【教育5】 小学校に、理科・社会科の専任教師の配置を   (2001.07.18)


 前回の提言で、科学離れが進むわが国の小学生のことを報告した。ここでは、小学校における理科・社会科の授業について目を向けてみたい。
 今年、中学1年生の生徒に聞いてみたところ、その子は小6の1年間に理科の実験をしたことがないという。この例は特別かも知れないけれど、小学校3〜6年生の理科の教科書に出てくる「実験」のうち、半分以上を実験せずに黒板だけの授業で済ませているという小学校の教師は、それほど珍しいことではない。

 教師に言わせると、実験やその準備の時間がない、子どもに扱わせるのは危険なものが多い、大掛かりな実験で実際の授業で取り扱うのは無理…などさまざまな理由を挙げるが、本当のところは実験を準備から正しい手順で行い目的の結果を導く指導力がないのである。理科を専門とする教師は、「理科ほど面白い教科はない」と言うが、理科の授業を苦手とする教師は意外に多い。
 社会科についても同様の事象が見られ、調べるために商店街や工場・市役所・県庁・警察・消防署に見学に出かけたり、通行人や農家の人に尋ねたりすることを重ねて、社会科学・人文科学に対する目を見開き、追求する態度を身につけさせる訳であるが、これも時間がないの一言で片付けようとする。実際は、教師自身が社会科の指導方法を修得していないのである。
 小学生のころ、朝顔の種をまいて芽が出たときは嬉しかったし、採取した二酸化炭素の中へ入れたろうそくの炎がスーッと消えたときは何でだろうと思った。日食の日には、ガラス片をススで焦がして太陽を見たし、消防署員の訓練を見学して「火の用心」のポスターを作り、近所に貼ったりした。
 今は、小学校の1・2年生には理科・社会科の授業時間すらなく、3年生以上の理科・社会科も、総合学習の名のもとに、自然科学・社会科学の基礎を修得させる学習は行われていない。こんなことで、日本の科学技術の将来に、教育はその責任を果たすことができるのだろうか。
 授業準備の時間がない、教材研究ができない、指導方法を持たない…など現場からは悲鳴に近い理由が並べられるが、それならば小学校にも理科・社会科の専任教師を配置するべきである。理科・社会科は、指導に際して、確かに専門的な知識や技量が要求される。多くを専任教師に委ねるべきであり、またそうすれば担任は他の教科の研究や準備に万全を期すことができる。
教師にとっても、また何よりも子ども達にとって、必要かつ最良の体制であると思う。


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