【114】 小泉首相 本日(8月15日、終戦記念日)靖国神社参拝    2006.08.15
       ― 世界が認める靖国参拝にするために ―


 小泉首相は、今日午前7時41分、靖国神社を参拝した。小雨の降るなか公用車で靖国神社に到着、モーニング姿で「内閣総理大臣 小泉純一郎」と記帳し、本殿に上がって祭壇の前で「一礼」して参拝した。昨年10月の参拝では、大阪高裁が傍論で違憲の判断を示したことからスーツ姿での社頭参拝にとどめていたが、今年6月、首相の靖国参拝をめぐる訴訟で、最高裁が「首相の参拝に法的利益侵害はない」として上告を棄却したことを受け、昇殿参拝したものであろう。現職首相の終戦記念日の参拝は、昭和60年の中曽根康弘元首相以来21年ぶりである。
 首相の終戦記念日の参拝に21年もの歳月を要したということに、日本の国の揺らぎが深刻に感じられる。なぜ、日本の首相が、それほどの長きに渡って靖国神社に参拝できなかったのだろうか。ひとえに、中韓からの反発や抗議がその理由であり、それを当然とする国内の批判勢力が反対を唱えるからである。
 まず、靖国参拝に反対する国内の人々の主張とは、妥当なものなのだろうか。
 靖国神社へは昭和34年から戦争裁判受刑者が次々と合祀され、中韓が反対の理由とするA級戦犯といわれる人たちの御霊は53年に14名が合祀されたが、54年の大平首相、55・56年の鈴木首相の参拝に対しては、何の批判も抗議もない。国内の反対勢力も、この時点ではひと言の異議も唱えてはいない。彼らが反対を叫び出したのは、昭和60年8月15日の中曽根元首相の公式参拝を、中国が批判してからである。
 今日、自民党加藤紘一議員はテレビの前で「A級戦犯の祀られている靖国への参拝は、対アジア外交を崩壊させ…」と媚中派らしい反対論を繰り返していた。彼が靖国反対を唱え出したのは、ここ4年ほどのことであって、A級戦犯合祀後の大平・鈴木首相の参拝に対して、ひと言の反対も行なってはいない。
 すなわち、彼らの反対は、「A級戦犯が祀られている靖国に参拝することがいけない」というのでなく、「中韓が反発抗議するから、参拝に反対する」ということである。「中韓が反対するのを押し切って参拝すれば、対アジア外交を崩壊させる…」というのだ。


 それでは、「中韓が反発し抗議するから、参拝はやめるべき」なのか。
 日本の国や国民を守るために戦い、命を失った人たちを顕彰し御霊を慰めるのは、残された者たちの務めである。それぞれの家族や縁者が個別に慰霊しているのに合わせて、国家としてこれを祀るのもまた当然のことであり、国は知らないというのでは戦没した人たちの霊は浮かばれないであろう。
 靖国参拝は日本の戦没者を慰霊する行いであって、中国や韓国が靖国参拝を批判するのは、全くお門違いなことなのである。
 中韓は、「先の大戦を指導して中韓を侵略し、日本国民にも多大な苦難を強いたA級戦犯が祀られているからダメだ」と主張する。A級戦犯とは、今や周知のように極東国際軍事裁判(東京裁判)において、第2次世界大戦当時にはなかった「平和に対する罪」によって裁かれ、有罪になった人々である。この裁判の正当性は国際的に疑義が持たれていることも今や周知の通りだが、絞首刑7名・終身禁錮刑16名・有期禁錮刑2名の判決を下して結審。絞首刑によって死亡した人たちが靖国神社へ合祀され、禁錮刑の人たちはサンフランシスコ講和条約の第11条「(東京裁判判事国の)一またはニ以上の政府の決定及び日本国の勧告に基づけば、赦免・減刑・仮出獄させてもよい」によって、直ちに日本政府は各国政府に働きかけ、全ての戦犯とされた人たちを釈放した。東条英機らの絞首刑になった人たちも、もしそこまで生き延びていれば釈放され、A級戦犯であった岸信介(のちに首相)・賀屋興宣(同法相)・重光葵(同外相)らのように、多くが戦後の日本で活躍したことだろう。
 すなわち、A級戦犯とはその成立が疑問視される東京裁判において、事後法によって裁かれた人々であり、有罪とする判決には正当性がない。さらに、A・B・C級戦犯は連合国の軍事裁判所判決においては有罪であるが、日本の国内法には何ら抵触しておらず罪はない、それどころか、昭和28年、主権を回復した日本は衆議院本会議において、「戦争犯罪の受刑者の赦免に関する決議」を全会一致で可決し、極東軍事裁判における全ての戦犯の無罪を確認し、その名誉を回復している。【参照


