【教育4】 小学校1・2年生に、理科・社会科の復活を     (2001.07.09)


 平成4年度以来、小学校1・2年生の時間割から、「理科と社会科」の時間がなくなっている。新設された生活科という学科の中で、理科・社会科の学習内容を修得することとされている。
 ここで、文芸春秋の1999年2月号に掲載された、立花 隆氏の論文からの一節を参照いただきたい。

『最近、「大学の物理教育」(日本物理学会発行)という雑誌にのった風間晴子・因際基督教大学準教授の「国際比較から見た日本の『知の営み』の危機」という論文を読んでショックを受けた。
 国際教育到達度評価学会の国際教育調査を紹介したものだが、各国中学一、二年生の理科に対するマインドを調査した結果が示されている。
 それを見ると、日本が、「理科が好きな生徒」の割合でも、「将来、科学を使う仕事をしたいと考えている生徒」の割合でも、世界最低なのである。この他、「理科は生活の中で大切と考える生徒」の割合でも、「理科はやさしいと思う生徒」の割含でも世界最低である。
 見ていて恥しくなってくるとともに、中学一、二年生でこれほどの理科離れが起きているこの国には、未来がないとつくづく思った。これからの社会はますますサイエンスが重要になってくるのに、日本にはその時代をになうべき若者が欠けつつある』
とある。


 さらにこの論文は、科学離れしている日本社会の現状も示しているが、それはまた次の機会に紹介することにするとして、
この状況の中、わが国においては、冒頭にも述べた通り、小学校1・2年生に理科・社会科の教科はなくなり、それに代わるものとして、生きる力を養成するとのキャッチフレーズのもと生活科が創設され、10年になろうとしている。
 学問の基礎として、自然科学の探究の方法を学んだり、人々の生きる姿を調べたりすることは、幼稚園保育の延長としての手法しか確立できない生活科において、指導できることではない。
 加えて見逃すことができないのは、1・2年生から理科・社会科が亡くなってしまったことによって、小学校においては、理科・社会科の全校的な研究への取り組みができなくなってしまっていることである。このままでは、小学校における理科・社会科は、3年生以上の学年でも本格的に研究体制を組むことができなくなるという構造上の破壊を招くこととなり、この教科を専攻する教師の姿勢も危うくなる。

 小学校1・2年生に週2時間程度でも、教科としての理科・社会科を復活させることの必要を考えなくてはならない。同時に、理科・社会科を魅力ある教科として教えることのできる、造詣と技能を持った教師を育てることの重要さを考えてほしい。
 さもなければ、『20世紀に起きた、全方位的な知識の爆発は,21世紀に入ると、さらに進むと考えられる。そのような事態に対して、教育の面からも、一般市民の意識の面からも、情報公開をもとにした社会全体の知的情報の流れのレべルアップの面からも、早急に対応策をとらないと、日本は確実に21世紀に沈没してしまうだろう。』と続く立花氏の警鐘は、杞憂では済まされなくなってしまう。




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