【74】 昭ちゃんの三重県オープン予選                 2008.06.19


 午後6時を過ぎた。まだ、電話のベルが鳴らない。


 今日は「三重県オープン」の予選が行われていて、昭ちゃんはメンバーである青山高原GCでのA予選に出場している。3日前に付き合った練習ラウンドで「92」を叩き、すっかり意気消沈していたけれど、「90切ってきたらコーヒーおごるからな」と慰めて送り出したのである。
 『電話が鳴らないということは、90以上叩いてるな』と思いつつ、さて今日の夕食は何にするかと考えながら車を走らせていたら、松阪へ着いてしまった。「草鹿野寿司」の暖簾をくぐり、カウンターに腰掛けて「一式…」といつものものを頼んだところへ、電話が入った。


 「コーヒー、どうですか」。成績のことを言わない。
 「今、どちらですか」と続けるので、「松坂や」と言うと、
 「何ぁンだ、コーヒーおごってもらおうと思ったのに」と嬉しそうな声を出した。
 「えっ、90を切ったのか?」
 「ホームコースですよ、その気になれば90なんて叩きませんよ」
 「へぇ〜、いくつやったンや?」と聞くと、
 「『
79』です」と言う。


 「えっ…、いくつ…?」と聞き返す僕。
 「79…、これで、章さんを越えましたね」と、昭ちゃんは誇らしげだ。
 僕が10年ほど前に、同じ青山高原GCで行われた三重県オープンに出場したとき「82」だったと以前に話したので、そのスコアを上回ったことを言っているのだ。


 「予選通過ラインは、いくつだったンだ」とさらに聞くと、
 「80。予選通過ですわ、ヘッヘッへ〜」と笑った。
 おいおい、僕に勝った…ということよりも、予選を通過しました…のほうが、先だろうが。話の順番が違っていないか。昭ちゃんのゴルフの最大の目標は、いつも本人も言っているように、「打倒、章くん!」なのだということが、これからも判ろうというものである(笑)。
 それにしても、昭ちゃん、よくやった。研修会のベストスコアでもフルバクティからは80を切ったことはなかったと言っていたのだから、緊張する試合の本番でベストスコアを更新して予選突破を果たしたわけだ。


 「本選の練習ラウンドへお付き合いをお願いします。8月7・8日、桑名CCですから、7月中ごろと末と、8月のはじめと、計3回ぐらい…」と、やる気になっている。
 本選が行われる桑名CCは、昭和36年の開場という歴史を誇り、井上誠一の設計になる名門コースだ。距離もヤーテージ通りきっちりあるので、慣れないものにはずいぶんタフに感じる。今日の電話でも「僕のことはこれから、トップアマの昭ちゃんと呼んでください」と豪語していた昭ちゃんとの、三重県オープン予選通過後の第1戦としてふさわしい舞台だが、妙に自信をつけた昭ちゃんを、最早や侮(あなど)るわけにはいかない。またまた、練習しなきゃならないなぁ。


 「よくやった、あめでとう」と、心からの祝福を送る僕のエールに
 「ありがとうございます。ホントにありがとうございました」と繰り返していたが、そのあとで、
 「本選(2日間)で2日目の決勝に残れば、これで章さんを完全に越えますかね」とまだ言っている。僕は、本選の決勝まで進んだことはないからなぁ。
 やっぱりこの男、桑名CCで、もう一度叩き潰しておかなくてはならない(笑)。


  
ゴルフのページ トップへ