 そもそも中国・韓国の抗議は妥当なものなのか。
 中韓の抗議は「A級戦犯は侵略戦争を指導し、わが国人民を苦しめた」というものであるが、戦時下においては平時には考えられない行為が行われる例は、枚挙にいとまがない。極めて遺憾なことが多かったのも事実であるが、戦時下のことは講和条約によって全てを清算するというのが国際的な共通理解であって、国家レベルで今さらこの問題を繰り返して取り上げるというのは、近代民主的法治国家としてははなはだしく正統性を欠いたことであり、国家観が疑われる行為である。
 もし「侵略である」と、今、問題にするのであれば、世界の国家間の戦闘は侵略の歴史であって、アレキサンダー大王の東征やローマ帝国の拡大の頃から、インカ帝国を滅ぼしたスペインの行為、ネイティブアメリカンを殲滅していったアメリカ建国も、アイルランドを植民地化したイングランドの侵攻も…、中国がチベットやベトナムへ攻め入ったのも…、世界の戦いのほとんど全ては侵略であり、これら全てを問題にしなければならない。
 しかも、日本が韓国を併合し、中国へ進出した頃の世界は、帝国主義全盛の時代である。アジアの諸国はほとんどが西欧列強の植民地となり、韓国は中国(清)の属国、その中国はアヘン戦争でイギリスに領土を割譲し、仏独などの進駐を許していたし、日露戦争で日本がその勢力を追い払うまで満州はロシアの半植民地であった。
 当時、世界は資源や領土を求めて他国へ侵攻することを、非とはしていないのである。プラトンがその著書「国家」の中に記したように「正しい事とは強い者の利益にほかならない」を国是とした時代であり、まさに「力は正義なり」の時代であったのだ。
 今、中韓は「あの戦いは侵略であって、わが国人民は大いなる苦しみを受けた」と抗議を繰り返すが、国家間においては正当性を欠く抗議である。アイルランドがイギリスに侵略を受けたと抗議し、「クロムウェルの墓に参るな」と主張しているだろうか。インドがイギリスに、ベトナムがフランスに、インドネシアがオランダに、かつての植民地統治を侵略であったと抗議しているだろうか。近代国家の正当性を無視して、もし抗議したとしても、統治した各国は「植民地政策は未開の国に文明をもたらした。その利益に対して対価を支払え」と、一蹴されるどころか、むしろ感謝と対価を払えと要求を突きつけられることだろう。国家間の付き合いとは、そのようなものなのである。
 「アイルランドとイギリス…。もう100年以上も前のことだ」と言うかもしれない。時間が経過すればよいのか…、違うであろう。解決策は時間の経過ではなく、ケンカは手打ちで水に流すものであり、国家間の争いは講和条約でそれ以前のことは全て問わないとするのである。サンフランシスコ講和条約、日中・日韓の平和条約が締結されている現在、なお過去の問題を持ち出して日本の内政に干渉する中韓の態度は、近代国家として著しく正当性に欠けるものである。


 では、今後、日本は「靖国問題」と、どのように取り組んでいくべきか。
 世界に向けて「靖国問題」を発信して、日本の総理大臣が祖国を守る英霊の御霊に参拝することの意味を説き、日本の歴史認識を説明していくことが必要である。
 中韓には、どんな説明をしても受け入れられることはあるまい。中韓にとっての「靖国問題」は、歴史の事実を問うことでなく、政治カードだからである。彼らの政治体制と時代環境が変わらない限り、中韓がこの問題に理解を示すことはない。だからひとつには、世界とともに中韓の政治体制を変革していく働きかけをすることであろう。またひとつには、アメリカとの連携やアジア諸国との強い連帯によって、日本の国際的地位の向上や発言力の強化を図っていくことだ。
 そのために国内的には、歴史の検証を行い、国民の理解と認識を深めることが必要だろう。戦争というものの定義と性格、国際情勢、日本の立場と状況、戦闘の事実、そして戦後処理と問題点…を掘り下げ、日本の国の真実をもとに日本の歴史を構築することが必要である。
 国際的には、まず確かな日本の主張をしっかりと発信することだ。発言が曖昧であったり、主張が揺れる国は信用されない。確たるスタンスを示しながら、彼我の同異点を明らかにして解決に邁進することだ。具体的には、日米友好を機軸に据えてG8諸国との関係を進め、特に
アジア諸国との外交に留意するべきである。
 中韓は雪解けを待つしかないが、東南アジア諸国の支持なしに日本の将来はない。アジア各国の独立を勝ち取り、脅威の経済力を身につけ、戦後60年間に一発の銃弾も撃たなかった日本に対する、彼らの期待は多大である。日本は政治的な付き合いと経済的な交わりを持って、友好を深め、経済的な援助を行なって、相互の信頼を確かなものにしていかねばならない。
 世界が認める靖国参拝となれば、中韓の異議も霞んでしまう。


 日本の国の首相が靖国神社を参拝することに異議を唱えることは、政治的にも、歴史的にも、明らかな間違いである。反対を主張する政治家や評論家、ジャーナリストたちは、将来の歴史の審判を受けることだろう…と書けば、やや厳しきに過ぎるだろうか。
 大切なことは過去のしがらみや恨みを引きずることではなく、将来をどのように建設的に築いていくかということである。そのために日本は「靖国問題」に取り組み、第2次世界大戦の総括を含めて、日本の国としてのスタンスを築き、子々孫々に伝えていくべき歴史を明示することだろう。


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