圧力や攻撃に対しても、戦力・自衛力を持つことなのである。


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