【25】 スパルタ教育  - 当世、アメリカの子育て -  2011.02.20


 米エール大学の中国系米国人教授、エイミー・チュアさん(48)が1月、英才教育で2人の娘を育てた体験記「タイガー・マザーの闘争賛歌」を出版し、論議を呼んでいる。チュア氏は、フィリピンから米国に移住した中国系の両親を持つ2世米国人である。
 本の中で、チュアさんは子供の自尊心を重視する西洋式の教育に対し、子供を「ゴミ」と呼んで叱咤激励する「中国式」の優越性を説くが、あまりの猛烈ママぶりに批判が噴出、大論争となっているという。著書では、自身が実践した「べからず」を列挙し、友人宅での外泊やテレビ、ゲーム、課外活動などを禁じ、最高の成績しか許さない方針を紹介している。
 長女ソフィアさんが算数で2位になると、ドリルで2000問を解かせて首位を奪還。ソフィアさんにはピアノ、次女ルイーザさんにはバイオリンの練習を何時間も強制し、ルイーザさんから渡された誕生日のお祝いカードがおざなりだったため、突き返したという。
 この本の抜粋を掲載したウォール・ストリート・ジャーナル紙の電子版には「モンスターだ」「自殺者が増える」などの書き込みが8000件近く殺到しているらしいが、チュアさんはABCテレビで「著書は回顧録、子育て本ではない。真意が誤解されている。」と述べている。


 近頃は、ほめて伸ばす教育とか、叱ったり体罰は厳禁なんて指導がはやっている。教育評論家なんかが出てきて、「愛情いっぱいに…」とか、耳障りのいい無責任なことを言っている。ホントにそうかと、僕は疑っている。有り体に言えば、そんなのは世間に迎合している、彼らの処世が言わせている虚言だと思う。ほめて育てる教育の結果が、現在なのだ!
 悪いことは悪い、悪いことをしたものは相応の罰を受ける、人間は差別を受けることはないが能力(結果)においては厳然たる差別がある…と教えることこそ、子どもにとって大切な真実ではないのか。そう教えられてきた時代のほうが、日本は精神的にも豊かであったし、みんながんばってきたのではないか。受験戦争を勝ち抜いてきた世代こそが、日本史上最高の学力を習得していたことも事実である。受験戦争…と言うけれど、当事者だった僕たちは、それほど過酷な毎日だとは全く思ってはいなかった。むしろ、受験があればこそがんばれたのだと思うし、その勉強を楽しむことができたのだとも思う。
 子どもに大人と同等の人権があるとも思えない。人は生まれながらにして人間ではなく、学問して人間になっていくのである。学問の道半ばの子どもに、一人の人間としての資格を認めるなど、子ども自身にとっても迷惑な話だろうと思う。


 コロンビア大学のメイ・ナイ教授(米移民史)によると、「チュアさんの教育は『中国式』ではなく、米国の上・中流家庭にみられる傾向の極端な例だ。」と話している。立派な人間になるためには、普通の人間よりも大きな責任を負い、多くの努力をしなくてはならない。それに耐え、乗り越えてこそ、高い地位と生活が約束されるのだ…と教えるのが本当だと思うのだが!
 (立派な人間、普通の人間…なんて言ったら、それだけで当世教育評論家に叱られるかな?)




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